“タフネス5Gスマホ”を2020年に投入する京セラ 強みは「ジャパンメイド」:CES 2020(1/2 ページ)
京セラがCES 2020で5G対応スマートフォン開発を表明。5G高耐久スマートフォンおよびタブレットのプロトタイプを出展した。まずは米国で発売する予定だが、日本への投入も視野に入れている。京セラの5G戦略についてインタビューした。
京セラが1月7日〜10日に米ラスベガスで開催されたCES 2020に初めて出展した。同社のブースには「5G Solutions」のコーナーも設けられ、米国向けの提供を予定している5G高耐久スマートフォンおよびタブレットのプロトタイプも出展されていた。会期中にグループインタビューの形で、5G戦略の展望を聞くことができた。
インタビューに応じてくれたのは、取締役 執行役員常務 通信機器事業本部長の厳島圭司氏、通信事業本部の通信開発部長の塙英治氏、そして北米の通信部門の責任者である京セラインターナショナル副社長(Vice President)の飯野晃氏の3人。まず、塙氏から、京セラの5G戦略の概要を聞いた。
3つのキーワードで5Gビジネスを展開
塙氏 われわれは5G時代の到来に向けて、3つのキーワードを掲げて、準備を進めています。まず「Foundation」。屋内外で快適な通信できる環境を構築し、提供していきます。次に「Connecting」。これは、今回の展示のメインでもありますが、5Gによって、あらゆるものをつなげていき、産業を支えていきます。そのための革新的なデバイスも提供していきます。そして、「Integration」。京セラはさまざまな分野で事業を展開していますが、それらを5Gで統合し、トータルソリューションとして提供していきたいと考えています。
塙氏 今回出展した「5G Smart Router」は、コンシューマー向けではなく、産業用として開発しています。HDMIやUSBなど有線の接続ポートも設けて、さまざまな機器と接続できるようにします。必要な情報だけを選別してクラウドに送信するといった、エッジコンピューティング機能も搭載します。
塙氏 「5G Smartphones & Tablets」は、弊社が現在提供している高耐久性端末を、より広い分野に提供していきたいと考えています。具体的には、クリーンな環境が求められる医療現場、食品工場、ホテルなどへの提供を考えています。
米国ではB2CよりB2Bのビジネスがメイン
―― まず、北米向けの通信端末事業の現状について教えてください
飯野氏 ビジネスのメインはキャリア相手です。具体的には、VerizonとAT&Tに対して端末を供給しています。以前は、わりと廉価なプリペイド端末を大量に売る戦略でしたが、数年かけて、Rugged(頑丈)端末に力を入れて、業務用の顧客を増やしました。現在はB2CよりもB2Bの方が多いです。業種としては、運輸、建設、地方自治体など。警察や消防でも使っていただいています。ただ、端末を提供するだけではなく、ニーズに合わせたアクセサリーやソリューションを提供することにも力を入れています。例えば、PTT(プッシュ・トゥ・トーク)を搭載していることも強みとなっています。
―― 5Gでは「Rugged」だけでなく「Clean」をコンセプトに掲げましたが、その意図は?
厳島氏 北米向けのタフネス端末は、現状は黒1色です。それは、現在の顧客ニーズに合わせてのことですが、タフネス端末を必要とする業種はもっとあるだろうと。需要の裾野を広げていくために、新しいコンセプトを提案した次第です。そのために、白を用いたコンセプトモデルを展示しましたが、このままのデザインになるわけではありません。需要を見ながら決めていきたいと思います。
5Gをやらないという選択肢はなかった
塙氏 われわれは、日本国内では洗える端末も出しています。その技術も生かせると考えています。
―― 現在、日本では「TORQUE」、米国では「DURA FORCE PRO」というブランド名でタフネス端末をリリースしていますが、5Gへの移行を機に、新しいブランドを作る予定はありますか?
厳島氏 まだ検討段階で、どちらとも言えません。
―― 米国では、既に5Gサービスが始まっています。この時期での5G参入の表明は、タイミングとして遅いように思いますが?
厳島氏 われわれの顧客が5G端末を買うのだろうか? 目的や用途が明確になっていないものにコストをかけないのでは? メーカーとしてのコストバランスを考えて、慎重になっていたのは事実です。しかし、北米のキャリアは、積極的に5Gを売っていくという姿勢になっています。マーケティング面での投資も5Gにはするが、今さら4Gにはできないという状況。そこで、少しタイミングは遅くなりましたが、方針を変更した次第です。
―― 5Gをやらない可能性もあったのでしょうか?
厳島氏 それはないですね。5Gをやらないという選択肢はなかったです。もしそうだとしたら、この業界から手を引くことになってしまいます。基礎的な研究は、かなり前から進めていて、去年(2019年)の夏頃から具体的な準備に着手したというのは事実です。Qualcommがどのようなチップを提供するかを見守っていたということもあります。Qualcommが最初に出したのはハイスペック向けのチップですが、それはわれわれが作る端末向けではなかったので。
―― 5Gスマホをいつ頃にリリースする計画ですか?
飯野氏 北米では今年(2020年)発売します。
厳島氏 5Gのネットワークは、まだ十分ではありませんし、需要も高くはありません。ですから、「今買うのなら、先のことも考えて5Gの方がいいですよ」「5Gだったら、少し値段も下げられますよ」といった売り方になるのではないでしょうか。使い方は後から生まれるでしょうし、ネットワークも急速に広がっていくでしょう。
―― 日本で先に発売する可能性はありますか?
厳島氏 それはないです。北米が先です。もちろん、日本向けにも、追っかけで発売したいと考えています。
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