ユーザーが多いほど効率アップ “生中継”に効く動画配信技術「LTE-Broadcast」とは(1/3 ページ)
スマホの動画視聴が増え、モバイルトライフィックの効率化が急がれている。ソフトバンクは9月、ヤフオクドームで「LTE-Broadcast」という技術の実証実験を行い。その効果を確認した。
スマートフォンで動画を見ることが当たり前になり、スポーツやライブなどの各種イベントを生中継で見る機会も増えてきた。テレビ番組を同時配信するアプリも人気で、現在は規制されているNHK番組の同時配信も「2019年の法改正で解禁される」という観測的な報道もあった。
今後も間違いなく増えていくスマホでの動画視聴、特にライブストリーミングなどの生中継コンテンツだが、混み合うモバイル回線で大容量の映像をいかに送るのか、という課題がある。その解決策と目される技術の1つが、QualcommとEricssonが進める「LTE-Broadcast」という仕組みだ。同報配信技術により今までにない効率的な映像配信が可能だという。
そのLTE-Broadcastはどれくらい有効なのか。ソフトバンクは9月17日から19日までの3日間、福岡市のヤフオクドームで行われた福岡ソフトバンクホークスの公式戦で、一般ユーザーが参加するLTE-Broadcastの実証実験を行った。米国でサービスが始まっているLTE-Broadcastだが、国内キャリアが取り組みを公開するのは今回が初めてだ。
LTE-Broadcastの商用化時期や具体的なサービス像は未定だが、「2020年の東京オリンピックに向けて盛り上げていきたい」(ソフトバンク プロダクト本部 瀧川裕之氏)という。期待のLTE-Broadcastはモバイルインフラの課題をどう変えるのだろうか。
目の前の試合をスマホで見る必要とは? LTE-Broadcastの可能性
今回ソフトバンクが行った実証実験は、ヤフオクドームの内野席の一画を対象に、試合中のさまざまなライブ映像をLTE-Broadcastでスマホに配信するというもの。球場には実験用の基地局を増設し、シャープ製の「AQUOS Xx2」をベースにした専用のスマホ100台を用意。福岡ソフトバンクホークスのファンクラブから募集したのべ300人(3日間)が参加した。
「目の前の試合をなぜスマホで見る必要が?」と思われるかもしれないが、観客席から見えるグラウンドは遠く、選手やボールの姿はどうしても小さくなる。テレビ中継のように投手や打者、打球の行方をアップやさまざまなアングルで見たいというニーズは大きい。
プロ野球を開催する球場の多くには大型ビジョンがあり、ゲームの様子を流したり、選手の成績やプロフィールを表示したりしている。それを自分だけのスマホで見られれば、現地観戦の新たな楽しみ方になるのでは? というのが狙いだ。ただ実験の目的はあくまでも技術的な実証。どのような姿でLTE-Broadcastを商用化するのはまだ検討段階だという。
実験の対応エリアは球場の一部だけだが、LTE-Broadcastの仕組みはLTEのカバーエリア全体に広げることも可能だ。限られた場所だけでなく、全国規模で生中継コンテンツを配信する際にも役立つ。同社は月額制のスポーツ中継サービス「スポナビライブ」も展開しており、こうしたアプリ向けのインフラとしても使われる可能性もある。扱えるデータは映像にとどまらず、アプリや端末ソフトウェアのアップデートなど、大勢のユーザーが同じデータを利用するシーンでも有用だ。
料金形態についても未定で、アプリのダウンロードなどであれば既存の通信料金のままで提供し、イベントの生中継ならペイパービュー(PPV)でその都度課金するということも考えられる。また今回の実証実験のようなイベント会場限定の配信であれば、入場料にオプション料金を追加する、あるいはファンクラブ会員に無料で提供――と、ライブイベントの付加価値として活用する構想もある。
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