“ポイント”と“手数料ゼロ”で根付かせる――コード決済乱立時代を「LINE Pay」はいかに戦うか
LINEアプリ内でのコード決済に力を入れつつ、QUICPay+対応で使える場所の拡充に努める「LINE Pay」。モバイル決済が乱立する中、どのような戦略を描いているのだろうか。
「LINE Pay」は、2014年に始まった「LINE」アプリを使った決済サービスだ。最近ではQRコードやバーコードを用いる「コード決済」に注力しつつ、2018年秋をめどにジェーシービーが主導する非接触決済システム「QUICPay+」にも対応することで利用できる店舗(加盟店)の拡大を進めている。
加盟店の拡大は、“本命”のコード決済でも進めている。6月28日から「LINE Pay 店舗」アプリの提供を開始し、店舗が保有するスマホやタブレットで気軽にコード決済を導入できるようにした上で、同アプリを利用する際にかかる決済手数料(決済金額の3.45%)を8月1日から2021年7月31日までの3年間無料とする施策も行う。
しかし昨今、コード決済サービスにはさまざまなプレーヤーが参入してきており(参考記事)、競争が激しくなりつつある。ある意味で「レッドオーシャン」になりつつあるコード決済の世界で、LINE Payはどのような戦略を描いているのだろうか。
まずは「阻害要因」を取り除く
LINE Payの長福久弘COOは、ユーザーと加盟店双方に存在する「阻害要因」を取り除くことが、LINE Pay普及において重要であると語る。
ユーザー:「インセンティブ」と「体験」で定着を狙う
サービスとしてのLINE Payは、広く普及しているLINEアプリに内包されている。そのため、他のコード決済サービスよりも間口は広く取られている。しかし、間口が広ければ使ってもらえるとは限らない。
そこでLINE Payは、使ってもらうためのインセンティブ(動機付け)として、新しいインセンティブプログラム「マイカラー」を導入した。利用度合いが高いほどポイント付与率が上がるというマイカラーだが、その発表後、ネット上では「カラー(ランク)の決まり方が良く分からない」「カラーによっては全くポイントが付かない」といったネガティブな反応が散見された。
そこで8月1日から“透明性”を高めるプログラム改定を実施。カラーの決定基準を「絶対評価」化し、最低ランクに当たる「ホワイト」でもポイント還元を受けられるようにする。さらに同日から2019年3月31日までの期間限定で、コード決済に対して追加で一律3%ポイントを還元するキャンペーンも実施。最上位の「グリーン」ランクの人がコード決済を利用すると、最大で5%のポイント還元が受けられるという。
またLINE Payの機能を体験してもらうためのキャンペーンも実施。例えば7月17日までの期間限定で、ユーザー送金を体験してもらうべく「10円ピンポン」キャンペーンを行った。「送った同額を送り返せば実質無料でクーポンがもらえる」(長福COO)ということもあってか、このキャンペーンによってLINE Payのアクティブユーザーが約2.7倍になったという。
コード決済の促進策としては、月末の1週間限定で「Payトク」キャンペーンを実施している。6月27日〜7月3日実施分では、コード決済の金額(総額)が約70%増えたという。なお、このキャンペーン自体はコード決済だけではなく請求書払いやオンライン決済も一部対象となる。
ポイントアップや残高還元を通して、ユーザーを定着させる狙いが見える。将来的には、LINEとグループ企業が提供するサービスとのシナジーも追求し、LINEブランドのサービスをよりおトクに使えるようにしていくという。
加盟店:初期投資と手数料を“ゼロ”にしてハードルを下げる
ユーザーの利便性を向上する上で、加盟店を開拓することは非常に重要だ。先述の通り、LINE Payは2018年秋をめどにQUICPay+に対応する。これにより、2018年中に全国の100万店舗(コード決済加盟店とQUICPay+加盟店の合算)でLINE Payを使えるようにするという。
しかしすでにコード決済やQUICPay+に対応している店舗は、大企業やその傘下にある企業が運営するものが中心。日本で大半を占める中小企業(あるいは個人)が運営する店舗では導入にかかる初期費用や決済手数料がネックとなって導入できないケースも少なくない。
「日本全体のキャッシュレス化を進める」という観点から、LINE Payでは店舗用決済アプリの無料提供を開始。先述の通り2021年7月31日まではこのアプリを経由した場合の決済手数料を無料とする。
このアプリは「決済コミュニケーションアプリ」という触れ込みで、コード決済したユーザーに店舗アカウントを「友だち」として登録することを促したり、登録してくれたユーザーに対してメッセージを送ったりすることもできる。今後、クーポンやショップカードを発行する機能や、売り上げを分析する機能も追加する予定だという。
初期導入費用を無料として、手数料も当面は無料とすることで、中小規模の店舗での普及を促進する。
世界展開に向けて「決済端末」も開発
世界的な普及に向けて、LINE Payでは独自の決済端末も開発。この端末はコード決済だけではなくNFC決済にも利用可能で、3G(W-CDMA)やWi-Fi、Bluetoothを使った通信機能を備える。電源の確保しづらい場所でも利用できるように、7800mAhのバッテリーも搭載している。
価格やNFC決済対応など、詳しい仕様は今後発表するとのことだが、まず日本と台湾で2018年内に展開することは決まっているという。
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