ahamo対抗プランをいち早く打ち出した日本通信 なぜここまでの値下げが可能なのか?:MVNOに聞く(4/4 ページ)
NTTドコモがahamoを発表した翌日に、対抗策の「合理的20GBプラン」を打ち出した日本通信。現時点でのデータ容量は16GBだが、ahamoの導入に合わせて20GBに増量する予定だ。大手3キャリアが大幅な値下げに踏み切る中、日本通信がいち早く対抗策を打ち出せたのはなぜか。
接続という仕組みでキャリアの方が速くなるのはおかしな話
福田氏 ただ、そもそもで言えば、接続という仕組みでキャリアの方が速くなるのもおかしな話です。同じ原価なら、パフォーマンスが変わるわけがない。そうなっていないのは、算定式がおかしいことの証左で、何がおかしいのかも論理的には分かっています。
―― どの辺がおかしいのでしょうか。
福田氏 接続料は本来応分分負担なのに、応分以上を負担しています。縦軸に総原価を、横軸に総帯域を取ったとき、このグラフは直線ではなく、本来はカーブしているはずなのです。都市部では混雑していても、全国的に見れば、相当のキャパシティーが余っています。ですから、本来はカーブがグッと立ち上がり、その後緩やかになるはずですが、今の接続料は原点から直線を引いているだけです。
ドコモにレイヤー2接続を申し入れたときに、こういう開発が必要ですということで、その分はMVNOが負担しています。その時点で見た状態から、接続する事業者が入ることで増える分を負担してくださいというのが接続料ですが、それ以上のコストを払うのが今の算定式です。一言で言えば、今のデータ通信の接続料は原価になっていないということです。
もともと、2008年にドコモと私で毎日のように協議していた算定式がありましたが、数年後に、ドコモが今の形の算定式に変えてしまった。どこかでこれは反映させないといけないと思っていましたが、機が熟す必要がありました。僕は、機が熟したと思っていますが、これをやれば圧倒的に接続料は下がります。
―― もう少し、そのロジックを詳しく教えてください。
福田氏 例えば5Gに置き換わると、総原価は大きく変わらず、キャパはグッと増えます。総原価の増加が限りなく平らになるから、使い放題ができるということです。デジタルの世界は、ある一定のキャパができれば、追加コストは少ない。だから、スケールメリットを追い求めて、早くやったところが勝ちます。Amazonのクラウドもそうで、将来緩やかになるコストの増加を見越して、最初は赤字でやっています。携帯電話に関しては、基地局こそアナログですが、産業としてはそれに近いと思います。
ただし、スマホ向けに関して言うと、先ほどお話ししたように、ボトルネックは音声通話の基本料です。ベースの基本料だけで最低700円弱かかってしまう。ここが終わったら、本丸であるデータ通信の接続料の算定をきちんとやることになるでしょう。
20GB以下のプランなら十分安くできる
―― 確かに、ベースで700円弱かかってしまうと、総額の低い低容量プランは出しづらいですね。
福田氏 うちは音声従量課金で3GBなら、980円で十分出せます。あとは、そういったプランを出すべきなのかという話です。まだデータ通信の接続料がイコールフッティングになっていないという感覚があるので、(MNOのオンライン専用料金プランが)20GBプランでよかったと思っています。30GBだと厳しかった。逆に、20GBの下のラインであれば、十分投入することはできます。300円を割った形で、データ通信も音声通話も使った分だけといったプランも、2台目用や子ども用に悪くないでしょう。今までの条件では無理でしたが、そういうこともできるようになります。
ただし、私どもの出荷などのキャパが今は限界です。合理的20GBプランの受注数が結構なレベルで推移しているからで、80%超がMNPです。MNPだと、ユーザーの電話番号を全部焼いてから出荷するので、半ばカスタムオーダーのようなものになってしまいます。とても無理なので、すぐには対応できないと思います。
―― 合理的20GBプランをタイムリーに投入できたのは、日本通信はMNOの値下げを見越して動いていたからということにもなりますね。
福田氏 僕から見ると、(他のMVNOの)皆さん、音声の原価の問題を軽視しすぎています。スマホに入れるSIMは、やはり電話ができるものを選びます。それが一般的なのに、音声が入っただけで料金が一気に上がってしまう。政府が携帯電話料金を下げると言っていたので、いつかこうなることは予見できました。
取材を終えて:ドコモがどのような答えを出すのかに注目
音声通話定額の提供を目指してドコモと値下げ交渉をしていたかのように見えた日本通信だが、真の狙いは基本料にあったようだ。確かに、700円弱の基本料が一律でかかってしまうと、MVNOが取れる選択肢は少なくなる。インタビュー中にもあったように、定額の低容量プランは作りづらいはずだ。同社だけがいち早くahamo対抗の料金プランを打ち出せた理由も、ここにあったという。
音声卸の値下げや、値下げ後の料金の即時適用は、MVNO委員会の要望書でも言及されていた。ドコモも、日本通信に対して最終的な金額を提示していないが、ahamoのスタートが3月に迫っている以上、近いうちに決着をつける必要があるはずだ。これが、他のMVNOにどこまで波及していくのかが、注目のポイントといえそうだ。
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