ahamo対抗プランをいち早く打ち出した日本通信 なぜここまでの値下げが可能なのか?:MVNOに聞く(2/4 ページ)
NTTドコモがahamoを発表した翌日に、対抗策の「合理的20GBプラン」を打ち出した日本通信。現時点でのデータ容量は16GBだが、ahamoの導入に合わせて20GBに増量する予定だ。大手3キャリアが大幅な値下げに踏み切る中、日本通信がいち早く対抗策を打ち出せたのはなぜか。
音声を原価ベースで調達できるから安くできる
―― そのahamo対抗の合理的20GBプランですが、20GBで1980円は非常に安いと思います。まず、なぜこの金額がつけられるのかを教えてください。
福田氏 音声を原価ベースで調達できるから。シンプルにそれだけです。データ通信の仕入れの条件は、基本的に変わっていません。一番大きいのは音声で、そこが変われば、あの金額でやっても十分な収益を得られます。それがあるからこそ、音声部分の卸料金が高すぎるということは、ずっと言い続けてきました。
内容的な詳細はありますが、大臣裁定をよく読んでいただき、公表されたいるもの見れば、単純に卸価格は8割下がります。その違いです。
―― 確かに音声通話が下がれば、データ通信は帯域を借りているだけなので、極端な話、同じ金額で100GBプランにしてユーザーを詰め込むこともできます。
福田氏 それはそうですが、100GBにしたらみんな使ってしまうので(笑)。20GBができたのは、イネイブラー(MVNE)として25GBのデータプランを結構な数、出してきたからです。その経験値がないと難しいかもしれませんが、うちにはその経験値がある。そうなると、あとはトータルコストに占める音声通話が最大のボトルネックになります。何かというと、基本料が高すぎる。その部分があるので、積み重ねていくと結構な金額になってしまいます。
―― 基本料は音声通話を使うだけでかかるので、データ通信部分が安くなればなるほど、比率は上がりますね。
福田氏 卸約款が公開されていますが、ドコモは(割引適用後で)666円です。他も、大体そんな感じの金額です。大臣裁定で言っているのは、データ通信と同額ということで、そちらに関しては80円前後で提供されています。
何をもって基本料なのかということは、直接交渉してきました。回線見合いコストとして、通信を使っていてもいなくてもかかるコストがあります。HLRやHSS(加入者管理機能)で管理するといったコストは、確かに使っていてもいなくてもかかります。後は、音声が従量課金、データは帯域幅での課金になっていますが、それと比べると、回線見合いコストが700円弱と異様に高くなっていました。音声と言いつつも、実はそこが非常に大きなところです。
大臣裁定が履行されないことはあり得ない
―― ただ、ドコモはまだ原価ベースの料金を出していません。
福田氏 心配されている株主がいらっしゃるので新年にブログを書きましたが、僕は心配していません。大臣裁定が履行されないのは、あり得ないからです。時間の問題はあるかもしれませんが、原価ベースのコストが出ないことはない。ここは、妥協してやるつもりはありません。
―― そのまま引っ張り続けてしまうと、日本通信が困ってしまうことにはならないでしょうか。
福田氏 それをやったら、さすがに総務省が命令を出すと思います。電波の割り当てにも影響しますから。剛腕な総務大臣の命令を聞かないわけにはいかないと思いますね(笑)。
―― ここまで対抗値下げをすぐにできるのは、ドコモと以前から個別に交渉していたからということですね。
福田氏 少なくとも(MNOとの)交渉は必要になります。ドコモがどう考えているかですが。データ通信の場合は接続約款を出しましたが、なぜか同じ金額の卸金額約款も出し、多くのMVNOはそちらでやっているようです。
関連記事
- 日本通信とドコモの「音声通話卸役務」の料金協議が指定期日内に終了せず 日本通信はどうする?
6月30日付で日本通信とNTTドコモに行われた総務大臣裁定について、両社による「音声通話卸役務」の料金協議が裁定に定めた期日までに終わらなかった。年明けに、何らかの動きがあるかもしれない。 - 日本通信が申請した「総務大臣裁定」が確定 「音声定額を含む携帯料金4割削減プラン」の提供を表明
日本通信が2019年11月15日に申請した総務大臣裁定が、ついに確定。同社のNTTドコモに対する「通話料金」の値下げについては主張が認められた。これを受けて、同社は「音声定額を含む携帯料金4割削減プラン」を速やかに提供するとしている。 - 日本通信が「月間16GBで1980円(税別)」の新プランを発表 ドコモ「ahamo」の開始日に「月間20GB」に自動増量
日本通信が、NTTドコモが2021年3月に開始する新プラン「ahamo(アハモ)」に対抗する。月間16GBのデータ量と70分の通話料金込みで1980円(税別)の「SSDプラン」を新設し、ahamoのサービスインに合わせて月間データ量を20GBに自動増量するという。 - 日本通信、健康サービスがセットの「Wスマートプラン」 月額1580円で3GB+70分の無料通話
日本通信とFiNC、健康アプリサービスをセットにした月額1580円(税別)の「Wスマートプラン」提供開始。70分の音声通話、データ通信容量3GB、月額480円(税込)の「FiNC Plus」がセットになっている。 - 日本通信が「合理的かけほプラン」をHIS Mobileに提供 その狙いは? 福田社長に聞く
日本通信とHISの合弁会社、HIS Mobileが「格安かけ放題プラン」を提供。これは日本通信が投入した音声定額の「合理的かけほプラン」がベースになっている。HISで同プランを提供する勝算はどこにあるのか。日本通信の福田社長に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.