“秘書”が耳に住んでいる感覚――「Xperia Ear」が単なるヘッドセットじゃない理由:開発陣に聞く(1/2 ページ)
スマートフォンではない「Xperia」が存在することをご存じだろうか。「Xperia Ear」は、声と耳を使ってコミュニケーションをするスマートプロダクト。その開発意図を、ソニーモバイルに聞いた。
「Xperia」といえば、ソニーモバイルコミュニケーションズのスマートフォンブランドでおなじみだが、“スマホではないXperia”が存在するのをご存じだろうか?
ソニーモバイルが2016年11月18日に発売した「Xperia Ear XEA10」は、イヤフォン型のスマートプロダクト。Bluetooth連携したスマートフォンを音声で操作して、電話を発信する、メールを送信する、予定やニュースを読み上げてもらう、といったことができる。
「Bluetoothヘッドセット」でくくってしまうと目新しさは感じられないが、Xperia Earは単なるBluetoothヘッドセットではない。では何が新しいのか。なぜこのタイミングでXperia Earを投入するのか。同社の開発陣に話を聞いた。
秘書は社長がわざわざ言わなくても話す
そもそもなぜ、スマホではないXperiaを開発することを決めたのか。スマートプロダクトを統括する、商品企画 統括課長の近藤博仁氏は「われわれのミッションは新しいコミュニケーションを創造すること。今はスマートフォンを使ったコミュニケーションが主流ですが、これが完成形だとは考えていません。次のコミュニケーション手段が何かを考えたときに、声に着目をしました」と経緯を話す。
「画面から情報にアクセスすることにフォーカスしたスマートフォンの逆を考えました。われわれは『上を向いて歩こう』と言っていますが、下を向かず、画面から離れたところから考えました」(近藤氏)
商品企画 Xperia Ear担当の青山龍氏は、Xperia Earならではの特徴として、「ボイスアシスタントが自発的に話し出すこと」を挙げる。Xperia Earを耳に装着すると近接センサーが検知し、何も操作しなくても「10分前に、○○さんから不在着信がありました」「今日の予定は○○です」などと話しかけてくれる。「秘書は社長がわざわざ言わなくても話しますが、あの感覚ですね。どこまで人に寄り添えるかを目指しました」(青山氏)
Xperia Earの利用シーンは「メッセージのやりとりが一番大きい」と青山氏は話す。Xperia Earを装着して「○○さんにメッセージを送って」と話すと、ボイスアシスタントが「メッセージをどうぞ」と言うので、伝えたい内容を話す。もちろんスマホは取り出さなくてもよい。
「ボイスアシスタントが耳に住んでいるという感覚が新しいですね。画面で情報を得てタッチするという(スマホの)インタフェースが劇的に変わるので、いろいろな形で発展していけるんじゃないかと思います」(青山氏)
側面のキーを長押しすると、特定の相手にメッセージを送信できる。「長押しすると、『メッセージをどうぞ』と言われるので、本文を話すだけです」と青山氏。例えば家族への「帰るメール」も、Xperia Earのキーを長押しして「今帰る」などと話せば、簡単に済む。
要素をそぎ落としたデザインに
Xperia Earが単なるBluetoothヘッドセットではないもう1つの側面が、移動中でも仕事中でも、常に装着するスタイルであること。近藤氏は「今までのヘッドセットは“ガジェット”を付けている感が強く、そこに一石を投じたい」と話すが、イヤフォンをずっと付けたまま過ごすスタイルがどこまで定着するかは未知数だ。
そこで、できるだけ要素をそぎ落として、シンプルなものになるよう工夫した。
まず「耳の中から飛び出さないようなボリューム感」になるよう調整した。「本体の下部は耳に収まるようにし、外から見える上部には金属感のあるリングを入れて、さり気なく主張するようデザインしました」とデザイン担当の大谷祐介氏は話す。さらに、耳に直接当たる本体下部の角を排除して、違和感のないよう調整した。
トップ面にあるLEDはマイク穴にもなっており、1つの要素が2つの機能を兼ね備えている。これも要素をそぎ落とした結果だ。
イヤーピースは、外の音もしっかり聞きたいという人向けに「オープン型」と、ボイスアシスタントの音声をしっかり聞きたいという人向けに「カナル型」を用意し、いずれもS、M、Lサイズが付属する。
片耳に付けるXperia Earは、日常生活を送りながら使うため、利き耳(普段受話器を当てる耳)ではない耳に装着する必要がある。利き耳は人によって違うので、左右どちらの耳にもフィットするよう、造形をまとめた。
両耳対応にしなかったのは、音楽鑑賞がメインの用途ではなく、「コミュニケーションにフォーカスして作り込んだ意思表示でもある」(青山氏)ため。言い換えれば、音楽鑑賞にはXperia Earはあまり向かない。
ボディーカラーは「Xperia X Performance」と「Xperia XZ」の「グラファイトブラック」に合わせ、ニュートラルになるよう工夫した。充電器も同系色でそろえたが、「下地に塗装をして、その上からカラーの色味を重ねて深みのある色を表現しました」(大谷氏)
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