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モバイル業界の政策を決めるのに、なぜ“有識者会議”が行われるのか?MVNOの深イイ話(2/2 ページ)

携帯電話に関する政策を決める上で、重要な役割を果たす有識者会議。なぜ、有識者会議は必要なのでしょうか。MVNOとして、どんな話し合いをしてきたのでしょうか。

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業界の果たすべき役割と政策提言

 ここまで、政策実現に関する総務省側の動きについて説明してきましたが、その他のステークホルダーの果たす役割ももちろんあります。業界のことを一番熟知しているのは事業者ですから、そこから課題を抽出し、適切に有識者会議にインプットすることが重要となります。

 MVNOに関していえば、2014年の前回の包括的検証に合わせ、業界的課題をまとめるために、2013年に業界団体としてのMVNO委員会を一般社団法人テレコムサービス協会の中に設置しました。そして、その最初のミッションとして「MVNOの事業環境の整備に関する政策提言」を取りまとめ、2014年3月に公表しました。筆者は、MVNO委員会の発足時のメンバーの一人として実働チームである運営分科会に参加し、この政策提言の取りまとめにも参加しています。

MVNO委員会
MVNO委員会の「MVNOの事業環境の整備に関する政策提言」

 この政策提言では、MVNOの事業運営にとって重要な接続料制度問題やSIMロック解除ガイドライン、MNOの販売奨励金の問題など9項目の課題を挙げ、情報通信審議会での事業者ヒアリングでこれを説明し、その後の制度見直しにつなげていきました。

 今回の包括的検証に向けては、MVNO委員会内での業界横断的なオピニオン形成のための勉強会を2017年からスタートし、そこで作られた課題リストを元に、「MVNOの事業環境の整備に関する新政策提言」を取りまとめ、2018年10月に公表しました。この「新政策提言」は前回同様、「モバイル市場の競争環境に関する研究会」での事業者ヒアリングで説明しています。

MVNO委員会
MVNOの事業環境の整備に関する新政策提言

 今回の「新政策提言」では、接続料制度の見直し、MNOのグループ内優遇の排除、スイッチングコストの低廉化といった直近の課題や、eSIM、LPWA、そして5Gに向けた中長期的課題を含め、計8項目の課題を挙げて総務省の包括的検証に寄与したいと考えています。

 このような業界の取り組みは、時には私的なロビー活動であると誤解されることもありますが、MVNO委員会は公的な政策立案プロセスである有識者会議への参加と、政策提言の公表といういずれも公的な取り組みを通じてMVNOの課題意識を可視化し、その解決を通じて利用者の利益につなげることを目的にしています。

 なかなか知られることのない地味な活動ではありますが、このような取り組みを続けることがMVNOの足腰を鍛えていきますので、今後とも継続していければと思っています。

著者プロフィール

佐々木太志

佐々木 太志

株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) ネットワーク本部 技術企画室 担当課長

 2000年IIJ入社、以来ネットワークサービスの運用、開発、企画に従事。特に2007年にIIJのMVNO事業の立ち上げに参加し、以来法人向け、個人向けMVNOサービスを主に担当する。またIIJmioの公式Twitterアカウント@iijmioの中の人でもある。


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