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「6000億円、少ない帯域幅でも十分に戦える」 楽天、携帯キャリア事業の勝算は?

楽天が5月10日、2018年度第1四半期決算を発表。携帯キャリア事業の計画を、副社長執行役員 通信&メディアカンパニー プレジデントの山田善久氏が説明した。そもそも楽天は、なぜキャリア事業に参入するのか。勝算はあるのか。

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 楽天が5月10日、2018年度第1四半期決算を発表。その中で、2018年4月に参入が決定した携帯電話事業の計画や狙いを、副社長執行役員 通信&メディアカンパニー プレジデントの山田善久氏が説明した。

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楽天の山田善久氏

 楽天には1.7GHz帯(20MHz幅×2)が割り当てられ、4月9日に総務省から特定基地局開設計画の認定が行われた。同社は子会社の楽天モバイルネットワークを通じて、携帯キャリア事業に参入。2019年10月のサービス開始に向けて準備を進めている。

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 楽天は2025年までに6000億円を調達し、2018年から2028年までの10年間で5263億円を設備投資に充ててインフラを構築する計画。2025年度までに人口カバー率96%、2028年度末までに契約数1000万人を目指す。また東京電力グループ、中部電力、関西電力、九州電力が保有する鉄塔設備を活用し、コストを削減しながら効率よく基地局を配備していく。山田氏によると、他の地域の電力会社とも話を進めているという。

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 一方、約6000億円はNTTドコモの1年間の設備投資額にすぎず、「十分な投資額なのか」と疑問視する声も挙がっている。この点について山田氏は「設備投資額は複数の(基地局)ベンダーからの見積もりをもとに出しており、都市部の基地局はより精緻に配置していく。他社は過去から3Gを含めて相当いろいろな設備投資をやってきている。(楽天が)新しい技術を使って投資をすれば、6000億でも十分まかなえると確信している」との見解を示した。

 「1500〜2000億円ぐらいを楽天から新会社(楽天モバイルネットワーク)に注入して、残り4000億ぐらいをリースし、携帯事業の売り上げを証券化する。こういったことをすれば、きちんとまかなえるし、財務的に体力はある。そこも含めて総務省に評価いただいたのではないか」(山田氏)

 楽天はMVNOとして「楽天モバイル」を展開しているが、そもそもキャリア事業に参入する狙いはどこにあるのだろうか。山田氏は「高い利益を上げられること」と「楽天のエコシステム拡大」の2点を挙げる。

 キャリアとして自社でネットワークを持った方が、MVNOよりも利益を上げられるというのが楽天の考えだ。「MVNOは薄利というか、ドコモさんから(帯域を)仕入れて再販している。自社ネットワークではないので、利益率がそれほど高くなく、思い切ったマーケティング施策や料金プランを提供するのに制約がある。自社でネットワークを持ち、新しい技術を使ってネットワークコストを下げることで、今までと違ったプランを作れる」と山田氏はメリットを話す。

 楽天はEC、電子マネー、クレジットカード、銀行、デジタルコンテンツなどさまざまなサービスを入り口としてユーザー獲得を狙う「楽天エコシステム」を展開している。このエコシステムを拡大する上で、キャリア事業を展開することは意義があるという。「ネットワークを押さえることで、楽天のメンバーとの結び付きを強める。楽天のエコシステムの中のピースが大きくなる」と山田氏は話す。一例だが、携帯キャリアになれば、キャリアメールを提供できる。このキャリアメールを起点にしてユーザー接点を拡大するというメリットも考えられる。

 楽天が保有する周波数帯は合計40MHz幅と少なく、高い通信品質を確保できるかも懸念されるが、山田氏は「新しい技術によって、1000万〜1500万という(契約数の)数字は40MHzでも十分に対応できる。これが制約になるとは思っていない」と自信を見せる。「2019年10月時点でいきなりはないが、何年かかけて2万7000の基地局を打つ※。途中の段階では、他社のネットワークをお借りすることを含めて考えていく」とした。

※総務省が公開している「第4世代 移動通信システムの 普及ため移動通信システムの 普及ため移動通信システムの審査結果(※PDF)」によると、楽天は2025年までに2万7397の基地局を運用し、これによって人口カバー率96%を実現する計画だ


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