「パケット通信料の2段階定額制なども検討する必要がある」──ドコモ 山田隆持社長
NTTドコモは7月30日、2009年3月期第1四半期の決算を発表するとともに、山田隆持社長の会見を開催。減収増益の決算内容について山田社長は「おおむね好調といえる内容」と胸を張った。
NTTドコモは7月30日、2009年3月期第1四半期の決算を発表した。売上は若干減ったものの、営業利益は前年同期比で45.4%増を達成。減収増益とはいえ、減収幅が減っており、代表取締役社長の山田隆持氏は、「ほぼ順調な四半期決算を迎えた」と胸を張った。
ユーザー獲得コストの大幅減が収益に貢献
営業利益の通期予想に対する進捗率は35.7%と、2008年3月期の25%程度から大きく改善した。これは、2004年から2006年にかけての、比較的ドコモが好調だった頃に比肩するレベルだという。営業利益が対前年同期比で大幅な伸びとなったのは、パケットARPUの増加と解約率の低減、そして「バリューコース」や割賦販売の導入による新販売方式の拡大によって、端末販売収入が増え、代理店向けの販売手数料が大幅に減ったことが大きいという。
携帯電話の音声通話に関連する収入は、ファミ割MAX50やひとりでも割50、オフィス割MAX50といった割引サービスの導入やバリュープランの普及に合わせて基本料が安くなり、1325億円の減収となった。この減少のうち、ファミ割MAX50などの料金施策による影響がおよそ400億円、バリュープラン向けの料金プランによる影響がおよそ300億円となっている。つまり、約半分ほどが割引や新販売方式による影響だ。音声ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)は3560円と、1年前の2008年3月期の第1四半期と比べて880円も下がっている。
一方、パケット通信の利用は引き続き増えており、前年同期比で362億円の増収となった。データARPUは2330円と、前年同期の2120円から210円向上。総合ARPUの減少は続いているが、動画コンテンツの提供などを通して「パケ・ホーダイ」や「パケ・ホーダイフル」の加入者を増やすことで、データARPUのさらなる向上を目指す。
2009年3月期第1四半期決算の総合ARPUは前年同期比10.2%減の5890円。ついに6000円を割った。その中でデータARPU(表中ではパケットARPU)は上昇を続けており、前年同期比9.9%増の2330円となった
バリューコースと割賦販売の導入によって、端末の販売価格の上昇と端末の総販売台数の減少が起こり、販売店に対して支払う販売手数料も大きく減った。今回の決算では、この影響が収益増と大きく結びついている。
端末の販売台数は、割賦販売の影響などがあって前年同期比で2割ほど減り、495万台(2008年3月期第1四半期は624万台)にとどまった。しかし、0円端末などがなくなり、分離プランの導入によって端末の価格が全体的に従来よりも高くなったことから、端末機器販売収入は722億円増加した。
さらに、端末の原価が737億円減少した上、端末販売のために代理店に支払っていた手数料(販売奨励金)は381億円減った。「従来は、1契約を獲得するために3万数千円から4万円程度のコストをかけてきたが、今期の販売奨励金は1万円台になっている」(山田氏)。その結果、営業費用は1118億円も減少。増加した端末機器販売収入722億円と合わせて、1840億円の改善となった。
ただ、「販売台数が減少している点は注視している」(山田氏)と話し、バリューコースで24回払いで端末を購入したユーザーなどがなかなか機種変更をしなくなって機種変更台数の減少が予想される点は、その影響をしっかり分析する必要があるとの考えを示した。
「実際に、割賦販売によって機種変更のサイクルが変わり、端末の総販売数が落ちるのは事実だろうと考えている。ただ、それがどのくらいのパーセンテージになるのかはこれから分かること。仮に大きく落ち込むなら対策を考える必要がある。将来的には現在半年ごとに出している新モデルの開発期間を変えるとか、オペレーターパックなどの共通プラットフォームの質的向上などを通して、端末メーカーの負担を軽減するようなことも考えなくてはならないだろう。販売代理店についても、開通業務のシステムを全国で共通化して経費を節減したり、端末を売ったところだけでなく顧客対応をしたところに奨励金を出すと言った施策も検討する必要がある」(山田氏)
ちなみにバリューコースで端末を購入しているユーザーのうち、およそ半数が24回払いの割賦を利用しているという。一括払いと12回払いがそれぞれ25%ずつくらいの数字になっているとのことだ。
“半額”サービス拡大、バリューコースも普及
ファミ割MAX50、ひとりでも割50、オフィス割MAX50といった、2年契約をすることで基本料金が半額になる割引サービスは「順調に契約数が増えている」と山田氏は言う。2008年6月末の時点で、これら”50”系のサービスの契約数は2590万で、ドコモの契約者の半数に迫る勢いだ。2008年度末(2009年3月末)までには、これが3100万契約にまで増えると予想する。
端末販売モデルは、購入時に代金が安くなる「ベーシックコース」ではなく、割賦販売が利用でき、基本料金が安くなる「バリューコース」が人気で、2009年3月期第1四半期のバリューコース選択率は97%。7月26日にはバリュープランの契約数が1000万を超えた。
こうした2年契約や割賦販売の導入によって、ドコモの解約率は0.51%と過去最低のレベルに低下した。5月と6月だけを見ると、解約率は0.5%を切っているという。
月額4095円固定の定額パケットプラン「パケ・ホーダイ」の契約数は、1年間で約294万件増えて1340万契約となった。山田氏は動画コンテンツを配信する「ドコモ動画」やMusic&Videoチャネル、動画アップロード、ワンセグ、映像コミュニケーションなど、さまざまな試聴スタイルに合わせた動画サービスを提供していることが定額制加入者の拡大につながっていることを挙げ、「動画を楽しんでいただくためには定額制に入っていただくことが必須になるので、これからも定額制加入者を増やしていきたい」と意気込みを語った。
ただ、現状の定額サービスは月額料金が固定のため、使う月と使わない月とがあるユーザーにとっては契約への心理的ハードルが高い。ユーザーからも、他キャリアのような2段階定額制の導入を望む声が多く届いているという。そこで、パケ・ホーダイの加入を増やしてデータARPUの向上を図るだけでなく、2段階制のパケット定額プランなども検討する必要があるとの認識を示した。
「iPhone 3G」の影響は限定的
7月11日にソフトバンクモバイルから発売されたアップルの「iPhone 3G」の影響は、「当然影響はあると考えているが、iPhoneによって、ドコモからソフトバンクにユーザーが流れたという状況は見えない」(山田氏)という。7月11日の発売日からの番号ポータビリティ(MNP)の総数などを見ると、4月や5月とだいたい同じくらいで推移しているとのことで、山田氏は「引き続き状況を注視していく必要がある」としながらも、「現状では2台目需要が多いのではないかと考えている」と話した。
なお山田氏は、iPhone 3G以外の海外メーカー製端末についても、ラインアップを豊富にしておくため、今後も検討を進めていくことを明らかにした。「携帯電話事業も成熟期に入り、ユーザーの嗜好が多様化してきているが、ユーザーのほしい端末がラインアップにあることが望ましい。我々はBlackBerryやPRADAフォンなども販売しているが、ラインアップを増やすという点で、海外メーカー製の端末でもいいものがあれば入れていきたい」(山田氏)
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