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インタビュー

ソフトバンク回線を始めたLINEモバイルはどこに向かうのか? 嘉戸社長に聞くMVNOに聞く(2/2 ページ)

いよいよソフトバンク回線を使ったサービスの提供を始めたLINEモバイル。ソフトバンク、LINEとはどのような連携を進めていくのか? 嘉戸彩乃社長に、ソフトバンク回線提供開始までの裏側や、今後の展開を聞いた。

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ドコモ回線も続ける

―― 逆に、ドコモ回線はどうしていくのでしょうか。

嘉戸氏 続けていきます。ドコモ回線も他のMVNOと比べて悪いかというと、そういうわけでもなく、安定して運用するところには気を遣っています。エリアもドコモがいいという方がいますし、端末の問題もあります。ソフトバンクとの提携を発表したときにはネガティブな意見も多かったので、きちんと残していきますし、運営もちゃんとしていきます。

―― 増強もするということでしょうか。

嘉戸氏 もちろんです。ただ、すみ分けはあって、この速度でいいからドコモのエリアがいいという人と、エリアはこれで十分なのでソフトバンクで速度が速い方がいいという人が出てくると思います。回線切り替えを無料にしたのも、そういう理由からです。

 唯一の不安は、ドコモ回線からの切り替えが思いの他多いのではないかというところで、今数十万人のユーザーがいるのでそこが数パーセント動くだけで、かなりの数になってしまいます。オンラインでポチっとやるだけでSIMが届くので、ハードルが相当低いので、帯域が足りるかどうかが心配なところです。

―― ソフトバンク回線の増強はドコモ回線以上に手厚くなるのでしょうか。

嘉戸氏 お客さまがどの程度、どう使うかで設計は変ってきます。イーブンにやっていくというより、それぞれに対してちゃんとやっていくという話になると思います。難しいのは増強に時間がかかることで、ソフトバンクはこれを変えていくと聞いていますが、現時点だと、1カ月前、2カ月前に発注しなければなりません。これが厳しいですね。

―― ちなみに、自分もソフトバンク回線でLINEモバイルを契約してみました。あれだけ速度が出れば、積極的にソフトバンク回線を選ぶ人も多いのではないでしょうか。

嘉戸氏 リテラシーが高い人は、特にそうなりますね。ソフトバンク回線は全体の20%程度という見立てをする方もいます。業界の構造からいっても、そのぐらいのシェアですが、ローンチ後の勢いを見てびっくりしています。

ソフトバンクは、SIMの在庫管理が大変

―― ただ、契約したときにSIMカードをiPhone用かそうでないかを選ぶのが、少々ハードルが高いと感じました。

嘉戸氏 在庫管理が大変なんですよ!! どうにかならないかは、ソフトバンクに言っています。お客さまにとってもベストではないので、考えなければいけないところです。

LINEモバイル
LINEモバイルのソフトバンクSIMが使える端末の状況は、ちょっと複雑だ

―― 端末まで買ってしまえば自然とSIMカードを選べますが、そうでないとちょっと組み合わせが多くて難しいですね。それでいうと、端末そのままで移行してくるユーザーが40%という数字には驚きました。何があったのでしょうか。

嘉戸氏 気づいたら、数字があそこまで高くなっていました。CMでの訴求は特にしていないので、(訴求をしている)mineoさんが高くなるのは分かりますが、自分たちもここまで高くなるとは思っていませんでした。それだけ、今の端末をそのまま使いたいという人が多いのだと思います。

―― SIMロック解除の義務化や、解除不可期間が短縮されたことの影響もあるのでしょうか。

嘉戸氏 それもあると思いますね。BIGLOBEさんなど、他の事業者もSIMの差し替えを訴求している影響もあると見ています。

―― そこまで高くなると、資本提携時にシナジー効果として挙げていたソフトバンクの端末調達力はいらなくなるのではないでしょうか。

嘉戸氏 そんなことはないです(笑)。40%とはいっても、端末が必要なお客さまもいますからね。私たちにとっても、やはり欲しい端末はあります。

通信料をLINEポイントで支払える仕組みを導入する

―― 会見では、ユーザー属性など、現状のLINEモバイルの話がごっそり抜けていました。改めて教えていただけないでしょうか。

嘉戸氏 最初は入れていたのですが、皆さんそんなに興味はないだろうと思って、ごっそりカットしてしまいました(笑)。プレスリリースにもあったように、満足度は90%以上で、速度は落ちてきてはいますが、推奨度もモニタリングしている他のMVNOより高く出ています。

 ユーザー属性ですが、若い人がすごく多いですね。20代、30代で6割以上を占めていて、これはソフトバンク本体やY!mobileよりもはるかに若いです。やはり40代、50代にオンラインで売るのは難しいということはあると思います。オフラインの店舗も増やしていますが、キャリアショップのように座って雑談しながら契約するということはできないですし、やりたくはないので。

―― 他のMVNOと比べても若いですね。

嘉戸氏 始まったばかりのころは40代が多かったのですが、やっているうちにどんどん20代、30代が増えていきました。お客さまがお客さまを呼ぶ構造になっていて、その結果として若い人が増えています。割合は毎月上がっている状況ですね。特に施策を打ったわけではなく、自然とそうなっています。かつてはキャリアもブランドで、例えばドコモの50Xシリーズなどを持っていることが重要なときもありましたが、今はそういう時代でもありません。若い人ほど、そういう傾向になっているのだと思います。

―― ソフトバンク側との連携は強化されましたが、一方でLINE側とはどう連携していくのでしょうか。

嘉戸氏 通信料をLINEポイントで支払える仕組みを入れていきます。LINEと連携して、そのまま通信料から引かれるようになります。LINEショッピングなり、LINE Payなりでポイントがたまりますが、この出先を用意してあげる必要もあったからです。

 また、オンラインのサポートを厚くして、公式アカウントと友だちになったとき、一発で答えが返ってくるような仕組みみも入れていきたいですね。

―― それはAIで返すということでしょうか。

嘉戸氏 AIで返すこともあると思いますし、有人で返すものも作ろうと思っています。今は契約者のみですが、未契約者の方にも、有人サポートを入れていくことを考えています。リアルタイムで、メールのように待たなくていいのがチャットの特徴ですが、そのいいところを生かしていけば、今までのキャリアとは違った購買体験が作れると思います。

取材を終えて:ソフトバンクとのシナジーをどう出していくのか

 ついに始まったLINEモバイルのソフトバンク回線だが、3カ月で準備したというだけに、まだ第一歩を踏み出したところという印象を受ける。データフリーが始まる秋ごろから、本格展開としてアクセルを踏んでいくことになりそうだ。端末についても、現状のラインアップでは満足していない様子がうかがえた。ソフトバンクの力を借り、Android OneやiPhoneなどが調達できれば、機種変更の際にLINEモバイルへの移行を検討するユーザーも増えそうだ。

 KDDI買収以降もBIGLOBEがユーザーを増やしているように、サブブランドより一段安い料金水準にはニーズもある。LINEモバイルはLINEのブランドを使っていることもあり、すみ分けがより明確なだけに、他キャリアにとっても手ごわいライバルになるかもしれない。ただ、回線の上にYahoo!のサービスを乗せていけるY!mobileとは異なり、ソフトバンク側にとってのメリットがいまいち見えづらい部分もある。シナジー効果をどう出していくのかは、今後の課題といえる。

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