元FREETEL増田薫社長が語る「経営破綻の理由」と「変態スマホへの思い」(3/3 ページ)
端末メーカー、MVNOのプラスワン・マーケティングが2017年に破綻。社長の増田薫氏は自己破産を申請し、表舞台から姿を消した。その増田氏が、TAKUMI JAPANとして事業を再開。経営破綻の反省をどう生かし、今後どのような方向に進んでいくのか?
「撮って翻訳」や「テザリング」が差別化ポイントに
―― 翻訳機というと、増田さんも在籍されていたソースネクストがシェアを取っていますが、違いはどこにあるとお考えでしょうか。
増田氏 僕も海外によく行きますが、対面だと相手も何とかしたいので、言葉が話せなくても意思疎通ができてしまうことがあります。ただ、文字は読めません。それを解決するのがこの製品だと思っています。一番大きいのが「撮って翻訳」で、A4ぐらいのサイズなら、スパッと翻訳できます。細かな点では、Wi-FiにWPSや、ホテルなどでWi-Fiの認証が必要なときにブラウザが立ち上がる機能も入れています。
また、発売前は海外で日本語にすることが多いと思っていたのですが、いざ出してみたらインバウンド対策で使われていることも多いと分かりました。地方のレストランなどの方が、日本語から外国語に変えるパターンですね。チャット翻訳も、添乗員の方が旅行している方全員に渡して、「あと何分で戻ってきてください」というのをそれぞれの言語で配信するような使い方もされているようです。
―― 翻訳機と銘打っていますが、テザリングにも対応しています。これはなぜでしょうか。
増田氏 これだけのサイズですし、海外に行くとやはり通信がしたくなります。インバウンド向けで使うときも、翻訳だけでなくホットスポットサービスまで提供できます。そのために、周波数帯も幅広くしていて、世界どこに持っていっても大体はLTEでつながると思います。
―― SIMカードつきのものも発売しました。
増田氏 143カ国でつながり、うち75カ国はLTEに対応しています。ただ、海外での通信に関しては、まだまだ改善の余地があると思っています。
2019年春に日本でスマートフォンを出す
―― 先ほど、まずは米国とおっしゃっていましたが、日本で携帯電話やスマートフォンに取り組むのは、いつごろになるのでしょうか。
増田氏 春ごろに出す予定です。
―― 意外と近いですね(笑)。
増田氏 ただ、それはうちのものではありません。FREETELが(一時期)Huaweiより売っていたというウワサは中国でも広まっていて、どうしても日本で出したいという引き合いが多い。うちが作ったわけではないので、KAZUNAブランドは付けませんが、セレクションという形で販売することを考えています。
取材を終えて:地に足が付いた印象も、ハングリー精神は失わず
FREETEL時代の増田氏は「世界一」を目標に掲げ、メディアにも壮大すぎる夢を語るきらいがあった。良くも悪くもギラギラとした印象が強く、個性が強くて面白い半面、中には怪しいと感じる人もいたはずだ。これに対し今の増田氏は、経営破綻を経験し、そこから復活したこともあり、以前より発言内容が謙虚で、言葉を選んで話している様子が見受けられた。どちらがいいかは一概には言えないが、筆者の目には、地に足が付いたようにも見えた。
経営破綻で株主や債権者、さらには従業員にも迷惑を掛けたことは事実で、そこは反省すべき点だが、失敗を糧に再び事業にチャレンジできるハングリー精神は素直にすごいと感じた。リスクを取って挑戦している最中のベンチャー経営者にも、勇気を与えたはずだ。FREETEL時代には「Simple」や「MUSASHI」のように攻めた製品も多かったが、こうした端末に対する熱意も冷めていないようだ。春に登場する同社がセレクトした端末にも期待したい。
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