ドコモのプレサービスから見える、5Gへの期待と不安:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
9月20日に、ドコモは5Gのプレサービスを開始した。一般のユーザーが契約できるわけではないが、周波数や基地局などの設備は、2020年春に予定される本サービスと同一の環境。華々しくスタートしたプレサービスだが、現実を見ると不安要素も少なくない。
商用モデル並みの端末も用意、マイネットワーク構想も掲げる
端末も、スマートフォンとWi-Fiルーターの計4機種、約7000台を調達した。プレサービスでは、ラグビーワールドカップ会場で一部の来場者に渡し、マルチアングルのコンテンツを楽しむために利用する他、パートナーとなる法人に貸し出すことも予定しているという。5Gエリアになる、ドコモショップにも設置される。
スマートフォンはあくまで“試作機”という位置付けだが、サムスン製のものは米国や韓国など、先行して5Gの商用サービスを開始している国で市販されている「Galaxy S10 5G」がベース。LGエレクトロニクス製の端末も、「LG V50 ThinQ 5G」をドコモ向けにカスタマイズしたものだ。「本サービス開始時には、この端末がそのまま販売されるわけではない」(吉澤氏)が、商用モデルに近い機種をそろえてきたところにも、ドコモの本気がうかがえる。
本サービスに合わせて販売する端末も、準備しているようだ。例年、ドコモは10月に年度末までのラインアップを“冬春モデル”として発表しているが、吉澤氏によると、5G対応モデルは春までに、別途披露する予定だという。
5月に開催された発表会で語られた「マイネットワーク構想」も、改めて語られた。「5Gは、スマートフォンが当然出てくるが、それで表現しきれるものが全てではない。周辺にXRデバイスやウェアラブル、360度カメラなど、いろいろなものがくっついていくことで、5Gならではの空間を作り出すことができる」(同)というのがドコモの考えだ。ARデバイスを開発するMagic Leapとの資本、業務提携も、こうした戦略に基づくものだ。
吉澤氏は「Magic Leap Oneは本格的に出すには少し時間がかかるため、春にというわけにはいかないが、ウェアラブルや360度カメラなどはいろいろなベンダーと対応している。商用のときに、できるだけ出していけるようにしたい」と語る。5Gは多接続も特徴で、4Gのとき以上に、幅広いデバイスに内蔵される可能性がある。ドコモも、将来的には「そのデバイスが5Gの機能を持ち、スマートフォンがなくなる。究極的にはそういったこと狙う」(同)という。
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