「さよなら」があまりに惜しいNokia:ITmediaスタッフが選ぶ、2008年の“注目ケータイ”(ライター坪山編)
国内外を問わず、メーカーが携帯事業の再編や撤退を決断した2008年。インセンティブモデルの問題を解決する割賦販売は根付いたものの、買い変えサイクルが伸びて端末販売は鈍化。コストダウンを目指した端末は没個性化が進んでしまった。
2008年は、国内のケータイ市場に多くの“ゆがみ”を生んでしまった年だと思う。起きるべくして起きた国内メーカーの端末事業撤退に加え、世界シェアトップのNokiaまで「VERTU」を除く日本向け端末事業の中止を発表した。
世界的に見て異端といわれ続けた国内のケータイ市場は、2008年は悪い方に動いたといえる。従来のインセンティブモデルを撤廃すべく導入された割賦販売は、端末の買い換えサイクルを長引かせた。仕様の共通化で多機能とコストダウンの両立を目指した端末は良い意味でも悪い意味でも“没個性”となってしまった。
最後になった自由の翼――「Nokia N82」
最初にピックアップしておきたいのはソフトバンクモバイルから発売された「Nokia N82」だ。Nokiaは日本向けにローカライズした端末の提供を終了すると決定しており、国内キャリア向けの端末はN82が最後になるのだろう。
N82自体は2007年末に発表された端末であり、決して目新しい端末ではない。あえて特徴を挙げるとすればデジカメ感覚で使える点だ。カールツァイスレンズを採用して画質面で評価が高かった「X02NK」(Nokia N95)と同じカメラユニットを内蔵し、暗い場所でも十分な光量を得られる?キセノンフラッシュを搭載している。
筆者はここ半年ほど、X02NKをデジカメ代わりに使っている。あえて不満を挙げるとすれば、レンズが単焦点であることと、フォトライトが届く距離がやや短い(人物だとバストアップ程度の距離までしか役に立たない)ことだ。N82なら少なくとも後者は大幅に改善される。
また、無線LANやGPSも搭載する多機能スマートフォンでありながら、音声端末として使い勝手が良いのも魅力だ。操作はダイヤルキーで行うため、使い勝手は一般的な音声端末と変わらないが、スマートフォンとして使っても操作系がしっかり作りこまれているので、不便を感じることはまずない。
Yahoo!ケータイをはじめ利用できないサービスも多いが、S!メールは送受信可能。この点は「iPhone 3G」や、iモードは一切サポートしないNTTドコモのスマートフォンとは大きく異なる。“キャリアメールだけは使えないと困る”という人はけっこう多いので、この点はポイントが高い。
MP3やAACファイルを再生できる音楽プレーヤーもユニークだ。音楽データをPCからmicroSD経由でコピーするだけで済むので、転送ソフトが必要な多くの国産端末よりも手軽に使える。プラットフォームにSymbian OS S60 3rd.Editionを採用しており、世界中のさまざまなアプリを使えるのもうれしい。Google MapsやGmail用の純正アプリケーションも用意?されており、動画プレーヤーなども豊富にある。とにかく、自由度の高さは国産音声端末の比ではない。
さて今後のNokia端末についてだが、端末そのものは個人輸入などで入ってくるだろう。その場合、サードパーティ製の日本語化キットなどを利用すれば、日本語入力なども可能になる。しかし、パケット定額通信はSIMロックされたキャリア端末のみに適用されるので、料金がかなり高額になるという不安がある。メールもキャリアメールは使えないため、SMSの送受信が前提になるだろう。POP3/IMAP4メールも利用できるが、前述の通りパケット代を考えると頻繁には使いにくい。
そんなわけで、自由度の高いNokia端末をパケット定額で利用できるのはN82が最後になるだろう。筆者の手元には、ほぼ同じ機能を備えたスライド型のX02NKもあるが、N82も今のうちに購入しておくべきか大いに迷っている。
+αの機能で、日ごろの使い勝手を向上させた「F906i」
2007年に続いて2008年も“欲しい!”と思う端末が少なかった。おサイフケータイやワンセグの搭載は珍しいことではなくなり、BluetoothもauのKCP+端末はほぼ標準搭載、NTTドコモ端末も2008年冬モデル(のハイスペックモデル)で一気に搭載端末が増えた。ぜいたくな物言いだが、機能的に“この端末しかない”というものがなくなった点も影響している。
そんな中でピックアップしたいのがドコモの富士通製端末「F906i」。ディスプレイが左右に回転するスタイルは「F903i」から始まり、「F904i」「F905i」から3代目となるキープコンセプト端末で、デザインをほぼ変更することなく着実に使い勝手を向上させスリム化を果たした。
ディスプレイが90度回転するヨコモーションスタイルは、画面の向きに関係なくキー操作を不便なく行えるし、折りたたみ型端末としても自然に使える。ディスプレイの回転方向によって機能を割り当てられる点や、FeliCaなど特定機能のロック(と解除)に使える指紋センサーも便利だ。
もはや高機能モデルは何でも入りが当たり前になってくると、+αの要素が自分に必要かどうかがポイントになる。F906iはほかの端末にない独自機能が日々の使い勝手の良さにつながっており、これが筆者の心には響いたのだ。
ただ、Bluetoothがない点は残念だ。富士通のヨコモーション端末は、F904iからずっと購入候補だったが、Bluetoothがなく見送ってきた経緯がある。ドコモの2008年冬モデルはBluetooth採用端末が増えるというウワサを聞いてワクワクしていたのだが、残念ながらヨコモーション端末は投入されなかった。筆者には“防水”よりもBluetoothが足りなかったのだ。
他社のデータ端末もセンスを見習って欲しい「A2502 HIGH-SPEED」
厳密にいえば2007年秋発売なのだが、現行製品でもあるのであえてピックアップしたのがドコモのデータ端末「A2502 HIGH-SPEED」だ。2008年はドコモとauがデータ通信向けの定額プランを導入し、データ端末もさまざまな機種が発売された。
PCカード型やCFカード型は、装着するスロットのサイズが関係するためデザイン的な制約が多いのだが、比較的デザインの自由度が高いはずのUSB端末も、見た目や使い勝手への配慮が感じられないものが多く閉口する。
その点A2502は、USB端子が回転式のためキャップなしでも収納時に保護されるなど、使い勝手に工夫が見られる。またアンテナも可動式だが、それでいてボディは十分コンパクトなサイズにおさめている。そして何よりデザインが秀逸で、カッコ良いと思える数少ないデータ端末だ。また通信速度も発売当初は下り最大3.6Mbpsだったが、ドコモが下り最大7.2MbpsのHSDPAをスタートさせると端末もそれに対応した。
製造は韓AnyDataでドコモの意向がどこまで働いたのかは分からないが、“とりあえず海外メーカーから安く調達しました”という空気は感じられない。付属のソフトケースも実用的で、こうした点も含め、多くをほかのデータ端末は見習ってほしいと思う。
データ端末ではウィルコムのPCカード型データ端末「AX530S」もピックアップしておきたい。ボディにアンテナを収容でき、未使用時にはPCカードスロットからはみ出さないのが魅力だ。
PCカードスロットを搭載しないPCが増えた現状で、PCカード型の端末を割賦方式で購入する不安はあるが、AX530Sは付属のアダプターを介してUSB接続も行える。すでにPCカードスロットがないノートPCを使っている人があえて選択する理由はあまりないと思うが、現状の利便性と将来性の拡張性を満たす端末として評価したい。
イー・モバイルの登場以来、ヘビーなモバイルユーザーが3Gの定額データ通信に流れたせいか、ここ1年ほどウィルコムのパケット通信はスループットが非常に安定しており、都市部ではW-OAM対応も着実に進んでいる。筆者はイー・モバイル端末も使用しているのだが、こちらは時間帯やロケーションによる速度差があまりに激しく、ここ半年ほどは「DD」を利用する機会がずっと多くなってしまった。
もちろん電波状態に左右されるが、曜日や時間帯にかかわらずコンスタントに150Kbpsオーバーを叩き出し、Webページを見るくらいなら別段不便を感じない。少し話が逸れてしまったが、2008年はウィルコムのデータ通信サービスを改めて見直した1年でもあった。
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