セット販売での値引きに「覚悟」を、5Gはサービス開始直後からMVNOに開放を 総務省の有識者会議は最終局面へ(2/2 ページ)
総務省は2019年12月2日に有識者会議「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第22回会合を実施。1年以上にわたって実施された同研究会の、最終報告書の骨子案に関する議論が進められた。今回の主なテーマはキャリアのセット販売、MVNOへの5G開放。
5Gはサービス開始直後からMVNOへの開放を
事業者間の競争条件に関しては、5G時代における携帯電話会社とMVNOとの関係に関する内容がまとめられている。5Gでは当初、4Gのネットワーク設備の中に5Gの機器を導入して5Gのサービスを提供する「ノンスタンドアロン」(NSA)で運用されるが、その後5Gの機器のみでネットワークが構成される「スタンドアロン」(SA)で運用されることとなり、それぞれの運用に応じた課題があるとしている。
NSAの課題として挙げられているのは、1つにMVNOが5Gのサービスを開始できる時期である。報告書案では、携帯電話会社が5Gの商用サービスを開始すると同時に、MVNOも5Gのサービスを提供できるようにすることが適当となされているが、それに対する携帯電話会社の情報提供は十分ではなく、また大手3社の5G商用サービス開始が2020年春を予定しているため、最終報告書を取りまとめてから各社に要請するのでは遅いことから、総務省としては先んじて情報提供を要請することを考えているとのことだ。
そしてもう1つは接続料に関して。NSAでは4Gと5Gが一体で運用されることから、4Gと5Gの接続料を一体で計算することに「合理性がある」としているが、それがあまりに高額になるとMVNOの経営に大きな影響を及ぼすことから、その際は接続料を4Gと5Gで別々に設定してもらうなどの措置が必要になるとしている。
だが携帯電話会社からは、4Gと5Gを一体で運用するため双方のトラフィックを識別できないとの見解も出ている。そこで総務省側は、あくまで「各社との相談になる」としながらも、4G単体での接続料を設定することになった場合は、総トラフィックから推計して、それぞれの接続料を計算してもらうことになるのではないか、と説明している。
一方、SAの運用に代わり本格的な5Gの時代が訪れると、MVNOには低価格サービスだけでなく、5Gの特徴を生かしたより多様な役割が期待されるようになる。報告書案では、MVNOがより高度で多様なサービスを提供できるよう、携帯電話会社がAPIでなるべく広範囲の機能を開放したり、MVNOが自ら構築したコアネットワークを、携帯電話会社の基地局設備に接続できるよう機能開放したりするためのルール整備を進めることが適当、との説明がなされている。
「モバイル市場の競争環境に関する研究会」第18回のMVNO委員会提出資料より。SAによる運用ではネットワークスライシングにより、MVNO側がコアネットワークを有することで自由度の高いサービスを実現できる「フルVMNO」の実現を目指しているという
またSAの時代になると、コアネットワークに他社のクラウドを活用するなど設備の多様化が進むことで、第二種指定電気通信設備を有する電気通信事業者(二種指定事業者)の規律に当てはまらず、現在の接続料ルールを適用できないケースが出てくることが想定される。そこで報告書案では、携帯電話会社のネットワーク構築動向を注視しながらも、新しい形態のネットワークでも二種指定事業者の規律対象となるよう制度の検討が必要としている。
MVNOの音声通話料引き下げに具体的な言及はなし
この他にも、報告書案ではこれまで議論がなされてきた、幾つかの要素について言及があった。その1つはeSIMで、報告書案ではMVNOとの公正競争やその利用促進のため、eSIMサービスの提供に必須となる、遠隔でのSIMの書き換えに必要なリモートSIMプロビジョニング(RSP)を「開放を促進すべき機能」に位置付けることが適当であるとし、携帯電話会社とMVNOとの協議を促進する方針が示されている。
また2020年度から接続料の算定方式を、2年前の利用実績に基づいて算出する「実質原価方式」から、将来の予測に基づいて算出する「将来原価方式」へと変更することになる。報告書案では、それに合わせる形で予測値の算定方式の適正性を向上させる検証を毎年進め、BWA事業者の接続料も毎年見直すことが適当だと示されている。
もう1つ、一時期「MVNOの通話料引き下げが総務省で検討される」との報道があったが、MVNOが定額通話サービスを提供できるよう、適切な音声卸料金の確保についても報告書案では言及されている。とはいえ、具体的な方針が定められているわけではなく、中間報告書をなぞって「検証が必要」との旨が記述されているにとどまっている。
この点については構成員から、「音声サービスは利用しない人も増えているが、(携帯電話サービスの)シンボル的なものなので、この問題への対応が必要と考えている」(日本総合研究所 執行役員 法務部長の大谷和子氏)といった意見が挙げられている。今後、何らかのタイミングで議論が進められる可能性もありそうだ。
報告書案では最後に、今後も一連の事項に関して問題が起きないかを注視し、問題が発生すれば積極的な対応をしていくべきと、今後のフォローアップについて言及されている。報告書案は、今回の議論の結果を反映した上で再び議論される予定で、最終的な取りまとめは2020年の1月から2月頃となるようだ。
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