ドコモのプレサービスから見える、5Gへの期待と不安:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
9月20日に、ドコモは5Gのプレサービスを開始した。一般のユーザーが契約できるわけではないが、周波数や基地局などの設備は、2020年春に予定される本サービスと同一の環境。華々しくスタートしたプレサービスだが、現実を見ると不安要素も少なくない。
9月20日に、ドコモは5Gのプレサービスを開始した。一般のユーザーが契約できるわけではないが、周波数や基地局などの設備は、2020年春に予定される本サービスと同一の環境。ドコモの吉澤和弘社長も「料金はいただかないが、本格的に5Gを開始する日と位置付けている」と意気込む。端末もスマートフォンとWi-Fiルーターを計4機種用意。ラグビーワールドカップ2019の会場で一部の観客に貸し出したり、ドコモショップに配備したりすることで、ユーザーに5Gをアピールしていく。
エリア展開に自信をのぞかせるドコモ、鍵になるのは4.5GHz帯
プレサービスと銘打った実証実験は大手3キャリアともに実施しているが、ドコモのそれは、より大規模なものだ。周波数は総務省から割り当てを受けた3.7GHz帯、4.5GHz帯のSub-6と、ミリ波と呼ばれる28GHz帯を利用。商用サービス開始までに、ドコモショップの一部やスタジアム、球場、駅、空港などに、5Gのエリアを構築する。吉澤氏によると、基地局の設置は「前倒しを予定している」といい、2020年度第1四半期までには、47都道府県に5Gのエリアを展開。「その1年後には、1万局の構築を目指す」(同)という。
エリアの拡大に自信をのぞかせるドコモだが、理由の1つには、ドコモに割り当てられた周波数がある。3.7GHz帯、28GHz帯はau、ソフトバンクおよび楽天モバイルと共通する帯域だが、ドコモのみとなるのが4.5GHz。吉澤氏は「4.5GHz帯は、場所によって(3.7GHz帯と)使い分けることができ、より効率的なエリア展開ができる」と自信をのぞかせる。
3.7GHz帯は、衛星との干渉を避ける協議が必要になり、実際に電波を出すのに時間がかかるという事情もあるようだ。同社の経営企画部 5G事業推進 室長の太口努氏も3.7GHz帯は「他の事業者も使っているが、干渉などの問題があり、調整でき次第という側面がある。高出力で吹けるようになるまでには、時間がかかる」と語る。4.5GHz帯も他事業者との交渉は必要になるとのことだが、3.7GHz帯より素早いエリア展開が可能になるという。
プレサービスで設置した基地局などの設備は、原則として本サービスでもそのまま利用するという。ユーザーはかなり限定されるが、同時に、かつ多地点で、通信を提供し、そのまま本サービスに移行できる点が、実証実験ではなく、プレサービスとうたった理由といえる。通信速度はSub-6の3.7GHz帯と4.5GHz帯が下り最大で2.4Gbps、ミリ波の28GHz帯が下り最大3.2Gbpsと、冬に約1.6Gbpsへの高速化が予定される4Gの理論値を上回った。
9月18日に開催された発表会では、コアネットワークを進化させていく方針も語られた。“仮想化”が、それだ。現状、ドコモのコアネットワークは40%程度が仮想化しているが、「5Gでは完全な仮想化を目指す。親局でも完全仮想化を検討している」(吉澤氏)。この発言は、楽天モバイルに対するけん制と見ることもできる。同社の売りは完全仮想化されたネットワークだが、ドコモも、ここに対抗していく意思表示をしたといえる。
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