ソフトバンクの5G戦略を読み解く エリアが“超限定的”なのはなぜ?:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ソフトバンクは3月27日に「SoftBank 5G」のサービスをスタートさせる。しかし開始当初のエリアや夏以降に拡大するエリアは、お世辞にも広いとはいえない。むしろ東京23区ですら、超限定的な“5Gスポット”でしかない印象を受ける。
エリアの拡大は「DSS」の対応待ちか、夏時点でもエリアは「限定的」
実際、ソフトバンクが公開した5Gのエリアマップを見ると、3月27日時点で利用できる場所は、驚くほど少ない。例えば東京23区では、東京駅から新橋駅、浜松町駅周辺までや秋葉原駅周辺は4月末までにエリアになる予定だが、それ以外は全て「夏以降」になっている。夏以降のエリアもまだまだ“まばら”な状況で、新宿駅周辺や渋谷駅周辺などの副都心や、お台場など、ごく一部だけで利用できる状況は変わっていない。
東京23区以外の首都圏までスコープを広げただけで、エリアの密度はさらに低くなる。神奈川県、千葉県、埼玉県でも、スポット的に5Gエリア化する場所はあるものの、非常に限定的だ。ソフトバンクのネットワーク本部 本部長の野田真氏も「全国面積のような見方をした場合、五輪時点ではまだ限定的になる」と言い、エリアの拡大には時間がかかることを明かす。
周波数が低く、エリア構築に向くといわれるSub-6だが、それはあくまでミリ波と比較してのこと。4Gのときに局地的な容量対策で使われていた2.5GHz帯や3.5GHz帯よりも、ソフトバンクの導入する5Gの3.7GHz帯は高い周波数になる。周波数は高ければ高いほど直進性が強くなるため、1つの基地局でカバーできる範囲は狭くなってしまう。3.7GHz帯は衛星との干渉もあり、基地局展開が難しいという事情もある。サービス開始当初のエリアが超限定的になるのは、規定路線だったといえそうだ。
一方で、ソフトバンクは2021年に人口カバー率90%を目指す。現状とは大きなギャップがあるように見えるが、鍵になるのが4Gで使われている既存の周波数帯だ。榛葉氏は4月8日の正式サービス開始を発表した楽天モバイルを意識しつつ、「4000とか8000とか数万というレベルではなく、この段階で既に23万の基地局がある。これがプライオリティを付けられた形で、効率的に5Gの基地局に転換されていく」と語った。人口カバー率90%には、4Gから転換した基地局も含まれているというわけだ。
菅野氏は、「既存の周波数が使えるかどうかが見えてくれば、立ち上げが早くなる」と語っていたが、ソフトバンクはここを5Gの“本命”と考えていることがうかがえる。基地局の中にはソフトウェアの切り替えで5Gの電波を吹けるものも多いため、総務省からの認可が下りれば、垂直的にエリアを拡大できる可能性がある。
同じ周波数に同居する4Gと5Gの割り当てを動的に変える技術の「DSS(Dynamic Spectrum Sharing)」も、4Gの頃からの基地局ベンダーであるEricssonが導入済み。5Gで採用を拡大するNokiaも、2020年にDSSを採用する方針で、エリア拡大のピースはそろいつつある。ソフトバンクが5Gのエリア拡大に本腰を入れるのは、このタイミングからになりそうだ。
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