菅政権の圧力で激変したモバイル業界 各社が発表した料金施策を振り返る(3/4 ページ)
2020年末から2021年初頭にかけ、携帯各社の料金を巡る動きが短期間のうちに慌ただしく変化している。大手3キャリアはオンライン専用の安価な20GBプランを発表。楽天モバイルは1GB以下なら0円とし、小容量の市場を破壊。MVNOも対抗策を発表したが、通信品質の面で課題がある。
「1GB以下なら0円」の楽天モバイルが小容量市場を破壊
そしてもう1つ、菅政権の圧力による値下げは、市場のゆがみをもたらし新たな問題を引き起こしていると感じる。というのも従来総務省は、さまざまな規制によって公正な競争環境を整備し、MVNOや楽天モバイルといった下位の事業者が、大手3社に対抗できる競争力を身に付けることで料金引き下げを実現しようとしてきた。
だが菅政権下では競争環境整備より先に、武田大臣の発言を通じて3社に圧力をかけ、直接料金引き下げを迫ってきている。確かに料金は安くなったが、結果として競争上優位な立場にある大手が、より立場が弱い事業者から顧客を奪うことにつながってしまっているのだ。
例えばahamoの「月額2980円」という料金は、楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT」と同額だ。通信量では楽天モバイルに譲るとはいえ、消費者が最も重視するネットワークの面ではドコモに圧倒的な優位性があり、ahamoなどの登場によって楽天モバイルが危機に陥るとの見方が増えたのも事実だ。
そうしたことから楽天モバイルは2021年1月29日に、新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」を発表。月額2980円で使い放題という点は変わらないが、新たに段階制の料金プランを採用し、データ通信量1GB以下の月は月額0円という、常識を覆した料金を打ち出したのである。
楽天モバイルがこのようなプランを打ち出した理由はいくつかある。市場競争を考慮した場合、ネットワークの面では当面大手に敵わないことから、小容量の領域に進出することで、この分野に強みを持つMVNOから顧客を奪う狙いが大きいと考えられる。MVNOは大手の回線を使っているのでエリア面では楽天モバイルより有利だが、混雑時の通信速度が極端に低下しやすいなど品質面では不利な部分があるため、大手より戦いやすいのは確かだろう。
同様に、MVNOから顧客を奪おうという意図が見えるのがサブブランドの新料金プランだ。実際KDDIが2021年2月1日に開始したUQ mobileブランドの新料金プランのうち、最も容量が少ない「くりこしプランS」は、3GBのデータ通信量が割引なしで月額1480円で利用できるという、MVNOの主力プランである3GBプランに並ぶ料金を実現している。
さらにソフトバンクのY!mobileブランドは、新料金プランの内容を2021年2月1日に急きょ改定。ベースの料金は変わらないものの、「シンプルM」「シンプルL」の通信量を増量しただけでなく、家族や固定回線にかかわる割引を適用した割引額を500円から1080円に増量。その結果、通信量3GBの「シンプルS」は、割引適用で900円という低価格を実現しているのだ。
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