大手キャリアの「オンライン専用プラン」を店頭で案内 その背景は?:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(2/2 ページ)
大手キャリアの「オンライン専用プラン」が話題となっています。本来は“オンライン専用”であるはずのプランが、店頭でもポスターなどで案内されるケースもあります。その背景には何があるのでしょうか。
「儲からないプラン」に対するジレンマ
一方で、オンライン専用プランに対してネガティブな反応を持つスタッフもいます。例えば、こんな意見がありました。
どれだけ料金を見積もっても、「オンライン専用プランの方がいい」というお客さまに対しては、店頭でそれ以上の提案ができません。オンライン専用プランの申し込みを手伝ったとしても、それはお店の実績にはなりませんし、売り上げも立ちません。
毎月のパッと見の料金では、オンライン専用プランは従来のプランより魅力的です。「この料金がベストだ!」と思う人も多くなるでしょうね。
今後はオンライン専用プランについて「うまく申し込みできない」「スマホの設定ができない」という問い合わせも増えるはずです。“本来は”僕らがそのサポートをすることはできません。しかし、客商売の観点からすると「僕らでは対応できません」と追い返すのも違うわけです。
今後、実績や売り上げにつながらないサポートをせざるを得ないシーンが出てくると思います。正直、不安というより不満の方が大きいです。
建前上、オンライン専用プランは提供するサービスを削ることで手頃な価格を実現しています。そのサービスの1つが、店頭での販売やサポートです。
料金相談をするために店頭に来たユーザーが、診断の結果、店頭で申し込めるプランが良いということになれば、その手続きによって店頭にはキャリアから手数料が支払われます。しかし、オンライン専用プランがベストということになれば店頭は「骨折り損」です。ユーザーが「そのまま申し込みさせて!」と言ってきた場合も、本来であれば「店頭ではお手伝いできません」と断らなければいけません。
しかし、客商売という都合上、申し込みに対応できないプランとはいえ、そのまま返してしまうのは良いこととはいえません。結果、収入につながらないのに申し込みの手伝いをしてしまうという事例が多いようです。
今回の記事を書くためのヒアリングでも、この点に関する不満を口にするスタッフは少なからずいました。キャリア、特に代理店営業を担当する部門は、この点について何らかの手当てをしないとマズいように思います。
相次ぐ「条件変更」も店頭にやってくる原因?
ITmedia Mobileでも報じている通り、大手キャリアのオンライン専用プランは、発表後も料金改定を含むサービス条件の変更を何度か変更しています。「どう考えてもこれ、あのサービスへの対抗だよね」というものも散見されます。
例えば、ドコモがahamoをファミリー割引の回線数に含めると、au(KDDIと沖縄セルラー電話)は期間限定ながらもpovoを家族割プラスの回線数に含めました。どちらも当該プラン自体に割引や特典は適用されませんが、他のプランを契約している家族がいる場合でも移行しやすくなりました。
しかし、サービスの提供条件の“小出し”ぶりも含めて、条件の変更や追加が相次ぐことに困惑する声は、ユーザーだけではなく店舗スタッフからも聞かれました。
最初はシンプルに「税別2980円で20GB!」と案内するだけで良かったのですが、「引き継げるオプション」「引き継げないオプション」が小出しで出てくるようになると、案内する際に考慮すべき事項がどんどん増えていきました。中にはサービス開始直前まで不明瞭だったこともあります。店舗スタッフですら各種条件を把握するのが大変だったのですから、お客さまはなおさらです。
お客さまの中には、複数回線を利用することによる割引や、固定回線をセットすることによる割引を受けている人もいらっしゃいます。各種割引まで把握して「自分はこのプラン!」と選べるお客さまは、さすがに多くはないと思います。
「シンプルに2480円!」は、売る側としても正直驚きました……が、時がたつにつれて、今までのプランのように(条件面で)複雑になってきました。
料金プランの診断は、今後も店頭で展開されることを考えると、正直「オンライン専用プラン」ではなくて「サポート有料プラン」という立て付けにするべきだったと思います。それなら、対応する店頭でも(サポートすることによって)収入を得られます。店頭も何らかのインセンティブ(還元)を得られる仕組みにしてほしいです……。
登場時は「横並び」とも称されたオンライン専用プラン。相次ぐ改訂によって差別化が進んだ反面、従来プランと同様に申し込みの際に気を付けなければいけないポイントも増えました。パッと見で分かる価格以外の、ユーザーには見えづらいデメリットもあります。
そういう意味では、料金プランの相談に乗ってくれる店舗の役割は小さくありません。ただ、繰り返しですがオンライン専用プランを店頭で勧めても、店舗側には直接のメリットはありません。積極的に提案やサポートができないとなると、現場の士気は下がるでしょう。士気の減衰は、ユーザーから見たキャリアへのイメージにも影響を与えるはずです。
あるスタッフが言う通り、オンライン専用プランは「オンラインで済ませられるから安い」ではなく、「サポートは有料で提供するプラン」という組み立てにした方が良かったのかもしれません。
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