MVNOの成長にブレーキ、サブブランドが勢力拡大 3キャリアに与える影響は?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
NTTドコモは純増計画を90万回線引き下げた。その原因の1つにサブブランドの勢力拡大にある。一方でKDDIとソフトバンクは、自社グループのサブブランドが台頭することでプラスの影響も。今後は「非通信領域」をどれだけ伸ばせるかが鍵を握る。
「MVNOが予想より少し減ってきている。その影響があるので、(純増数の当初予想を)変えさせていただいた」――こう語るのは、NTTドコモの吉澤和弘社長だ。ドコモは、2017年度の予想として、4月に通期で220万回線の純増数を年間計画として打ち出していた。ところが、ふたを開けてみると、上期の純増数は48万1000にとどまり、計画を変更。通期予想を90万回線引き下げ、130万回線を新たな予想値として打ち出した。
通期予想を変更した最大の原因は、「スマートメーターの数が昨年(2016年)度までかなり出ていたが、今年(2017年)度は落ち着いている」(吉澤氏)ためだが、これまで上り調子だったMVNOの勢いにブレーキがかかりつつあることも確かだ。大手キャリアの流出防止策が功を奏しているのと同時に、UQ mobileやY!mobileといったサブブランドが勢いを増しているのが、その理由といえる。
大手3キャリアにとどまるユーザー、MVNOの流出にも歯止め
MVNOの伸び悩みについては、MVNOの多くが回線を借りるドコモ自身も原因の1つといえる。2017年度だけで見ても、シェアパック専用の「シンプルプラン」や、永年1500円割引を受けられる「docomo with」といった各種施策を、矢継ぎ早に打ち出している。解約率低下に直結する固定通信サービスのドコモ光についても、フレッツからの転用需要が一段落したが、新規獲得が増加してきた。
結果として、スマートフォンとフィーチャーフォンだけを合算した解約率は0.47%と非常に低い数値となり、“止血”はほぼ完璧に近づきつつある。純増数の予想値を引き下げた一方で、「ハンドセット(携帯電話)やタブレットについては、(予想値を)変えていない」(吉澤氏)というのも、ドコモ自身の計画にズレがないことの証拠といえるだろう。UQ mobileやY!mobileなどサブブランドへの流出も、「ある数は出ているが、それも時期によって多くなったり、少なくなったりする。その出があるにも関わらず、新規も入ってきている」(同)といい、静観の構えだ。
これに対し、auは新料金プランの「auピタットプラン」「auフラットプラン」を投入したことが功を奏し、「流出防止に有効に働いた」(KDDI田中孝司社長)。同社の解約率は0.79%になり、「グループMVNOへの移行を除くと、さらに低い水準で、前年同期比でほぼフラットになっている」(同)という。
流出が減少している傾向は、ソフトバンクも同じだ。ソフトバンクグループの孫正義社長は「スマホの純増数が着実に増えている。ソフトバンクのユーザーとY!mobileのユーザーの、両方が入っている」と、右肩上がりの状況を強調。上期の国内通信事業における営業利益は7%減の4340万と振るわなかったが、これはSoftBank光をはじめとするサービスの「先行投資をしているため」(同)として、2018年度以降の増収を示唆した。「一時的に値引きが入るが、この結果、解約率もどんどん下がっている」(同)と、ドコモ同様、ユーザーの流出防止に腐心している様子もうかがえる。
総務省のガイドラインが改定された結果、3キャリアの流動性は既に止まりつつあったが、MVNOへの流出も、徐々に緩やかになりつつあるようだ。KDDIの田中氏は「au STARというリテンションプログラムと、新料金プランがダブルで効いて、よりMNOの方がいいというインサイトができつつあるのではないかと勝手に推測している」と語っていたが、これは、ドコモやソフトバンクにも同様のことがいえるだろう。
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