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「デメリットをもっと知りたい」「速度に不安」――ユーザーの声から考えるMVNOサービスの課題(2/2 ページ)

大手キャリアよりも割安な料金を背景に順調にユーザー数を伸ばしてきたMVNOサービス(格安SIM)。携帯電話サービス全体に占めるシェアも10%を超えたが、その成長に鈍化が見られるようになってきた。さらなる成長のためには何が必要なのだろうか。

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ユーザーが語る懸念

 ではディスカッションに参加した3人は、MVNOサービスに対してどのような懸念を持っているのだろうか。ディスカッションにおいて筆者が特に注目した3つのポイントを取りあげたい。

懸念1:“デメリット”が分からない

松原さん
デメリットを知りたいという松原さん

 ドコモを20年以上契約しているという松原さんは、1年ほど前にテレビCMやショッピングセンターに設置された「出前店舗」でMVNOサービスの存在を知ったという。CMを見て、出前店舗でスタッフから説明を受けて、「携帯電話料金が安くなる」ということは良く分かったが、「ドコモを解約した際のデメリット」や「MVNOサービスを使う上でのデメリット」が良く分からなかったという。

 MVNOサービスへの乗り換えを検討している人にメリットだけではなくデメリットも分かりやすく伝えることはとても重要といえそうだ。

サブブランドとMVNOのユーザーの不満点
MVNOユーザーとサブブランドのユーザーの不満点を比較しても、「通信速度の遅さ」はMVNOサービスの有意なデメリットといえる(勉強会資料から)

要因2:データ移行への不安

小林さん
データの移行に不安を覚える小林さん

 auを5年間契約し、以前はドコモやソフトバンクも使っていたという小林さんは、自宅の近所にMVNOの実店舗があったこと、海外に住むおいが一時帰国時にMVNOのプリペイドSIMカードを使っていたことからMVNOサービスに興味を持ったという。ただ、実店舗では「じっくり話を聞く時間がない」ということで、実際の情報収集はインターネットを中心に行っているという。

 そんな小林さんは、MVNOサービスへの乗り換え時にデータ移行がスムーズにできるかどうかが気になるという。ケータイ(フィーチャーフォン)時代にドコモからauに乗り換えた際に、「6割程度」しかデータ移行ができなかったという経験を踏まえての不安だ。

上田さん
ケイ・オプティコムの上田晃穂氏

 この不安に対し、「mineo」を運営するケイ・オプティコムの上田晃穂氏は手持ちのスマホをそのまま使う場合は、SIMカードを差し替えるだけでデータ移行は不要である旨を説明。また「イオンモバイル」を運営するイオンリテールの井原龍二氏も端末を買い換える場合でも、スマホからスマホへの買い換えなら、LINEのプラットフォーム間移行を除いて比較的容易にデータ移行できる旨をレクチャーした。

 データ移行の悩みは、MVNOサービスへの乗り換えだけではなく、端末の単純な買い換えでも起こりうる。データ移行に関する不安を解消するような取り組みも必要そうだ。

要因3:“通信速度”の遅さ

富岡さん
通信速度は重要と語る富岡さん

 auやソフトバンクを経て、現在は6年間ドコモを使っているという富岡さんは、同僚が「LINEモバイル」を契約したことから、MVNOサービスへの乗り換えを考え始めたという。SNSをよく使うことから、LINEモバイルのデータフリーサービスには大きな魅力を感じているという。

 一方で、そのLINEモバイルを使っている同僚から通勤時間帯や昼食時の通信速度が遅いという話をされ、実際見たところそれを体感できたという。「安い料金で大容量プランを選択すれば動画をたくさん視聴できるし、LINEを使って(LINEユーザー同士で)長電話もできる」とMVNOサービス(LINEモバイル)のメリットは十分に分かってはいるものの、どうしても通信速度が遅いことは気になるという。

松田さん
ビッグローブの松田康典氏

 この悩みに対し、上田氏は「MVNO(の通信速度)はどこも似たり寄ったり」で、MNOと比べると遅い傾向にあることを説明しつつ、「しかし全く使えない訳ではなく、自分が我慢できるかどうか体感してみてほしい」と説明。

 「BIGLOBE SIM」を運営するビッグローブの松田康典氏は「(通信速度を向上するために)帯域(データの幅)を広げてしまうと料金が高くなってしまうという『トレードオフ』があり、苦しんでいる」と苦しい胸の内を語りつつ、「通信速度と体感速度はイコールではない」として、上田氏と同様に実際に試すことの重要性を説明した。

井原さん
イオンリテールの井原龍二氏

 井原氏は「昼間のスピードを重視するのであれば、昼間でも比較的速度の出るY!mobileやUQ mobileという選択肢もある。『昼間に(通信速度が)遅くても構わない』というのでなければMVNO(にすること)は難しいと思う」と率直な所を語る。一方で「お昼に(比較的通信の速い)フリーWi-Fiのあるカフェに行くといった解決策もある」とした。

 各種調査でも、MNOサービスと比べるとMVNOサービスの通信速度は安定しない傾向にある。富岡さんや各MVNOの関係者も指摘している通り、特に通勤時間帯や昼間の通信速度は非常に厳しい

速度
MMD研究所が調べた通信速度データ。サブブランドと比べると、MVNOサービスの速度は安定しない

 しかし、少し見方を変えると、全てのユーザーにとってMNOの通信速度が必要なのかといえばそうではない。実際にユーザーに使ってもらう方策を考えることが重要といえそうだ。

 富岡さんのように近くにユーザーがいればちょっと使わせてもらうということもできるが、全ての人がそうであるとは限らない。SIMカード(あるいはSIMカードの入ったスマホ)の貸し出しサービスを提供する、あるいは店頭にSIMカードを入れたスマホを展示するといった取り組みを考える必要がありそうだ。

イオンモバイルの取り組み
イオンモバイルではSIMカードの入ったスマホを1週間貸し出すサービスを行っている。トーンモバイルでもTSUTAYAでのスマホ貸し出しサービスを実施しているが、いずれも実店舗があるからこそできる取り組みでもある
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