「NuAns NEO」開発秘話 iPhoneフォロワーから脱して独自のこだわりで挑む:アドバイザーの本田雅一が語る(4/4 ページ)
斬新なデザインやContinuum対応で注目を集めるトリニティのWindows 10 Mobileスマートフォン「NuAns NEO」。開発の経緯や製品に関する疑問をアドバイザーの本田雅一氏に聞いた。
Continuumサポートの裏側
―― NuAns NEOは日本で発売されるWindows 10 Mobile端末として、初めてContinuumをサポートしていることも大きな特徴です。ここを押さえてきたのは「やるなあ」と思いました。
本田 NuAns NEOの企画では、最初から一貫してContinuumのサポートを狙っていました。Windows PhoneおよびWindows 10 Mobileの端末では、MicrosoftがQualcommとともに基本的なシャシースペックを定義しており、そこからベースプラットフォームを選んで開発します。
2015年春の段階で提示されていた中上位クラスのプロセッサがSnapdragon 617(当時の愛称は違いましたが、現在の名称で記載しています)で、このプロセッサ以上ならばContinuumが使える、ということで採用しています。
プロセッサとしての能力は、前年のハイエンドスペックを超えるもので、その下にバリュークラスとエントリークラスがあるのですが、最初からこの617で行くと決めていました。その上のSnapdragon 810や808は高価すぎて7万円以上の製品になってしまいますから、こちらも除外していました。
NuAns NEOは国内販売の端末で初めてContinuum(for Phones)をサポート。NuAns NEO本体にワイヤレスで外部ディスプレイ、キーボード、マウスを接続することで、スマホ用アプリをまるでPC用デスクトップアプリのように利用できる(アプリ側の対応も必要)
―― ただContinuumについては発表当初、「暫定サポート」という言い方でした。その後「正式サポート」だと発表され安心しましたが、なぜこのような経緯になったのでしょうか?
本田 まず、Snapdragon 617はMicrosoftが純正スマートフォン「Lumia」に搭載しなかったこともあって、採用するメーカーがありませんでした。Continuumを使わないのであれば、もっと安いプロセッサでも十分な性能が出るからです。Windowsは結構速いんですよ。このため、Microsoftの開発優先順位が下がり、チップを開発・提供するQualcommも2015年内に立ち上げると話していたSnapdragon 617の出荷が2016年にずれこんでしまったんです。
そうした中で最初に手を挙げて開発をスタートしたのが、われわれでした。Snapdragon 617でのContinuumサポートを見送る話があったというウワサもありますが、実際にはそういった連絡は一度もありませんでした。
ただし、チップを提供しているQualcommですらSnapdragon 617でContinuumが動いているところを見たことがない。全く実績がないものだから、Microsoftも正式サポートなんて言えないわけです。
―― それでNEOの発表時には暫定対応だったんですね。
本田 ただ、いつまでも「できるはず」では困るので、MicrosoftにContinuumサポートを正式にうたえるよう働きかけていました。決め手になったのは、初期のNuAns NEO試作端末上で実際にContinuumが動いているところを、Qualcommに見せることができたことですね。
それは10月のことで、製品発表時には既に動いていたんですよ。Qualcomm自身、どの程度のパフォーマンスで動くのか、全く分かっていなかった。しかし、実際に動いている端末が出てきたことで、MicrosoftにSnapdragon 617のサポートを強くプッシュしたと聞いています。
われわれの設計・生産パートナーはWindows 10 Mobileに力を入れているところで、Qualcomm、Microsoftを含む3社でパートナーシップを組んでいたため、連絡が緊密だったこともプラスに働いていました。最後はMicrosoftにNuAns NEOの試作端末を送って検証してもらうことになり、発表会の時点では内諾を受けていたんですよ。
―― そういう経緯だったんですね。まだまだ聞きたいことはありますが、長くなったので、ちょっと休憩を入れましょう(つづく)。
関連記事
- 一目ぼれは正解だったか:Windows 10スマホ「NuAns NEO」をXperiaマニアが買って使ってみた
今までXperiaシリーズを使い続けてきましたが、Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの「NuAns NEO」は一目ぼれして買ってしまいました。ファーストインプレッションをお届けします。 - 枚数多いけど許してね:超デザイン重視スマホ「NuAns NEO」全カバー組み合わせ72パターンをまとめてみた
Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの「NuAns NEO」の出荷が2016年1月31日に始まった。カスタマイズできるスマホ、デザインパターン72種類を一挙公開。 - 「モバイル・ファースト」時代のWindows最前線:有線Continuumやタブレットの登場など、存在感が高まるWindows 10 Mobile
「CES 2016」で大きな存在感を示したWindows 10 Mobileデバイス。国内では初のContinuum対応機として「NuAns NEO」が発売された。新たな可能性としてタブレット端末の展開も見えてきた。 - トリニティ、Windows 10スマホ「NuAns NEO」の初回出荷を開始 販売店舗も発表
本体と外装を「別売」としたWindows 10 Mobileスマートフォン「NuAns NEO」の初回出荷が始まった。また、実店舗販売の対象店舗も発表された。 - 「NuAns NEO」も正式対応:Windows 10 MobileのContinuum、「Snapdragon 617」を正式サポート
Windows 10 Mobileの「Continuum for Phone」が、Qualcommの「Snapdragon 617」に正式対応した。これに伴い、同プロセッサを搭載するトリニティの「NuAns NEO」でもContinuum対応が確定した。 - CES 2016:Continuumが動作、技適も通過――Windows 10 Mobile「NuAns NEO」最新版がCES Unveiledに登場
トリニティが「NuAns NEO」をCES Unveiledに出展した。無線によるContinuum機能のデモや多彩な背面カバーの展示が海外メディアからも注目を浴びた。「技適」も無事通過し、国内で1月末の発売に向けて間もなく量産に着手する。 - “生活を変える”コンセプトに合致――トリニティが初スマホにWindows 10を選んだ理由
デジタルガジェットのアクセサリーメーカーとして知られるトリニティが、Windows 10 Mobileスマホ「NuAns NEO」を開発した。なぜ、スマホに参入するのか。なぜ、評価が定まりきっていない新OSを採用したのか。同社の星川社長から狙いを聞いた。 - 「NuAns NEO」ならスマホを超小型PCとして活用できる?
デザインにこだわったWindows 10 Mobile搭載スマートフォン「NuAns NEO」が注目を集めているが、機能面でのポイントは「Continuum for Phones」に対応するかどうかだ。 - トリニティ、Windows 10スマホ「NuAns NEO」を2016年1月に発売 11月30日から予約受付開始
スマホなどのアクセサリー販売で知られるトリニティが、Windows 10 Mobileを搭載する「NuAns NEO」でスマホ本体の販売に参入する。本体とカバーが“別売り”となっていることが大きな特徴だ。 - 林信行が注目! 「NuAns」がWindows Phoneを作る意味
日本マイクロソフトが開催した「Windows 10 Partner Device Media Briefing」で、Windows Phoneの開発表明に「NuAns」の名前が。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.