自社ブランドスマホで売り上げ増を狙う、中国の大手家電量販店:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
中国大手の家電量販店が自社ブランドのスマートフォンの販売に乗り出す。価格も手ごろな製品は中国の消費者の心をつかむことができるだろうか?
MVNO事業で挫折の過去も
家電量販店にとってスマートフォンは集客効果の期待できる重要な製品だ。店舗の入り口には各社の最新モデルを並べ、その奥に陳列する家電へと導線をつなげる。スマートフォンの販売数はそのまま店舗の売り上げを大きく左右するのである。
家電量販店が大きく期待したのは、MVNO事業への参入だった。中国では2013年から段階的にMVNO市場が開放され、多くの企業が参入を図った。JD.comは携帯電話の利用料金をポイント換算し買い物にも使えるようにするなど、各社が新たな収益源としてMVNO事業に期待したのだ。国美も早い時期に「極信通信」の名称で参入した。
量販店のMVNO事業のメリットは、スマートフォンとのバンドル販売だ。中国の携帯電話はほぼプリペイド方式であり、スマートフォン購入時にプリペイドの1回線をついでに契約することも簡単だ。極信通信は安価な通信料を武器にスマートフォンとセット販売し、端末販売数の増加を狙ったのだ。
しかし中国のMVNO事業は行き詰まりを見せている。2017年2月時点での全MVNO事業者42社の総加入者数は4600万人。100万人を超える加入者を有する事業者は11社のみだ。中国全体の携帯電話契約数は13億3785万で、最大手のMNO、China Mobileだけでも8億5370万人だ。MVNOの利用者はChina Mobile1社と比較しても、わずか5%にとどまっている。
これはChina Mobile(中国移動)、China Unicom(中国聯通)、China Telecom(中国電信)の3大MNOが大幅な値下げを繰り返した結果である。今や毎月数十元、数百円程度から大手事業者のサービスを受けることもできる。例えばChina Mobileは最低18元(約290円)/月のプランも提供している。MVNOはそれよりも安い料金を掲げており、極信通信の基本料金は8元(約130円)/月だ。
しかし中国には長年使ってきた携帯電話番号を引き継ぐ番号ポータビリティーは提供されていない。国美の店でスマートフォンを買って極信通信のSIMカードを無料でもらったとしても、使い続けるのは料金差のないChina MobileなどMNOの回線になるだろう。そしてMVNO側も、MNOより安い毎月100円程度の料金では、ビジネスとしてのうまみもない。
国美の店内には極信通信の契約コーナーもあるが、来客の数はまばらな状況で事業は実質的に失敗した状態だ。スマートフォンの販売コーナーでも以前なら極信通信回線とのセットを勧められたが、最近ではむしろ中国移動などの回線オファーが増えている。
果たして国美が販売する自社ブランドスマートフォンは国美全体の売り上げにどれくらい貢献できるのか? これが成功すれば、いずれはECサイトも含め自社端末販売の動きが広がるかもしれない。家電量販店が作るスマートフォンの動きに業界が大きく注目している。
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