「5G」でクルマ社会はどう変わる? 3キャリアに聞く:特集・ミライのクルマ(3/3 ページ)
次世代通信規格の「5G」を生かした新しいビジネスモデルとして期待されている「コネクテッドカー」や「自動運転」。5Gでクルマ社会はどんな変化を遂げるのだろうか。ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に聞いた。
クルマは大きなスマートフォンになる?
クルマに4K以上の高精細な動画を配信することも、5Gだからこそできること。そこで、クルマを情報端末と見立てて、さまざまなコンテンツを配信するビジネスも生まれそうだ。ドコモは「dTV」や「dミュージック」などのエンタメサービスをスマートフォン向けに展開しているが、より大容量の4K動画やハイレゾ音源などをクルマに向けて配信するサービスも想定される。ドコモはこの分野も積極的で、山口氏はクルマ向けサービスを「2020年ごろには提供したい」と話す。「クルマの中でも提供できるよう環境とインフラを整備し、スマホの契約者が引き継げるようにしたい」と同氏。
ここまで来ると、クルマは大きなスマートフォンともいえる。ドコモ(通信キャリア)はネットワーク、サービス基盤、課金プラットフォームを提供し、パートナーを束ねるアグリゲーターとしての役割を担う。つまりスマートフォンのビジネスがクルマにも応用できるということだ。ここに、新たなビジネスチャンスが眠っていそうだ。
KDDIの両氏は自動運転によって人間の「目」がある程度解放されれば、従来は「耳」中心だった車内エンターテインメントに「目」で楽しむものを加えられるのではないかと語る。5Gの特性と自動運転を組み合わせれば、自動車向けの映像コンテンツ配信などもできそうだ。
3キャリアが目指す交通社会
最後に、各社がどんな交通社会を目指しているのかを聞いた。
「クルマと通信は加速化していますが、まだ発展の余地があります。クルマにさまざまな情報が入ることで、交通事故を撲滅させることが第一の目的です。クルマと携帯電話は縦割りで別々の世界観でしたが、そこがシームレスになっていく。そういう世界がやってきたときに、スマホのアセット(資財)をいかにクルマに持っていき、より快適で安全なカーライフを実現できるかを模索していきたいですね」(ドコモ山口氏)
「テクノロジーで人を笑顔にできるといいなと思っている。交通弱者でも便利に使えるものを提供できると良いと思っている。みんながハッピーなるような社会を作っていきたい」(KDDI鶴沢氏)
「人間の移動するスタイル自体が変わっていく。車内趣味を楽しんだり仕事をしたりできるようになる。自動運転の進展で、交通事故死をなくせるかという点に注目している」(KDDI中山氏)
「クルマは高度なIoT(インターネットに接続できるデバイス)でもあります。今後の交通社会は、データをどう活用するかが重要になります。われわれは、AIやロボットの分野でデータを分析、活用していて、“キャリアの先”として、そこに強みがあります。回線から要素技術、シェアリング事業までエンドtoエンドでやっているのは、世界的に見てもソフトバンクぐらいではないでしょうか。
ここ数年、クルマ自体に大きな技術革新が起きています。それに追従する形で、社会インフラとしての道路からもさまざまなデータが取れるようになっています。これらを掛け合わせたときに、今までは想像できなかった交通監視、制御ができるようになります。回線だけではなく、データ流通基盤を含めてご提供できるのではないかと思います」(ソフトバンク湧川氏)
3社に共通するのは、交通事故をなくし、安心・安全な交通社会を作っていきたいという思い。そしてクルマがインターネットに接続するのが当たり前になれば、スマートフォンの普及に匹敵するほどのパラダイムシフトが起きそう。自動運転が実現するのは2025年以降といわれているが、その頃にはキャリアの5Gサービスも軌道に乗っているはず。5G時代には、クルマをハブにしたさまざまなビジネスモデルが生まれるだろう。
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