CES 2020から見えた5Gスマホの最新動向 ミドルレンジ化が想定以上に進みそう:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)
CES 2020では5Gが主要なテーマの1つとして挙げられていたが、5G関連の展示はやや控えめだった印象がある。Qualcommはブースを自動車関連だけに縮小、Intelもブースの出展を見送った他、Samsungはプレスカンファレンスを実施しなかった。2月にはスペイン・バルセロナで「MWC Barcelona」の開催を控えており、メーカーやベンダー各社は、体力を温存しているという見方もできる。
2020年1月7日から10日に渡り、米ネバダ州ラスベガスで「CES 2020」が開催された。同イベントでは、5Gが主要なテーマの1つとして挙げられていたが、VerizonのCEO、ハンス・ベストバーグ氏が基調講演に登壇したり、T-Mobileがインテルと共同で600MHz帯での5Gのデモを披露したりした2019年とは一転。5G関連の展示はやや控えめだった印象がある。
5G関連では物足りなさが残ったCES、米中貿易戦争の影響も?
Qualcommはブースを自動車関連だけに縮小、Intelもブースの出展を見送っている他、Samsung Electronicsも会期前日に毎年行ってきたプレスカンファレンスを止め、基調講演に一本化している。米国や中国などの主要な国や地域では、既に5Gの商用サービスがスタートしており、もはや“日常”になりつつある。展示会で、その先進性をアピールするフェーズではなかったということなのかもしれない。
2月にはスペイン・バルセロナで「MWC Barcelona」の開催を控えており、メーカーやベンダー各社は、体力を温存しているという見方もできる。また、米中貿易戦争の影響もあってか、中国メーカーや中国からの参加者も減少傾向にある。米国商務省の制裁下にあるHuaweiはブースを出展したものの、展示していたのは発表済みの端末のみ。政治的なメッセージは抑え、淡々と製品をアピールしていた格好だ。
OPPO、Xiaomiなど中国の主要なスマートフォンメーカーも、CESには出展していない。Huaweiより一足先に米国の制裁を受けたZTEは、2019年からブースの展示を取りやめており、ラスベガス内のホテルに商談用のスペースを持つにとどまっている。スマートフォンや通信関連で中国メーカーの存在感は強いがゆえに、中国勢が様子見を決めているCESに物足りなさが残るのは自然なことといえる。
一方で、Samsungはプレスカンファレンスこそなかったが、ブースでは5Gを大々的にアピールしていた。CESの開幕直前にあたる1月2日(現地時間)には、2019年に投入した5Gスマートフォンの総販売台数を発表。約670万台の端末を販売したことを明かした。CESに合わせ、フラグシップモデルのお披露目の場となる「UNPACKED」を、2月11日(現地時間)に米サンフランシスコで開催することも発表した。
スマートフォンのコーナーでは、4Gと5Gの比較デモ実施。4Gではところどころ止まってしまうゲームや動画が、5Gでスムーズに流れる様子を、2つの端末を並べる形で紹介していた。発表済みの端末ではあるが、5G版の「Galaxy Fold」も来場者の注目度は高く、展示コーナーには行列ができていたほど。5G時代を見据えたと形状といわれるフォルダブルスマートフォンへの関心の高さがうかがえた。
500ドルを下回る5Gスマホの登場、端末先行で進む5Gの普及
3Gや4Gのころは、基地局やコアネットワークなどのインフラ整備が先行し、端末は後からそこに追いついてきた。日本で最初のサービスを開始したドコモがLTEの立ち上げと同時に用意したのが、データ通信カード2機種のみだったことからも、それが分かるはずだ。これに対し、5Gでは当初からスマートフォンがそろい、ハイエンドモデルの多くで5G対応が標準になりつつある。先に挙げたSamsungの670万台という数値も、それを裏付ける。
現時点ではハイエンドモデル中心の5Gスマートフォンだが、急速にミドルレンジ以下にも広がろうとしている。Qualcommは、会期前日の1月6日(現地時間)にプレスカンファレンスを開催。12月に同社が「Snapdragon Tech Summit」で発表した「Snapdragon 865」や「Snapdragon 765/765G」の導入状況を説明した。
同社のクリスティアーノ・アモン社長によると、Snapdragon 865やSnapdragon 765/765Gは、1世代前のチップセットと比べ、それぞれ2倍、2.5倍の端末に採用されたという。特に伸び率が高いのがハイエンドより一段価格の安い端末に採用されるSnapdragon 765/765Gで、モデムチップを一体化したことも奏功し、幅広いメーカーが興味を示しているようだ。既にOPPOは、Snapdragon 765Gを搭載する「Reno 3 Pro」を中国で発表している。
CESでは、こうした動きに合わせ、中国メーカーのTCLが「TCL Plex」に続く自社ブランドを冠した「TCL 10」シリーズを発表した。CESでの発表はあくまで“先行公開”といった位置付けになり、詳細な機能やスペックは不明。同社のブースにも実機は展示されなかったが、注目したいのは、5G対応の「TCL 10 5G」を含め、同シリーズ3機種が全て500ドル(約5万4700円)以下で販売されるということだ。これは、OPPOのReno 3 Proを下回る。ミドルレンジにまでスコープを広げることで、5Gスマートフォンの普及に拍車が掛かりそうだ。
発表会は開催されなかったが、Hisenseも中国半導体ベンダーのUNISOC製チップセット「Ivy 510」を搭載した5Gスマートフォン「F50 5G」を出展した。同社の説明員によると、商品化にはまだ時間がかかり、価格なども不明とのことだが、普及価格帯を目指しているとのこと。Qualcommは、Snapdragon 600シリーズの5G対応も表明しており、ミドルレンジやローエンドの5G化は、想定以上の速さで進む可能性がある。
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