「5G」商用サービスがいよいよ開始 ドコモ、au、ソフトバンクの戦略はどう違う?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
3月25日にドコモが、翌26日にはauが、さらに27日にはソフトバンクが商用サービスを開始し、大手3キャリアの5Gがついに出そろった。ネットワークの構築の仕方や端末ラインアップ、料金設計には方向性の違いもある。それぞれの戦略を見ていこう。
ハイエンド特化のドコモ、auは中国3メーカーでミドルレンジを強化
サービス開始に合わせ、夏ごろまでに発売されるスマートフォンやWi-Fiルーターのラインアップも発表された。ここでも3社の方針は分かれている。全機種ハイエンドモデルで固めたのが、ドコモだ。その理由を同社のプロダクト部 プロダクト企画担当部長の渡邉正明氏は「5Gの一番の魅力である高速、大容量を最も感じていただける端末がハイエンドになる。まずはそこを導入した」と語る。8K動画撮影に対応した「Galaxy S20 5G」シリーズや「AQUOS R5G」、2画面スマートフォンの「LG V60 ThinQ 5G」がその代表例といえそうだが、5Gならではの大容量コンテンツを楽しみやすい端末を用意したというわけだ。
ただし、ハイエンドモデルは先進的ゆえに製造コストも高く、端末価格はどうしても高止まりしてしまう。ドコモは「スマホおかえしプログラム」をドコモ以外のユーザーに開放するなどして、割引を若干手厚くしたが、それでも実質価格はほとんどの端末が5万円を超える。端末の割引を大幅に制限した改正電気通信事業法が施行されて以降、ハイエンドモデルの販売には急ブレーキがかかっているため、この価格帯の端末だけでは、5Gの普及が進みづらくなる恐れがある。
こうした状況を踏まえ、コストパフォーマンスを売りにする中国メーカー製端末を果敢に導入したのが、KDDIだ。KDDIは、ハイエンドモデル、ミドルレンジモデル、エントリーモデルの各セグメントに、それぞれ中国メーカーの端末を用意。価格は発表されていないが、日本や韓国のメーカー製品より一段安くなるという。ハイエンドモデルでは、au初となるOPPOの「OPPO Find X2 Pro」を導入。エントリーモデルとして、日本のキャリア市場に初参入するXiaomiの「Mi 10 Lite 5G」を取り扱うことも表明した。ミドルレンジモデルとして両機種の中間に位置付けられるのが、ZTEの「ZTE a1」になる。
中国メーカーの3モデルを拡充した理由を、高橋氏は「今回は、中国メーカーの3メーカーに入っていただいた。中国は5Gの展開速度が速く、お客さまも非常に多い。そのボリュームが出て、スマートフォンの単価も抑えられてくる」と語る。中国では、既に5Gの商用化が開始されており、端末の需要も大きい上にメーカーの数も多い。このエコシステムを取り入れ、いち早くコストパフォーマンスに優れたスマートフォンを取り入れ、普及を加速させたいというのがKDDIのスタンスだ。
同様に、ソフトバンクもOPPOの「OPPO Reno3 5G」をエントリーモデルとして販売するという。榛葉氏によると、Reno3 5Gは「驚くような低価格で5Gを楽しめる端末」というだけに、価格がいくらになるのかが楽しみだ。ソフトバンクは、5Gのサービスインに合わせ、ZTEの「ZTE Axon 10 Pro 5G」も発売した。こちらauのZTE a1とは異なり、Snapdragon 865を搭載したハイエンドモデルという位置付けだが、おサイフケータイなどの日本仕様が省かれている分、本体価格は9万円弱に抑えられている。
KDDIがOPPOのFind X2 Proを導入したことで、“ソフトバンク独占”とうたって目玉に据えたReno3 5Gのインパクトがやや薄まってしまった感はあるが、ソフトバンクも、5Gの力を引き出せるハイエンドモデルと同時に、価格を重視したミドルレンジモデルに注力していることがうかがえる。ハイエンドモデルに絞ったドコモも、ミドルレンジモデルの重要性は認識している。渡邉氏は「ミドルレンジモデルはなるべく早いタイミング、できれば今年(2020年)中に投入できるよう、準備を進めている」と明かす。ネットワークの状況に合わせ、徐々に端末のレンジを広げていくというのがドコモの考えのようだ。
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