第5回 なぜ、“激安”ケータイがあるのか:ケータイの「分離プラン」を改めて考える(3/3 ページ)
「バリュー一括0円」「シンプル一括0円」「スパボ一括9800円」──通信キャリアによって、月々980円、あるいは「タダ同然」で維持できる“激安”な機種もケータイショップで販売されている。なぜ激安にできるのか、何が“いびつ”なのかを考察する。
激安で何が悪いのか
ともあれ、月々の支払い額が980円程度で済むなら、すでに携帯を1台所有していても2台目、3台目として需要が広がることは大いに想定できる。国内の携帯電話・PHS累計契約数がすでに1億1000件(2008年12月末現在)を超え、飽和状態にもあるといわれる市場を勘案すると、今後、契約数を増やしていくには番号ポータビリティで他キャリアからユーザーを奪うか、複数台目として契約してもらうしか方法は残っていない。くどくなるが、通信キャリアにとって“新規契約”が最もうれしいのは、分離プラン導入前と何も変わってない。
問題と考えるのは、この過剰ともいえる新規契約時の端末の割り引き販売である。「分離プラン」のルールにおける網の目をくぐぐような手法であり、従来よりさらに過激に、分かりにくいものになってしまったとしか思えない。もちろんどのキャリアも「他社との対抗上、やらざるを得ない」ところはあるだろうし、従来の0円/1円ケータイも同じ側面はあった。ただ、その負のスパイラルを断ち切るためでもあったはずの分離プランが、既存のユーザーと激安ケータイを契約したユーザーの格差をむしろ広げてしまったように思う。
また、端末購買の意欲を失わせる側面も問題だ。最近は、発売当初に一括5万円を超えていたハイエンド新機種がたった数カ月で数万円ほど、一部にはその新機種でさえも一括0円/1円といった価格に値下げ販売される例もある。
もちろんユーザーにとって「安価」なことは重要で、同じ端末やサービスなら安いほうがいいと思うのは当然。また、端末販売をともなう新規契約が発生しなくなれば、携帯電話市場で利益を得られるのはほぼ通信キャリアだけになってしまい、端末メーカーや販売代理店、販売店などは破綻することにもなる。現に端末メーカーの撤退や再編が続き、街の小規模なケータイ販売店も目に見えて減ってきている。“激安ケータイ”は、日本の携帯電話市場全体で見れば必要とされている存在と言えなくはないと考えることもできる。
もちろん「思ったより売れなかった」「不況の影響で売れなかった」「なんとか純増しなければならない」といった事情もあるだろう。発売当初に分割払いで新機種を購入したユーザーの残額はまだ1年分以上も残っているのに、かたやほんの数カ月後に“ほぼタダ”になっている。これを目の当たりにすると「もう二度と真っ当に買うものか」と思う心理が生じるのは当然の感覚だ。このことは、キャリアがどんなによい端末を用意しても、誰もが様子見して本来の価格で買わなくなる危険性をはらんでいる。
というわけで、既存ユーザーが「普通に使い続けるのは損」「普通に端末を購入するのは損」と思ってしまうような“過剰な新規契約だけの優遇”はどうにかしてほしいと切に願う。
(続く)
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