目指したのは「ケータイカメラの画質No.1」――LUMIX Phone誕生の背景を聞く:開発陣に聞くLUMIX Phone「P-03C」(2/2 ページ)
「ケータイカメラの中でナンバー1にならないとダメだ」――LUMIX Phone誕生の背景には、“得意なシーンをきれいに撮れるだけでなく、あらゆるシーンで高画質を実現する”という挑戦があった。LUMIXのブランドを冠するまでの開発の裏側とは?
刷新したカメラのUI
荻窪 それと、個人的にタッチシャッターが良かったです。タッチするとピントのみならず露出も合わせてくれるから、いちいち露出補正しなくてもだいたい思い通りの明るさに撮れますね。
石原 タッチシャッターで露出も合わせたのは今回がはじめてなんです。
荻窪 LUMIX Phoneでもうひとつ感心したのが使い勝手の良さなんですが、ここもずいぶん変更されていますね。
野中 従来のUIはサブメニューがあって階層も深く、撮る行為を阻害しているのではないかと。そこでメニュー体系を見直して、タッチUIを突き詰めました。
牛島 LUMIXのUIにアイコンやデザインを合わせつつ、使いやすいように工夫しています。左上にパワーLCD(画面の輝度を明るくするボタン)を置いたり、タッチズームやタッチシャッターの切り替えボタンや動画撮影ボタンを表に用意するなど、便利な機能はすぐアクセスできるようにしています。
それと、UIのきせかえ機能にも注目していただけると嬉しいです。きせかえUIの中でも「シンプル」モードには特に力をいれています。おまかせiAでシンプルにカメラを使いたい人のためのモードで、選択肢を最小限に抑えてます。個人的にはこれをスタンダードにしてほしかったくらいです。
荻窪 もうひとつ、Tele/Wide撮影(デジタルズームをかけた写真とかけてない写真の2枚を同時に記録する機能)は、なかなか楽しめました。LUMIX Phoneって、人を撮るには広角すぎる(35ミリ判換算で27mm)ので、タッチズームを使って背景付き写真と顔のアップの2枚を同時に撮れるのが便利です。
石原 実は、Tele/Wide撮影は技術側から提案した機能なんです。触ったところを一発で拡大して、その状態と元の広角の写真の両方が残ると面白いね、と。集合写真を撮りながら、お気に入りの子のズームだけ別途撮っておくこともできます。それとTele/Wide撮影時にはオートサイズズームも使えます。オートサイズズームというのは、顔を検出していると、オートフォーカスの合焦時に自動的に顔がアップになるズーム機能です。
荻窪 使っててちょっと気になったのですが、デジタルズーム時は超解像はかかってるんでしょうか?
石原 実は超解像がかかるのは3M以下のときなのです。
荻窪 13Mではダメだけど3M以下だと使えるという機能がけっこう多いですよね。ISO1600以上に上げたいときも3M以下にする必要があります。もういっそのこと、最初から3Mでもいいんではないでしょうか? ケータイカメラは3Mピクセルあれば十分とも思います。
野中 画素数に関してはある意味、スペック競争になってる部分もあります。そこの判断は、なかなか難しいところです。
カメラとして使いやすいデザインを最優先
荻窪 もうひとつ、デザインもカメラっぽくなりましたよね。その話も聞かせてください。
野中 カメラに似せることを目的にしたのではなく、撮りやすさを追求していった結果、カメラに近いハードウェア構成となっています。例えば、シャッターの位置は、端末左側から女性の指の第二関節あたりに配置しています。レンズの位置も、左手を添えたときに指がかからない位置にしました。それと、ストラップホールの位置もこだわっています。撮るときにストラップがレンズの前にかかってしまっては台無しですから。
荻窪 ケータイの限られたスペースの中でレンズの位置を変えると、何かと設計も大変になりますよね。
佐々木 今回はレンズの位置が最初に決まっていたので、電気的にも機構的にもハードルが高かったですね。基本的に設置場所が決まっている大物、カメラやバッテリーなどを置いていき、空いたスペースにアンテナを入れていくという感じです。その中で、きちんと性能を確保しました。それと、軽量化にも苦労しています。最初は160グラム程度あったのですが、ケータイとしては重すぎます。スライドユニットの材質を変えたりして、最終的には141グラムにまで軽量化しました。
荻窪 シャッターの感触もカメラっぽくなってます。
佐々木 スイッチを押した感触や形状を決めるのは大変でした。最初はもっとカチッとしたスイッチ音がするものだったのですが、よりデジカメに近いものに変更しました。ただ、スイッチについては意見が分かれるので、何パターンもサンプリングした上で決定しています。わたしはカチッとした方が好きだったのですが。
荻窪 あ、わたしもそうです。
佐々木 実は、好き嫌いが世代で分かれる傾向がありました。今回は、若い人の意見を取り入れています。
「撮る」「見る」だけじゃないケータイカメラの魅力
荻窪 ケータイのカメラの一番のメリットは通信機能を持っていることだと思います。LUMIX Phoneはその点、ブログなどへの投稿やWi-Fiを使った連携ができていますね。
野中 ピクチャジャンプのことですね。写真は「撮る」「見る」という要素の次に、「送る」といったニーズもあります。ですからタッチUIの進化にともなって、ピクチャジャンプ機能を取り入れました。
荻窪 アプリの名前としてあるのはピクチャアルバムですが、その中でサムネイルをドラッグして「飛ばす」という操作を「ピクチャジャンプ」と呼んでるんでしょうか?
野中 そうです。ピクチャアルバムの中で、サムネイルを上下左右にスライドすることで各機能を利用できるのがピクチャジャンプです。写真を端末の外に投げる、というイメージですね。
荻窪 面白いのは、ブログなどへ写真を上げるとき、ブログ編集機能が使えることですよね。編集機能の中には、顔を消すモザイク機能などもあって、「ああ、これはこれで必要かも」と思いました。
野中 従来はデータフォルダから画像を編集して、そこからメールするという流れでしたが、それだと手間がかかりますよね。今回はビューワー(ピクチャアルバム)からブログ投稿すると、シームレスに編集アプリへ移行でき、そのあと投稿するという流れにしました。編集アプリは顔に限らず、車のナンバープレートや、見せたくない背景を隠すのにも使えます。
荻窪 時代を感じさせる機能です。確かにそれがあると投稿がすごく気軽になります。
野中 撮ったあとのアクションを手間をかけずにすばやく行えるのがミソですね。こういう考えは今回の端末のみならず、今後も継続して進化させていきたいと思います。
実際のところ、LUMIX Phoneで撮った写真のヒット率は高かった。ケータイとしてはかなり高い。おまかせiAでこれだけ撮れれば、もうほかのモードは使わなくていいんじゃないかというくらい。
不満があるとすれば、画素数が多すぎること。ケータイカメラって、撮像素子が小さいのに画素数はむやみに多くなっているから、どうしてもノイズが出やすくなり、ISO感度を上げられない。実用上は3Mピクセルあれば十分なのだから、いっそのこと撮像素子は13Mでもデフォルトを3Mにして、画素混合技術を使って感度を確保すればいいのに、と思う。そのことを伝えたら、実はフォトモードというモードがあって、そちらは3Mを上限にしてるそうだ。
“画素数が多い方が高画質”だと思われがちな世の中であるから、3Mのモードをプッシュするのは難しいかもしれない。でも、室内など感度を上げて撮りたい場所でよく使う人は、3Mでの撮影をメインにしちゃっていいと個人的には思うのだ。
さて、とうとうケータイにもLUMIXのブランドがやって来た。次に出会うLUMIX Phoneは、Androidのような気がする。そのとき、おまかせiAやピクチャジャンプは、どう進化しているのだろうか――。今後も期待したい。
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