auの「アップグレードプログラム」終了へ 9月のiPhone商戦で新たな割引施策も?:石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)
KDDIの2019年度第1四半期の業績は増収減益だったが、順調な進捗(しんちょく)だという。分離プランは1500万契約を超えたが、気になるのが端末購入補助だ。法改正に合わせて現行の「アップグレードプログラム」は終了するが、9月のiPhone商戦に向けて新たな施策を導入する可能性が高い。
アップグレードプロブラムは見直しに、9月には新サービスが登場か
ただし、省令によって契約にひもづかない端末購入補助の上限が2万円に定められるため、現行の「アップグレードプログラムEX」は提供が難しくなる。アップグレードプログラムによって免除される額が、一般の中古買い取り業者の買い取り価格を上回っている場合、その差分が“補助”と見なされるためだ。ドコモが6月に導入した「スマホおかえしプログラム」は、免除額を3分の1に限定することでこれをほぼ回避できたが、半額が免除されるauのアップグレードプログラムEXは、規制の対象になる。
例えば、現時点で「Xperia 1」をauオンラインショップで購入した場合、端末価格は10万9080円(税込み、以下同)。48回払いにすると、初回が2296円、以降47回が2272円の割賦を組む形になる。25カ月目で機種変更して、端末を返却したときの実質価格は5万4552円だ。これに対し、約2年前に発売した「Xperia XZs」は現時点で、中古業者の買い取り価格が1万2000円にまで下がっている(じゃんぱらの場合の上限額)。Xperia 1の免除額との差分は4万円を上回っており、総務省のルールに抵触するおそれがある。
厳密に言えば、Xperia 1同士で免除額と2年後の推定買い取り価格を比較しなければならないが、Androidの場合、傾向として2年で大きく買い取り額が落ちることがある。そのため、48回のうち24回を免除するアップグレードプログラムは、提供が難しくなると判断したようだ。iPhoneのように、差額があまりないか、むしろ中古業者に買い取ってもらった方が高くなるケースもあるが、端末ごとに条件を変えると、オペレーションが煩雑になり、ユーザーの理解を得るのも難しくなる。
また、アップグレードプログラムEXは再加入の条件は撤廃されたものの、行使するには依然として機種変更が必須になる。通信契約にひも付く形での補助は完全に禁止されるため、いずれにせよ、現行の形では提供が難しくなる。こうした点を考慮し、KDDIは「今のアップグレードプログラムは続けることができない」(高橋氏)と判断したようだ。
一方で、分離プランは端末購入に対する負担感が上がるため、「何かしらの工夫をしないといけないとは思う」(高橋氏)という。10月以降に向け、規制を回避できる形でのアップグレードプログラムが導入される可能性は高そうだ。ドコモのような3分の1を免除する形になるか、auならではの独自性を出せるのかは、注目しておきたいポイントといえる。
例年通りだとすると、9月には新しいiPhoneも発売される。現行のアップグレードプログラムEXは9月30日まで提供されるが、「iPhoneの発売時期が確定していないため、対応方針もまだ決めていない」(高橋氏)という(新iPhoneはアップグレードプログラムEXの対象外になる可能性がある)。ただし、高橋氏は「あまりむちゃくちゃなことにならないよう、気を付けていきたい」とも語っているため、このタイミングで、新しいiPhoneに“改定したアップグレードプログラム”を先行提供する可能性はありそうだ。
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