シャープ秋冬スマホが“4機種”の理由 「5Gのノーマル化」を目指し、4Gの選択肢も:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
シャープは9月11日に、AQUOSシリーズのミドルレンジモデルを一挙に4機種発表した。「AQUOS sense」シリーズ3機種に加え、有機ELを採用した「AQUOS zero」シリーズにも、初のミドルレンジモデルが加わる。価格を抑えたモデルを複数投入することで、5Gの普及を促進させるのが同社の狙いだ。
5Gモデルと共通化した4Gモデルも用意、多彩なニーズに応える
ただし、ミドルレンジモデルを全機種5G化したわけではない。AQUOS senseシリーズのように幅広く販売される端末には、価格が上がるなら4Gのままでいいというニーズもある。大手MVNOや大手キャリアのサブブランドは5Gのサービスを提供していないため、こうした事業者で販売する上で、5G対応分のコストアップは意味がないものになってしまう。MVNOやサブブランドのユーザーは、使えない5Gに対応するより、価格が据え置きになっていた方がうれしいはずだ。
こうしたニーズを踏まえ、シャープはAQUOS sense5Gと同時に、4Gモデルの「AQUOS sense4」も発売する。写真を見れば分かる通り、AQUOS sense5GとAQUOS sense4は、ボディーがほぼ同じ。5Gへの対応で電波特性が変わるため、AQUOS sense5Gにはボディーの端をぐるりと囲む形でアンテナ用の樹脂が引かれているが、同系色にまとめられていることもあって、じっくり比べなければ違いは分からないだろう。サイズも全く同じで、シャープによるとケースなどのアクセサリーも両機種で使い回せるという。
パフォーマンスも先代のAQUOS sense3より上がっており、プロセッサにはSnapdragon 720Gを採用。輝度効率が5%上がった新IGZOや4570mAhのバッテリー、カメラなど、その他の仕様はAQUOS sense5Gと共通している。AQUOS senseシリーズは、生産台数が大きいがゆえに、コスト効率も高めやすい。両機種を共通化することで、AQUOS sense5GとAQUOS sense4のどちらでも、そのコストパフォーマンスを生かすことができる。ニーズが細分化していることもあり、AQUOS sense3のように、1機種で300万台を販売するのは難しいかもしれないが、2機種でそれを満たしていけるというわけだ。
さらに、4G対応モデルの上位機種として、「AQUOS sense4 plus」を用意した。プロセッサはAQUOS sense4と共通だが、ディスプレイサイズが6.7型と大きく、メモリ(RAM)も8GBに強化されている。カメラもクアッドカメラで、メインのセンサーは4800万画素と高い。デザインテイストは他のAQUOS senseと異なり、海外メーカー製のそれに近い。従来のAQUOS senseシリーズでリーチできなかった、スペックを重視するユーザーに向けた端末で、グローバル展開も見据えている可能性がある。
小林氏が語っていたように、ハイエンドモデルの売れ行きには急ブレーキがかかった一方で、ネットワークの主役は5Gへ移り変わろうとしている。秋以降、周波数転用でエリアが広がる可能性が見えてきた中、4Gモデルを残しつつ、5G対応のミドルレンジモデルを拡大して展開するのは、理にかなった戦術だ。低コストの端末を開発できる体制ができているのはもちろん、市場動向を的確に読み取る力が、今のシャープの好調ぶりを支えているといえそうだ。
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