新型コロナウイルスの影響で遅れた「新型iPhone」の発売 携帯ショップへの影響は?:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(2/2 ページ)
2020年の新型iPhoneは、新型コロナウイルスの影響もあり発表と発売が約1カ月ずれ込みました。そのことによって、携帯電話の販売店にはどのような影響があったのでしょうか……?販売スタッフから話を聞きました。
iPhone 12/12 Proの売れ行きは?
上期でノルマ未達でも、下期で一気にiPhone 12シリーズが売れれば何とかなる――理屈の上ではそうなります。冒頭でも述べた通り、少なくともWebでの予約は好調なようにも見えるので、何とかなるんじゃないかとも思えなくもありません。
ただ、実際の店頭の状況はそうではないかもしれません。予約や販売の状況についてもショップ店員から話を聞いてみました。
iPhone 12とiPhone 12 Proは売れてます。
コロナ禍の影響もあって去年(2019年)と比べるとお店に来る人は控えめで、オンライン購入に流れるのかな、と思いきや、来店して購入するお客さまは意外と多いですね。緊急事態宣言のあおりもあって、5Gも鳴かず飛ばずで、この半年間は「暇」だったことと比べれば、大繁盛しているように思えるくらいには数が出ています。
「オレの店では売れているっ……!」と言いたい所ですが、そう言いきれない微妙な状況にあります。というのも、予約販売分は順調なのですが、予約なしで販売できる、いわゆる「フリー在庫」が全くない状況なのです。
ここ数年は予約販売分と共にフリー在庫も入っていたため、結構な規模感で販売できていたのですが、今年はフリー在庫のない分、期待する販売台数を少し下回っています。
フリー在庫がないということは人気がある“証”で、売れていることには間違いないんですけどね。
筆者は先日、東京都内の旗艦店の携帯電話コーナーへ行きました。友人のiPhoneの買い替えの付き添いです。
友人はMNPでの購入で、iPhone 12が発売されてから初めての週末ということで「結構待つだろう」と身構えていたのですが、そこまで待たされることなく手続きカウンターへと案内され、正味1時間ほどで手続きが完了してしまいました。
実はこの店舗には、いつもインタビューに答えてくれるスタッフの1人が勤務しています。たまたま見かけたので話を聞いてみました。
iPhone 12やiPhone 12 Maxは、2020年に入ってから一番よく売れているスマホですよ。でも、例年と比べると数は出ていなくて、(店頭の)盛り上がりにも欠けている気はします。
他店舗のスタッフの話も総合すると、iPhone 12とiPhone 12 Maxは、3月以降に発売されたどの5G対応のAndroidスマートフォンよりも確実に売れてはいるようです。日本におけるiPhone人気の高さが伺えます。
それでも、店舗の盛り上がりが足りないのは、コロナ禍という状況からオンライン購入に初挑戦したユーザーが多かったり、購入の意思はあれど発売直後の混雑を避けるために購入を先送りにしているユーザーがいるからかもしれません。
先にノルマが未達だった店舗のスタッフはこう言います。
私の店舗では、Phone 12とiPhone 12 Proは予約も芳しくありません……。フリー在庫の割り当てはまだ先のようです。従って、今の期間のノルマも「新型が出たから余裕でクリア」とは行きそうにありません。いつも通りに9月発売であれば、苦しい状況ではありましたが直近のノルマは何とか達成できていたと思うのですが……。
現在は新型の在庫が十分になく、かといって旧モデルの在庫も乏しくなっています。iPhone 12シリーズのフリー在庫が当たり前に入ってこないと、今期のノルマも落としてしまいそうです……。
元々iPhoneが売れ筋でない郊外店とはいえ、iPhoneは“置いてある”ことに意味があります。他のAndroidスマホを買うにしても、iPhoneと比べた上で選んで行くお客さまは多いからです。ノルマを連続して落としてiPhoneを扱えなくなったとなれば、比べるスマホが無くなることになるので、お客さまが他の店舗に逸走してしまうことになります。
ただでさえ、携帯電話の販売台数は年々減ってきています。気付いている人もいるかもしれませんが、郊外の家電量販店の携帯電話売場は縮小傾向にあります。今後の国の政策、あるいはそれを受けたキャリアの動きによっては、そう遠くないうちに郊外のお店から携帯電話コーナーが消えてなくなる可能性もあるのではないでしょうか。
新型iPhoneの発売延期は、冷え切った国内の携帯電話市場の一部をさらに凍らせるきっかけになってしまったのかもしれない。
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