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Huawei×ライカ協業の舞台裏 「絶望的状況」から「P9」完成までの道のり(1/2 ページ)

Huaweiのハイエンドスマートフォンには、ライカと共同開発したカメラを採用している。2社はなぜタッグを組むことを決めたのか? ライカ品質のカメラはどんな過程を経て完成したのか? Huaweiが披露した開発ストーリーを紹介する。

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 スマートフォンが普及する中で「カメラ」は重要な機能の1つであり、メーカーはカメラ機能に新たな技術をつぎ込んでいる。Huaweiも、スマートフォンのカメラ機能に力を入れているメーカーの1社だ。

 Huaweiスマホのカメラといえば、ドイツのカメラブランド「ライカ(Leica)」と共同で開発しているのが大きな特徴。2社のコラボによって生まれたカメラは、2016年4月に発表した「HUAWEI P9」を皮切りに、直近では「HUAWEI P10/P10 Plus」にも採用されている。

 Huaweiとライカは、どのような経緯で協業することが決まったのか。ファーウェイ・ジャパンが11月8日に開催した「Leica×ファーウェイ共同セミナー」で、その舞台裏が明かされた。

Huawei、ライカ

2013年に連絡を取ったときは断られた

 写真愛好家やフォトグラファーにとってレジェンドといえる存在であり、さまざまな歴史的瞬間を捉えてきたライカのカメラ。そんなライカとの協業を決めた理由として、Huaweiは同社の持つバックグラウンドに加え、「ライカのカメラが優れた光学システムを搭載していること」を挙げる。

 ライカレンズに使われている光学ガラスは、ライカ本社のある独ヴェッツラーで製造されており、この地が「光学のシリコンバレー」と言われるほど、レンズの品質には定評がある。ライカのカメラで撮影した写真には、シャープで豊かな色彩、被写体と背景を分離できそうなほどの立体感がある、とHuaweiは評価する。

 HUAWEI P9が発表されたのは2016年4月だが、Huaweiが最初にライカとコンタクトを取ったのは、そこから約2年半前の2013年12月。Huaweiがライカに提携を打診するメールを送ったところ、丁重に断られたという。それでも懲りずに何度もメールを送り続けたところ、2014年夏に、ライカCEOを交えた面談の約束を取り付けることができた。最初の面談は2時間ほどで終わったそうだが、その後も何度かコミュニケーションを重ねることで、同年に契約が決まった。

Huawei、ライカ
Huaweiとライカが面談できたのは、2014年夏だった

 実は、ライカ側もパートナー企業を探しているタイミングだったそうだ。スマートフォンでの撮影が増えている中で、ライカが100年培ってきたカメラのノウハウをどのように生かすかは同社の課題だった。そこへコンタクトを取ってきたHuaweiの企業文化やビジョンを理解するにつれ、パートナーとしてふさわしい相手と考えたことは想像に難くない。ライカカメラジャパン 企画部の米山和久氏は、「(Huaweiとの協業で)よりライカの名前を広めることができるのは大きなポイント。両社にとってウィンウィンの関係」と話す。

 しかし、ここからが大変だった。Huaweiとライカの契約が成立したのは2014年夏で、HUAWEI P9が発売されたのは2016年春〜夏。つまり、P9の開発には約2年の歳月を要した。なぜこれだけの時間がかかったのか。

「サイズ」と「画質」の壁にぶつかる

 最初にぶつかった壁が「カメラモジュールのサイズ」だった。カメラよりもはるかに薄いスマートフォンに、ライカが求める品質のモジュールを埋め込むのは難易度が高く、従来の光学レンズ設計のノウハウは通用しなかった。結局、カメラモジュールの設計を1からやり直すことになった。

Huawei、ライカ
スマートフォンとライカ品質のカメラモジュールを搭載するのは困難を極めた

 さらにライカ側は、レンズのゴーストとフレア(強い光がレンズに入ると、光りが白っぽくかぶったり、光の反射が起きたりする現象)に対して、Huaweiが普段定めているものよりも数十倍高い基準を求めてきたという。これはライカのレンズと同じ基準だそうだ。

 しかし、高水準の品質を保ちながら価格を抑えてレンズを量産化するのは困難を極め、初期の試作品は、100セットのレンズのうち、要件を満たしたレンズは10セット未満という絶望的な状況だった。

 そんな中でも、Huaweiとライカのチームは昼夜を問わず開発を続け、期日までに何とか量産化のめどが立った。

 次にぶつかった壁が「画質」だ。色彩の再現を評価するカラーチップは、Huaweiの試験基準だと数十個を正確に再現できれば良いとしていたが、ライカは140個のカラーチップを全て正確に表現するという高い基準を要求してきた。

 画質試験は色彩、フォーカス、テクスチャ、ノイズ、ひずみ、ダイナミックレンジなど多岐にわたり、さらに「客観」と「主観」の2つに分けて評価する。客観的な指標は数値化すればよいが、主観的な評価ではそうはいかない。画質調査チームが、100種類以上の指定したシーンやランダムなシーンで撮影を繰り返すという地道な作業の連続。この画質調査だけで数カ月を要したという。

Huawei、ライカ
ライカの画質基準を満たすため、さまざまな要素を客観、主観で評価した
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