復活から攻勢に転じたXiaomi、2018年はシェア4位を維持できるか:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
中国の新興スマートフォンメーカーとして一時は世界中から脚光を浴びたXiaomi。Xiaomiの成功モデルは、スマートフォン市場の成長が右肩上がりの時代にしか通用しなかった。しかしそれからわずか3年でXiaomiは劇的な復活劇を果たした。
中国で復活、インドでも1位 先進国展開がこれからの課題
2018年に入ってからのXiaomiの新製品も、それぞれに明確なターゲットユーザーを持った製品ばかりだ。2月登場の「RedMi Note 5 Pro」はAI搭載のデュアルカメラ、5.99型で18:9の大画面、4000mAhの大容量バッテリーを搭載、パステルブルーとパステルピンクという女性を意識したカラバリもそろえた。価格はわずか1099元から、プロセッサにSnapdragon 636を初めて搭載するモデルだったが、そこに本製品の魅力を感じる消費者はほとんどいないだろう。
4月には2018年向けとなる3機種を発表。ベゼルレスで話題になったMIXシリーズのマイナーアップデート品の「Mi MIX2S」は上質な仕上げで持つことや使うことに喜びを感じられる高級機だ。一方、Xiaomiが出資するBlack Shark Technologyからゲーミングスマートフォンの「Black Shark」も登場した。前年にゲーミングPCメーカーのRazerが市場を開拓したゲーミングスマートフォン。Xiaomiは早くも製品を手掛け、中国市場でのマーケットリーダーを目指そうとしている。
また、ミッドレンジモデルとして「Mi 6X」も登場した。価格は1599人民元で、MiシリーズとRedMiシリーズの中間に位置する価格帯のモデルだ。いわゆる「そこそこスペックが良く、価格も安い」という一般向けの製品だが、前後とも2000万画素カメラを搭載しカメラフォンとしても十分使える製品である。
5月には999元の低価格ながら、フロント1600万画素のセルフィー特化スマートフォン「RedMi S2」を投入。スマートフォンで毎日SNSを使い、自分撮り写真のアップは欠かせない、という若い世代をターゲットにした。こうしてみるとBlack Shark以外の製品はどれもカメラ性能を重視。スマートフォンで最も求められている機能がカメラであることをXiaomiは理解している。
中国のJiguang(極光)の調査によると、2018年第1四半期の中国国内のスマートフォン販売シェアは、1位Huawei(25.4%)、2位OPPO(14.8%)、3位Vivo(14.3%)、4位Xiaomi(12.8%)、5位Apple(8.4%)だった。1年前の同期はそれぞれ19.2%、18.7%、17.9%、8.2%、14.4%だったことを考えると、Xiaomiは大きくシェアを伸ばしている。
この中国に加え、Xiaomi全体の販売数増を支えているのは2014年から進出したインド市場だ。オンライン販売を強化し、2017年第4四半期にSamsungを抑えてシェアトップとなった。2018年第1四半期も1位の31%を記録(カナリス調べ)。Samsungは26.2%で2位と後を追いかける位置に残っているが、東南アジアなどで高い存在感を誇るVivoとOPPOは3位と4位ながらシェア5%台と大きく引き離された。
OPPOはAmazonと組んでインド国内へオンライン専用モデル「RealMe」を投入したが、これはXiaomiの低価格モデル「RedMi」シリーズへ対抗するためだ。今やインドで誰もが買いたがるスマートフォン、それがXiaomiになっているのである。
とはいえ、先のことは一切見えないのがスマートフォンの世界。インドもいずれ中国のように成長が鈍化する日がやってくるだろうし、他の新興市場、インドネシアなどでもいずれ競争は厳しくなるはずだ。そのためには国際的なブランド力を高め、値段や性能ではなくXiaomiの名前で製品を買ってもらえるようになる必要がある。
アジアではシンガポールや香港などの先進国にも進出を果たしているが、どちらも市場規模は小さく、販売数を伸ばすためではなくブランド力をつけるための市場展開だろう。先進国への展開拡大こそが、真のグローバル企業、グローバルブランドになるためには必要なのだ。数だけを出していた数年前、Xiaomiが興味あるのは低価格機が売れ、人口の多い新興国だった。しかし今では先進国展開を本格化させている。
2017年11月にはスペインへ、2018年5月にはフランスへ進出した。今後は米国での展開も計画されているといわれている。日本展開は代理店経由で一部のアクセサリーを販売するにとどまっているが、OPPOの例を考えると、いずれスマートフォンの展開もあるかもしれない。
中国で復活し、しばらく成長が続くインドでトップを走り続け、さらに先進国への展開もうまくいけば、Xiaomiの販売台数はこれからも伸びていくはずだ。2018年は1億台の販売数だけにとどまらず、Huaweiをターゲットにできるシェア4位の座を死守すること。これがXiaomiの目指すべき目標だろう。
関連記事
- Xiaomiの新フラグシップは切り欠きありの「Mi 8」ハイエンドは3D顔認識搭載
8周年を迎えた中国Xiaomiが新フラグシップ端末「Mi 8」を発表した。6.21型ディスプレイは切り欠き付き。ハイエンドの「Mi 8 Explorer Edition」はディスプレイ内指紋認証センサー、「Face ID」のような3D顔認識機能も搭載する。 - 安定のHuawei、勢いの止まらぬOPPO、復活のXiaomi 2017年の中国メーカーを振り返る
2017年も中国メーカーがし烈な争いを繰り広げている。安定のHuawei、急成長で追いかけるOPPOとVivo、そして復活の動きが見えるXiaomiだ。2017年のこれら4社の動きをざっくりと振り返ってみよう。 - Xiaomi、18:9ベゼルレスでフルセラミックボディーの「Mi MIX 2 Special Edition」を約8万円で発売へ
Xiaomiが新フラグシップ端末「Mi MIX 2」を中国で発売する。18:9、5.99型のディスプレイは先代よりさらにベゼルレスに近くなり、Snapdragon 835/メモリ6GB/ストレージ64GBのエントリーモデルは3299元(約5万5000円)。 - 海外での成功は通用しない? OPPOは日本で“実体験”できる場所を提供すべき
中国のOPPOが日本に参入。販売シェア世界4位を誇るOPPOは日本でも通用するのだろうか? 筆者は、海外の成功体験は日本ではほとんど通用しないと考える。 - スマホシェア世界4位に食い込んだOppo、Xiaomiにない強さとは?
スマホの世界シェアでApple、Samsung、Huaweiに次ぐ4位に食い込んだOppoとはどんなメーカーなのか。かつての勢いを失った振興メーカーの“顔”、Xiaomiとの違いに迫った。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.