Galaxy S8+には“最先端”の中身が詰まっていた:バラして見ずにはいられない(1/2 ページ)
Samsungの最新スマートフォン「Galaxy S8+」の分解レポートをお届けする。中身を見ると、最先端の部品が詰まっている。気になるバッテリーのメーカーも調べた。
世界大手のスマートフォンメーカー、Samsung Electronicsは、年間3億台以上の生産数に加え、新しい部品や機能をいち早く搭載する点で常に世界をリードしてきた。そんなSamsungが投入した最新スマートフォンが「Galaxy S8」と「Galaxy S8+」。今回は、より大きな6.2型ディスプレイを搭載するGalaxy S8+の分解レポートをお届けする。なお、今回はau向け「Galaxy S8+ SCV35」を分解した。
ベゼルが細くなり、指紋センサーが背面に移動
Galaxy S8+が従来機から大きく変わったポイントの1つに、外観が細長くなったことが挙げられる。ディスプレイのタテヨコ比は18.5対9で、横幅の倍以上の高さがある。2016年に発売されたGalaxy S7 edgeは16対9だった。フィルムタイプの有機ELパネルと湾曲した3D世代カバーガラスの両端の組み合わせで、ボディーの端ギリギリまで表示部が見え、コンパクトなボディーに大画面を収めている。これによって片手でも操作しやすくなった。
販売中止となった「Galaxy Note7」に搭載予定だった機能の多くはGalaxy S8+に搭載されている。その1つが虹彩認証カメラである。800万画素のインカメラに加え、少し小型の赤外線カメラが隣に搭載された。また、指紋センサーは端末の裏側に移動した。現在の虹彩認証は認証に2秒ほどかかるようだが、これが一瞬で終わるようになれば、指紋センサーはその役割を終えるのかもしれない。
タッチパネルが有機ELの裏側にある
Galaxy S8+のタッチパネルは少々変わった場所にある。本機の有機ELパネルはフィルム状で曲げられる。推定原価はおよそ80ドル。フィルムの発光面裏側に銅箔(どうはく)が貼られており、この銅箔を剥がすとタッチパネルと思われるセンシング面が表れる。つまりタッチパネルは有機ELパネルの裏側にある。カバーガラスに触れた指を認識する信号は、有機ELパネルを突き抜けて裏側のセンサーに届いているということになる。
有機ELの画素配置はPenTileと呼ばれる方式を採用。Red、Green、Blue(RGB)が横並びになるReal RGBではなかった。2017年のiPhoneの一部のモデルには有機ELパネルを搭載すると予想され、画素の配置は本機と同じと予想される。
プロセッサは10nm さらなる微細化も?
Galaxy S8とS8+にはSamsung自前のプロセッサと米Qualcocmmのプロセッサが併用されており、製造は両方ともSamsungが請け負っている。いずれのプロセッサも回路線幅(製造プロセス)は10nmで、上下の金属線との接合面積を増やすため、下の線が上の線に食い込むような形状の「FinFET」と呼ばれる工法が使用されている。FinFETありとなしの場合、FinFETありの方がリーク電流という無駄に流れる電流を抑制できて省エネ効果が高い。現在最も微細な線幅で製造されているプロセッサである。
10nmの次は7nmといわれている。誰が一番乗りを果たすのか? Samsungの10nm工場は2016年に量産を始めたばかりで、しばらくは10nmプロセッサの製造を続けると思われる。現時点では台湾の半導体製造受諾会社のTSMCが7nm一番乗りを表明しており、2018年末に量産開始予定である。極限まで線を細くするため、EUV(extreme ultraviolet)という波長が13.5nmの極端紫外線を製造工程で採用する。
筆者は本稿執筆中、サンフランシスコで開催中の半導体展示会「Semicon West」に参加するため北米に滞在していた。そこで開かれたセミナーや発表会によると、半導体の製造プロセスは3nmまでめどが立っているとのこと。カギとなる技術は、FinFETの形状であるヒレのように上部金属に食い込む部分の形状を複数のストローのようにする「Gate All Around」と呼ばれる技術のようだ。
プロセッサは処理能力が性能の全てではない。電子部品である以上、電気を消費し熱を発する。省エネ性能に優れていて、熱対策が適正に行われているプロセッサこそが真価を発揮する。中身がギュウギュウのスマートフォンにおける熱対策は悩みの1つだ。Galaxy S8+では、中に液体が入った銅のパイプをボディーに埋め込んでプロセッサが接するように配置し、対流により素早く広いエリアに熱を拡散させる工法を採用している。
450mmウェハは登場するのか?
Galaxy S8/S8+のプロセッサは、現在主流の直径300mmのウェハ(半導体の製造に使う、シリコンのお皿)で生産されている。6月にハワイで開催されたInternational Microwave Symposiumは、無線に関係するあらゆる業界から人が集まるイベントで、半導体受託生産大手のGlobal Foundries(GF)が出展していた。同社は450mmウェハの登場は当面ないと予想する。ウェハの大型化には製造装置の入れ替えなど巨額のコストが必要で、そのコストを回収可能なほど多くのICを消費するモノが必要になる。
ウェハが200mmから現在の300mmになった時、けん引役はPCだった。そして300mmから450mmに進む際のけん引役を果たすのはスマートフォンのはずだったが、市場の飽和と共に出荷数の増加も緩やかになり、450mmウェハから取れる膨大なICを消費するマーケットではなくなりつつある。IoT機器の数量は今後増えるかもしれないが、1台あたりのIC搭載数はスマートフォンよりはるかに少なく、こちらも450mmウェハの需要を喚起することにはならないとのことだった。需要があるとすればデータセンターや人工知能の分野だろうと予想している。
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