ドコモの激安「ahamo」で携帯業界に激震も、“料金プラン”扱いには疑問:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ドコモは若者をメインターゲットに据えた「ahamo(アハモ)」を発表。料金は、20GBのデータ容量に5分間の通話定額が付いて月額2980円(税別)と、他社より低い水準の料金を打ち出した。同じ2980円の楽天モバイルよりも優位性は高い。一方、既存ドコモユーザーの移行は限定的とみられる。
ドコモ内での移行は限定的か? “料金プラン扱い”が残した課題
このユーザー層を踏まえると、ahamoに移行する既存のドコモユーザーは、限定的になることが分かる。現状でギガホを契約しているユーザーにとって、20GBだと物足りない。逆にギガライトのユーザーは、「みんなドコモ割」を使えば1980円で済むユーザーが多く、ahamoに移行すると容量は増えるが、料金は上がってしまう。こうしたユーザーは店頭でのサポートを必要とするケースが多く、受け皿がオンラインだけのahamoとは相性も悪い。その意味で、ahamoは他社からユーザーを奪う武器になりそうだ。
一方で、ギガホで容量が大幅に余っていたり、ギガライトで上限に近い容量を使っていたりすると、サポートさえオンラインでよければ、ahamoに移行するのが最適解になる。こうしたユーザーが増えると、ドコモの収益に与えるインパクトは増加する。そのため、ギガホとギガライトも、ahamoの水準に合わせた見直しが必要になる。井伊氏によると、「プレミアと位置付ける既存の料金プランも、5Gの利用促進に向け、シンプルかつお得な新しい料金に変えていく」といい、矢継ぎ早に値下げに打って出るようだ。
ただ、ahamoを料金プラン扱いにしたことは、禍根を残すかもしれない。政府がメインブランドでの値下げを強烈に要望していたことを受けてか、ドコモは、サブブランドではなく、あくまで料金プランという体裁にこだわった。プレスリリースからは“ブランド”の4文字を排除する徹底ぶり。発表会では、うっかりブランドと呼んでしまったシーンもあったが、井伊氏は「決してサブブランドありきだったわけではない」と強調する。
結果として、オンライン限定というコンセプトは置き去りになり、2980円という金額や、20GBというデータ容量だけが独り歩きしてしまう恐れがある。ドコモのブランドを冠している以上、ドコモショップにサポートを求めるユーザーは必ず出てくる。井伊氏も、「そのようなことは起きうると考えている」と語る。こうしたケースが増えると、ドコモショップにとって重荷になりかねない。井伊氏は「ダメですという対応はない」と語っていたが、そうであれば、店頭サポートの有料化など、何らかの仕組み作りは必要になりそうだ。
販売する端末が異なることにも疑問が残った。ahamoがサブブランドであれば別だが、同じドコモ内で、選ぶ料金プランによって購入できる端末が分かれてしまうのは、直感的に理解しづらい。もし、iPhoneのような人気モデルがahamoで購入できないとなると、早々に“プラン変更”してしまったユーザーは「だまされた」と感じてしまうはずだ。料金プランによって購入できる端末に差が出てしまうのは、分離プランの原則にも逆行する恐れがある。メインブランドでの値下げを求めた政府の無理難題に対する苦肉の策にも見えたが、そのために理解がしづらくなっているのも事実。ユーザーに対しては、今まで以上に丁寧な説明が求められそうだ。
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