dポイントかPontaか 決済事業でドコモとauの戦いが激化――2社の決算を読み解く:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)
NTTドコモとKDDIの第3四半期決算が出そろった。2社とも、料金値下げや純増数の低下に伴い、通信料収入は減少傾向にある。好調なのは非通信事業で、ポイントも含む金融・決済事業で、2社の戦いが激化しつつあることがうかがえる。
NTTドコモとKDDIの第3四半期決算が出そろった。2社とも、料金値下げや純増数の低下に伴い、通信料収入は減少傾向にある。ドコモは第3四半期までの累計で、通信事業の売上高が2兆8059億円で1994億円の減収に見舞われた。営業利益も6514億円で、減益の幅は1158億円と大きい。KDDIは通信事業単体の業績を開示していないが、パーソナルセグメントの伸びをけん引しているのは非通信事業の「ライフデザイン事業」だ。両社とも、特に好調なのは、ポイントも含む金融・決済事業で、2社の戦いが激化しつつあることがうかがえる。
スマートライフ領域が伸びるドコモ、決済分野も順調に成長
新料金プランを導入した結果、通信事業で減収減益に見舞われたドコモだが、非通信事業である「スマートライフ領域」は好調だ。同事業に限定した売上高は7328億円、営業利益は1364億円で、増収増益を記録している。
ひとくくりに非通信事業といっても、その中身はさまざまだが、ドコモの吉澤和弘社長によると、映像や電子書籍などのコンテンツが15%、金融・決済事業が15%、ケータイ補償などの保障サービスが50%、その他が20%という割合になるという。特筆したいのが、dカードやd払いといった金融・決済事業の成長。吉澤氏も「d払いはキャンペーンがあるので(利益に)貢献しないかもしれないが、金融・決済分野が伸びている」と語る。
同サービスの取扱高は、前年同期比34%増になる3兆8200億円を記録。dカードの契約者数も13%増え、1247万件になった。dカードGOLDの比率はさらに高まり、31%増の640万件になっている。2018年4月にサービスを開始したd払いは、2019年から急速に成長しており、取扱高は2600億円に達した。ユーザー数も前年同期比で2.1倍になる2198万となり、第4四半期に入った1月1日には2200万を突破したという。同分野にもともと注力した上に、政府の実施した「キャッシュレス・ポイント還元の効果もあって、取扱高は順調に増えている」(吉澤氏)という。
dカードや非接触決済のiDを持つドコモが、あえてコード決済のd払いに注力している狙いは、キャッシュレスの利用シーンを拡大するところにある。「お客さまの中にはクレジットカードを持たない方もいるが、そのような方でも手軽に使える。店舗側にとっても、安い決済コストで対応できる」(同)のが、そのメリットだ。「日常的に使い勝手のいいウォレットアプリにしていく方針」(同)で、dポイントを含めた送金機能や、事前オーダーなどが可能になるミニアプリも追加されている。
決済と表裏一体の関係にあるdポイントも、順調に拡大している。ユーザーに利用されたdポイントのポイント数は、第3四半期までの累積で1459億ポイントに達し、前年同期比で23%増加した。ドコモ以外の加盟店での利用も864億ポイントになり、共通ポイントとして成長していることがうかがえる。提携先は1.6倍の686に増えた。共通ポイントでは、楽天が楽天スーパーポイントを年間3200億ポイント発行し、消化率も90%と高いが、dポイントが徐々にこの規模に迫っていることが分かる。
ライフデザイン領域が好調なKDDI、au PAYやポイント事業も拡大
対するKDDIもライフデザイン事業が好調で、第3四半期の決算説明会では、2桁成長を実現したことを明かした。高橋誠社長によると、「ライフデザイン領域が総合ARPA(1ユーザーからの平均収入)の成長をけん引している」という。ライフデザイン領域は、売上高が第3四半期までの累計で8920億円、営業利益が1360億円で、増収増益を果たした。金融・決済取扱高も4兆5710億円となり、2018年度の合計を第3四半期で超えた格好だ。
傘下にauフィナンシャルホールディングスを擁するKDDIは、金融・決済取扱高でドコモを上回っているが、コード決済を開始したのは2019年4月で、やや後れを取った。ポイントについても、現時点では自社に閉じたau WALLETポイントを採用している。
これに対し、2019年12月に、Pontaを展開するロイヤリティ マーケティング(以下、LM)との資本提携を発表。5月をめどに、au WALLETポイントをPontaに統合し、会員基盤の拡大を目指す。高橋氏は「2000億円超のポイント付与額を生かして、使いやすく、たまりやすいポイントにすることで、au PAYの拡大を目指す」とその狙いを明かしながら、次のように語る。
「『なんとかPay』というものは、ポイントを発行する仕組みが連携していないと生き残れない。そのため、どこの会社を見ていても、加盟店獲得費用がとても高い。LINEを見ても、メルカリを見ても大変だなと思う。生き残っていこうとすると、モバイルの口座にお金が入ってくる仕組みが重要になる。通信会社はポイントの仕組みがあるので、それを連携していくことが強みになる」
au PAYの拡大は、手数料収入を増やすだけでなく、ユーザーとの関係性を強化するメリットもあるという。高橋氏は、au PAYの利用回数が多ければ多いほど、NPS(Net Promoter Score=サービスなどの推奨度)や付加価値ARPAが上がる相関関係を示したデータを披露。「au PAYを多く使うお客さまは、当社のサービスに愛着を持っていただける」(同)のが、その理由だという。Pontaとの統合で、この基盤がさらに強固になるというわけだ。
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