通信業界を揺るがす「サブブランド問題」の論点:MVNOの深イイ話(3/3 ページ)
総務省の有識者会議では、サブブランドが主な検討項目だと報じられています。サブブランドとは一体何で、MVNOとの関わり合いは今後どうなっていくのでしょうか。
あるべきMNOとMVNOの競争とは?
これまでも、MNOに対するMVNOへの網開放の義務付けは議論の的となってきました。MVNO側からは、国民の財産である周波数資源を私企業が半ば独占的に割り当てられているのだから、MVNOに対し原価に近い水準で提供することを義務付けるべきだという意見が継続的にありましたが、反面、MNO側からは「投資した設備を原価で貸さなければならないとすると設備投資をするインセンティブがなくなり、国際的な競争に負ける」といった反論が出されてきました。総務省は、このバランスの中で長年に渡り比較的にMVNO側に近い意見を政策に拾い上げてきたのだと認識しています。
しかし、これまでの議論の大前提は「MNOは競争を回避し横並びで料金を高止まりにさせている」という根強い批判にあります。もし、MNOが本格的に他のMNOやMVNOとの競争に乗り出し、サブブランドの料金を下げ、MVNOのビジネスを脅かしたとすると、それはどのように批判可能なものなのでしょうか?
格安スマホへの国民の理解は深まっていて、そのシェアは無視できない水準に到達し、なおも伸びています。もはやMNOも格安スマホを抜きにして市場戦略を考えることはできません。そういったファンダメンタルな変化の中、MVNOの競争も変わっていくことは不可避でしょう。これまでのように、データ接続料頼みの格安スマホ一本やりの戦略では、格安スマホ市場に本腰を入れ始めたMNOとの差別化を打ち出していくことは困難になっていくものと思います。
筆者の所属するIIJは、サブブランドを用いた既存契約者の囲い込みが行われていることを検討会の場で指摘し、消費者の選択肢を狭めるような反競争的もしくは差別的取り扱いがなされていないか検証すべきとの意見を述べました。
つまるところ、サブブランドが消費者のためにならない、単なる囲い込みのために使われている事例があれば、電波を占有するMNOの市場戦略としては是認できないということです。このような消費者利益の最大化を目的とした競争環境のグランドデザイン(原則)の作成が、検討会の場で話し合われることを強く期待しています。
その上で、フルMVNOのような、より高度で付加価値の高いサービスをMVNOが実現する後押しをする取組みを総務省が進めることで、MVNOが多様な通信サービスを実現し、MNOやそのサブブランドと直接競争できるようにしていくことこそが、消費者の期待に他ならないと考えています。
著者プロフィール
佐々木 太志
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) ネットワーク本部 技術企画室 担当課長
2000年IIJ入社、以来ネットワークサービスの運用、開発、企画に従事。特に2007年にIIJのMVNO事業の立ち上げに参加し、以来法人向け、個人向けMVNOサービスを主に担当する。またIIJmioの公式Twitterアカウント@iijmioの中の人でもある。
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