「5Gに対応させただけ」では物足りない 新たな提案も必要な5Gスマホ:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
「5G」一色だったといえるMWC19 Barcelona。Samsung、Huawei、LGエレクトロニクス、Xiaomi、OPPO、ZTEなど、Android端末を手掛ける主要メーカーが5Gスマホを発表した。いずれのスマートフォンも、4G版とサイズ感が大きく変わらないのが印象的だったが……。
5Gならではの端末とは? 折りたたみを提案したHuaweiとSamsung
この点で評価できるのは、Huaweiの「Mate X」だ。Mate Xは、ディスプレイそのものを折り曲げられる端末で、開くと8型、閉じると6.6型(裏は6.38型)になる折りたたみの仕組みが最大の特徴だ。同社傘下のHiSiliconが開発した5Gモデムの「Balong 5000」を搭載し、sub-6(6GHz帯以下の周波数を使う5G)で下り最大4.6Gbpsの速度を実現する。
商用化が近い5Gは、いずれも制御にLTEの設備を使う「NSA(Non-StandAlone)」だが、Mate Xはその先にある、5Gの設備のみを使う「SA(StandAlone)」にも対応する。Huaweiのデバイス部門CEO、リチャード・ユー氏が「Mate Xなら未来の5Gにも対応できる」と語っていたのは、そのためだ。しかも発売は6月を予定しているといい、他の端末メーカーだけでなく、チップセットベンダーとして競合するQualcommをも一歩リードした格好だ。
Mate Xを折りたたみで、かつ5G対応にしたのは「4Gのときと同じような端末だと、ユーザーの購買意欲が上がらない」(ユー氏)という理由からだ。ユー氏は「大画面だと5Gの体験価値が上がる。より高画質な映像は、たくさんの人が一斉に使うとその分帯域幅が必要になる」と言い、タブレット大のサイズと5Gは、切っても切り離せないものだと力説する。同時にスマートフォンとしての「携帯性も求められる」(同)ことから、行きついたのが折りたためるMate Xだったという。
ただし、5Gが商用環境で利用できる国は、2019年時点だとまだ限定的だ。Mate Xには「5Gバージョンしか用意されていない」(同)ため、販路も絞られてしまう恐れはあるが、Huaweiはネットワークに先駆けて端末を発売する予定。「まずは4Gスマートフォンとして使ってもらい、ネットワークがアップグレードされたら自動で5Gが利用できるようになる」(同)といったシナリオも考えているという。5Gの周波数がまだ割り当てられていない日本での展開予定は未定だが、「販売計画はできるだけ早く検討したい」(ファーウェイ。ジャパン デバイスプレジデント 呉波氏)方針だ。
対するSamsungも、MWCに先駆け、自社イベントの「Galaxy UNPACKED 2019」を米サンフランシスコで開催し、「まったく新しいカテゴリーの製品」(プロダクトマーケティング担当SVP ジャスティン・デニソン氏)と銘打った「Galaxy Fold」を発表。同イベントでは実機の展示はなかったが、MWCではケース内に実機を入れる形で来場者にGalaxy Foldを披露した。
MWCでのGalaxy Foldは展示のみで、残念ながら実機に触れることはできなかったが、これは、先に発売されるGalaxy S10シリーズに注目を集めたいという狙いがあったためだという。UNPACKEDで紹介されたように、きっちり動作する端末はあり、4月の発売に向け、着々と完成度を高めているようだ。UNPACKEDで明かされたように、このGalaxy Foldにも5G版が用意される。折りたたむ方向は逆だが、くしくもHuaweiとSamsungの両社が、5G時代の新しいスマートフォンの方向性を示した。
もっとも、その価格はMate Xが2299ユーロ(約29万円)、Galaxy Foldが1980ドル(約21万円)と、新しいがゆえに、通常のスマートフォンの2倍、3倍といった設定になってしまった。HuaweiのユーCEOは「スマートフォンとタブレットの2台持ちをしていたユーザーも、この1台で済む」といい、目標販売台数も200万台程度に設定しているようだが、本格的な普及は、現行のハイエンドモデル並みまで価格が落ちてくるのを待つ必要がある。
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