MVNOの成長にブレーキ、サブブランドが勢力拡大 3キャリアに与える影響は?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
NTTドコモは純増計画を90万回線引き下げた。その原因の1つにサブブランドの勢力拡大にある。一方でKDDIとソフトバンクは、自社グループのサブブランドが台頭することでプラスの影響も。今後は「非通信領域」をどれだけ伸ばせるかが鍵を握る。
勢いを増すサブブランド、KDDIグループも徐々に拡大
ただし、メインブランドからの流出という観点で見ると、auは完全に歯止めがかかっていないという現実もある。同社が指標として掲げるauと傘下のMVNOのユーザー数を合算した「モバイルID数」は、上期で2608万と純減傾向だった2016年から反転しているが、auの契約者数は2015年上期の2571万から徐々にその数を減らしている。2017年度の上期は、2482万にまで減少しており、「あまりうれしい内容ではないと思っている」(田中氏)。
同時にこれは、KDDI傘下のMVNOが勢いを拡大してきた証拠でもある。MVNO分のモバイルID数を見ると、2017年度9月末時点で127万と、前年同期の24万から急増。ビッグローブ買収効果もあるとはいえ、1年間で100万契約以上を獲得していることになる。中でも、「UQ mobileの貢献度が圧倒的に高い」(田中氏)そうで、2016年から継続的に端末ラインアップや料金プランを強化した結果が現れつつある。
KDDIは、UQ mobile、BIGLOBE、J:COM MOBILEと、主に3つのMVNOをサブブランドとして扱い、ユーザー層に応じた特色を出そうとしている。田中氏によると、「UQ mobileはこれからスマホをお使いになる人や、端末をセットで買う人。SIM販売を中心とした商売はBIGLOBE。ケーブルの販売チャンネルを利用した商売はJ:COM」といった形で差別化しており、先に挙げたUQ mobile以外では、ブランドを一新したBIGLOBEの「数字がじゃんじゃん上がっている」(同)状況だという。その結果、モバイルID数という指標でいえば、auユーザーの流出分を、ほぼ傘下のMVNOの増分で吸収できるようになった。
サブブランドでは、Y!mobileの勢いも衰えていない。ソフトバンクの宮内謙社長は、「Y!mobileはご存じのように伸びている」と話し、引き続き好調であることをアピール。孫氏も、先行投資の一部である顧客基盤の拡大にY!mobileを挙げていた。宮内氏は「ソフトバンク“も”伸びている」と語っていたが、ARPU(1契約あたりからの収入)は下げ止まっておらず、第2四半期は4340円まで低下したことからも、Y!mobileの比率はまだまだ高そうだ。
もちろん、MVNOへの流出が完全に止まったわけではない。冒頭述べたように、ドコモの純増予想が減った要因の多くは、スマートメーターに取り付けるモジュールの需要が低下したところにある。一方で、ドコモ自身も認めていたように、MVNO、特にドコモ系MVNOの勢いも決して右肩上がりではない。市場を見渡すと、大手キャリア自身の流出防止策と、サブブランド構成の板挟みになっていることが分かる。
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