auは「iPhone 12」でどう攻めるのか? 既存周波数を5Gに使う意義は? 高橋誠社長インタビュー(2/3 ページ)
KDDIは、iPhone 12シリーズに導入されるAPIを使い、5Gエリアでかつデータ容量無制限のプランに入っている場合のみ、動画などが高画質化・低遅延化される仕組みを導入する。同時にKDDIは、4Gからの周波数転用を活用して、5Gのエリア拡大のペースを上げていく方針だ。iPhone 12や5Gに対する意気込みを、高橋誠社長に聞いた。
2万円までのインセンティブは間違いでは
―― 先日の法人向けイベントで、2030年までに5Gと6Gに2兆円の投資をするとお話ししていました。一方で、値下げの圧力もあるなかで、それは可能なのでしょうか。
高橋氏 KDDIは持続的成長をする企業といわれていますから、利益は右肩上がりにしていかなければなりません。他の付加価値サービスを加えれば、年間6000億円ぐらいの投資をしても、償却は果たせます。うち2000億円ぐらいをインフラに投資するというのは、おかしな話ではありません。
値下げについては、3年ぐらい前から話があり、KDDIはすでに4000億円ぐらいの規模の値下げをしています。それがなかったことになるのは、ちょっとおかしな話だと思います。ですから、競争政策を総ざらいして、(総務省側で)一度話を整理するのではないでしょうか。
―― 昨年(2019年)の電気通信事業法改正に関連した一連の政策の中で、ここは変えてほしいというのはありますか。
高橋氏 インセンティブです。2万円までというのは、新しいシステムを入れるときには間違いなのではないでしょうか。Apple対策として始まっているものかもしれませんが、(インセンティブをつけて売るのは)普通のビジネスモデルです。投資には、設備投資もあれば、端末に対する投資もありますからね。世の中に端末を浸透させて、5Gのエリアをいっぱいに広げる。そうすると、次に何が起こるかと言えば、めちゃくちゃ安いIoTが実現できます。
今のIoTのインフラはめちゃくちゃ安いですからね。でも、それでいいと思っています。そのめちゃくちゃ安いインフラの上で、付加価値のある産業を興すのが、次にやらなければいけないことです。例えば、コロナ禍で提供した人口動態データも、ネットワークがあるからできたことです。レイテンシがよくなり、速度が上がれば、工場のワイヤレス化や農業などにも使えます。付加価値を作れば、それが国力にもなります。
―― まずはネットワークを広げて、ユーザーに使ってもらうことが大事ということですね。
高橋氏 絶対にそうです。それは4Gでも立証されていることです。ローカル5Gの場合、ゼロからインフラを作らなければいけない。それだったら、キャリアが作ったインフラをタダみたいに使えばいいと思います。
既存周波数に5Gを入れるメリットは「低遅延」
―― 発表会では、データMAXを選ぶユーザーが増えているというお話もありましたが、auはそちらが中心になっていくのでしょうか。
高橋氏 5Gは、基本的に使い放題を一生懸命にやっていきたいですね。ピタットプランを選ぶ方もいるので、それはそれでいいのですが、実際に結構な割合の方がデータMAXを選んでいます。バンドルプランは今、Netflixがメインで、もっと必要という方はALLSTARパックを選んでいますが、あのプランはまだまだ広げていくつもりです。
発表会では、サービスがネットワークを選ぶと言いましたが、それは本当にそう思っていることです。既存の周波数帯に5Gを入れて何がいいかというと、低遅延です。ただし無線区間だけでなく、サーバの遅延も低くしなければいけない。その中で、サービスをどうするという話や、MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)をどうするかという話がありますが、そういうものも小まめにやっていきたいと考えています。
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