大手キャリアの“逆襲”が目立った2017年/MVNOは「勝ち組」「負け組」が明確に:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
2017年は大手キャリアにとって「逆襲の1年」だった。大手3社の解約率は大幅に下がり、MVNOへの流出は止まりつつある。その影響を受け、MVNOは成長が鈍化するところや、事業が破綻するところも出た。
好調続きのY!mobile、UQ mobileもシェアを拡大
一方で、ソフトバンクは大きな料金改定を行っていない。これは、ソフトバンクがむしろY!mobileによって料金競争を仕掛けている側にいるからだ。メインブランドではあえて料金に手を入れず、サブブランドでユーザーを獲得するというのが、今のソフトバンクの姿といえるだろう。Y!mobileは正確な契約者数を公開していないが、いわゆる格安スマホ市場で4割程度のシェアを取っているといわれる。
そのY!mobileが、Yahoo!プレミアムの料金を無料にしたのは2017年2月のこと。同時に、Android Oneを本格展開して、ショップには「Android Ambassador」の資格を持った店員を配置。11月には350人まで増え、年度内に600人体制にするなど、サポートにも力を入れている(関連記事)。12月には「タダ学割」を発表。Android Oneの新モデル4機種も追加した。iPhone SEとiPhone 6sを扱い始めたのも、2017年に入ってからだ。
Y!mobileを追うauのUQ mobileも、2017年にサービスを大幅に強化した。2月には料金プランを改定し、音声通話が5分間定額になる「おしゃべりプラン」をスタート(関連記事)。S、Mしかなかった料金プランに、7GBのLを追加し、大容量のデータ通信をしたいというニーズにも応えた。また、6月にはY!mobileと同内容の「UQ家族割」を追加している(関連記事)。こうした各種改善が功を奏し、UQ mobileの契約者数は9月末時点で60.2万回線(MM総研調べ)に躍進。同調査では、独自SIM型事業者のシェア5位につけ、順位を徐々に上げている。
KDDIはUQ mobile以外にも、傘下のビッグローブをサブブランドとして強化。10月には、auのネットワークを使った「Aプラン」を開始し、ブランドも刷新して「SIM替え」を打ち出している(関連記事)。Y!mobile対抗としてのUQ mobileに加えて、SIM需要を取り込むBIGLOBEモバイルと、地域に根差したJ:COM MOBILEの3本柱で、MVNOの攻勢に対抗していくというのがKDDIの戦略だ。
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