スマートフォンと“アプリ”がネットサービスの主戦場となった1年:ITmediaスタッフが選ぶ、2014年の“注目端末&トピック”(ライター佐野編)
ゲームだけでなく実用系サービスまでもがアプリ化を進めた2014年。業界全体の動きで印象に残ったのが、テレビCMの急増ぶりだ。
2014年のアプリ動向を振り返ると、ゲームだけでなく実用系サービスまでもがアプリ化を進め、相次いでテレビCMを展開するなど大きな動きが見られたように思う。スマートフォンとアプリは、もはやPCとWebに代わる、ネットサービスの主戦場となったのではないか。
驚きを与えた実用系アプリのテレビCM展開、けん引したのは?
キャッシュバックの抑制やキャリアの新料金プラン、そして格安スマホの台頭と、料金に関するトピックに大きな注目が集まった、2014年のモバイル業界。だが実は、スマートフォンの“内側”、つまりアプリにおいても非常に大きな変化が起きた1年だったと、個人的には感じている。ゲームアプリに関しては、本誌連載で2014年の動向をまとめているのでそちらを参照頂きたいが、ここではアプリマーケット全体を振り返り、特に印象に残ったことを上げておきたい。
その1つは、アプリに関するテレビCMの急増ぶりだ。2013年から「パズル&ドラゴンズ」などのゲームアプリに関するテレビCMは増加傾向にあったが、2014年はゲームだけでなく実用系のアプリまでもが、テレビCMを実施してユーザーを獲得するのが“当たり前”となりつつある。
中でも、増資した資金をテレビCMに費やすなど大胆なプロモーション施策を打ち出した「グノシー」のように、まだ大きな売上を上げるに至っていないベンチャー企業が相次いでテレビCMを実施したことには、とても驚かされた。だがそうした流れの先鞭をつけたのは、実は「マンガボックス」と「WEAR」にあると感じている。
マンガボックスはディー・エヌ・エー(DeNA)が2013年12月にサービスを開始し、同年末から2014年の頭にかけて大規模なテレビCM展開を実施。年末年始の休暇需要を狙って多くのゲームアプリがテレビCMを大量投下しやや食傷気味となっていたところに、無料コミック雑誌アプリのテレビCMを流すという斬新さが受け、ダウンロード数が急増するなど大きなインパクトを与えたと記憶している。しかも2013年の「comm」のように、テレビCM放映後ニーズが尻すぼみとなるのではなく、9月には600万ダウンロードを記録するなど、現在も高い人気を獲得していることは高く評価したい。
一方のWEARは、100万ダウンロードを記念して3月よりテレビCMを実施したところ、短期間でダウンロード数が倍の200万に伸びたことから注目を集めた。WEAR自体は、商品のバーコードを読み取りWebサイトで商品が購入できる機能が批判を集め、同機能を廃止するなどトラブルにも見舞われたのだが、現在では400万ダウンロードを記録し、ファッションコーディネートアプリの定番の1つとなっているのはさすがというべきだろう。
両アプリを提供しているのはインターネットサービス大手であり、企業体力があるからこそ、あまり前例のないテレビCM展開ができたのは確かだろう。だがゲームではない2つのアプリが大きな実績を残したことが、実用系アプリベンチャーのテレビCM展開という流れに大きな影響を与えたのではないかと、筆者は感じている。
ビジネス層向けサービスもアプリ化を重視する時代
こうした各社のテレビCM展開と、それを受け入れるユーザーの増加から見えてくるのは、スマートフォンのアプリがもはや珍しい存在ではなく、生活に根差した存在になっているということ。そして、アプリがいよいよ、ネットサービスの主戦場になったということだ。
それを象徴する出来事はいくつかあるのだけれど、ここではキュレーション系ニュースアプリの台頭を上げておきたい。「グノシー」や「SmartNews」などのスマートフォンを主体として展開するニュースアプリが、テレビCMなどの影響もあって多数のユーザーを獲得、急速に注目を集めたのは、ご存じの方も多いと思う。
だがより注目したいのは「NewsPicks」の台頭だ。NewsPicksは経済情報に特化したニュースアプリであり、ターゲットはビジネスマン層となることから、従来であればPCを主体とした設計がなされるようなサービスである。しかしながらNewsPicksはスマートフォンとアプリを主体としたサービス設計となっており、しかも人気を獲得している。
このことには、非常に大きな流れの変化を感じずにはいられない。というのもスマートフォンのアプリは従来、ゲームやカメラ、コミュニケーションに代表される、若年層の娯楽を意識したサービスが大きく伸びる傾向が強かった。だが2014年に入ってからは、アプリが娯楽だけでなく実用、ビジネスに至るまで幅広い層に受け入れらるようになり、娯楽系以外のネットサービスを提供する事業者もまた、NewsPicksのようにアプリ化を強く意識するようになったと感じている。
この傾向が進んでいくことは、産業全体でApple、Googleへの依存度がより高まる、情報のクローズ化が進むなど、さまざまな問題をはらんでいるのも確かではある。だがアプリの利用が広く浸透した現在、ホーム画面にアイコンが並び、ワンタッチで利用できるアプリの利便性は、Webブラウザのブックマークと比べ圧倒的な優位性があるのもまた事実。それだけに来年も、ネットサービスのアプリ化という流れは続くといえそうだ。
関連記事
- モンスト台頭、本格ゲームの増加――大きな節目を迎えた2014年ゲームアプリ動向
スマホアプリの中でも最も大きな規模のゲームアプリ市場。2014年は新勢力「モンスト」が成長し、絶対王者「パズドラ」の座を脅かすなど、業界の勢力地図が様変わりしている。 - LINEやSyn.とどう差別化する? “行動促進メディア”として生まれ変わるGunosyの狙い
プラットフォーム構想を発表した「Gunosy」は、ほかのプラットフォームサービスとどう差別化するのか。Gunosyはユーザーの行動を喚起するメディアとしての強みを生かしていく構えだ。 - マンガ系アプリの認知/利用トップは「LINEマンガ」――ジャストシステムのモバイル&ソーシャルメディア調査
ジャストシステムは、セルフ型アンケートサービス「Fastask」を利用した「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2014年5月度)」の結果を発表。マンガ系アプリの認知率/利用率トップは「LINEマンガ」となった。 - 白戸家、パズドラ、地域限定……スマホ関連CMの最新事情
好感度調査で常に上位を占めるキャリアのテレビCM。スマホの競争激化でその存在意義は以前よりも高まっているようだ。そして最近は、アプリなど新しい分野のCMも増え始めている。 - スマホでニュースをチェックするなら入れておきたいアプリ10選
日々たくさん流れる情報をスマホで効率良くチェックするためのアプリ10本を厳選。ネットで話題のネタから仕事で役立つ経済情報まで幅広いジャンルをアプリをピックアップした。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.