なぜ10GBまで1GB刻みに? 「イオンモバイル」新料金プランの狙いを聞く:MVNOに聞く(3/4 ページ)
4月1日に料金プランを改定したイオンモバイルは、値下げするのと同時に、10GBまでのデータ容量を1GB刻みにした「さいてきプラン」を導入。値下げの反響は大きかったというイオンモバイルだが、1GB刻みのデータ容量を、本当にユーザーが選べるのか。そこには、データの繰り越しと、プラン変更のしやすさが関係していた。
ahamoで乗り換えが止まるも、4月1日以降に山が戻ってきた
―― 一方で、ARPUは下がったのではないでしょうか。
井原氏 単価が下がったので、落ちましたね。全員一律で下がったので。一方で、容量は増えています。
―― 値下げ発表が比較的早かったですが、どういった経緯でこの金額が決まっていったのでしょうか。
井原氏 もともと接続料は下がると言われていました。将来原価方式で33万2000円(ドコモの21年度、10Mbpsあたり)という金額は出ていましたが、それ以上に下がるという話は出てきていました。音声の基本料も、総務省や構成員からは、確実に下がるという話が出ていました。イオンモバイルは、MVNEから回線を仕入れていますが、その辺も含めてご相談させていただき、何とか3月頭に発表することができました。
―― 50万のユーザーというお話がありましたが、料金プラン改定後、獲得は増えていますでしょうか。
井原氏 純増数は上がっています。特にECが伸びています。19年ぐらいにMVNOは少しシュリンクしていましたが、それ以前に戻ってきた手応えがあります。(料金プランの改定で)市場自体が活性化しているのもありますが、その中でも伸びています。
河野氏 4月1日以降は、乗り換えも多いですね。ahamoの発表以降、乗り換えが止まっていたため、3月はいつものような山はありませんでしたが、4月1日以降、一気に山が戻ってきました。乗り換えということで、長く使っていただけるお客さまの契約が増えているのだと思います。
―― それは、MVNOの料金改定を待っていたということでしょうか。
河野氏 そうだと思います。
井原氏 結果として全員が値下げになるので、いつ契約しても変わらないんですけどね(笑)。ただ、MNOが転出料を無料にした影響もあると思います。
申し込み手順を短縮したことでオンラインでの申し込みも増加
―― ECの伸びが大きいとのことですが、現状、どの程度の比率なのでしょうか。
井原氏 以前は8%程度でしたが、最近は30%程度がオンラインです。昨年(2020年)4月以降、コロナもあり、比率は一気に上がっていきました。申し込み手順が24工程もあり、煩雑過ぎたので、それを8工程に縮めたのが大きいと思います。
間野氏 エントリーパッケージを店舗で購入して、Webで申し込めるサービスを昨年9月にほぼ全店のイオンで開始しました。そこでも、ECの申し込みが増えています。
井原氏 PayPayモールにも11月に出店させていただきました。SIMでは一番売れています。
河野氏 一方で、店舗への来店は60代、70代の方が多いですね。ガラケーを使っていて、スマホに変えたいが不安という声を多く聞きます。1年半ぐらい前から、Googleアカウントの設定やLINEの引き継ぎを有償でやらせていただいていますが、こちらも非常に好評で、イオンに行ったらやってくれたという口コミが広がっています。今後、3Gのサービスがどんどん終了する中で、サポート体制が整っているのはイオンモバイルとして差別化ができるところです。
―― MVNO全体を見ても価格競争が激しく、イオンモバイルより安い会社もありますが、この動きをどう見ていますか。
河野氏 今までは業界最安級をうたってきました。今回も頑張って交渉はしてきましたが、既存ユーザーへの値下げを最優先にすると、なかなか難しい。ARPUが下がってしまうことを踏まえると、現状の価格が現時点での最大限の結果だと考えています。もちろん、今後も接続料は下がっていきますので、これで終わりではありませんし、1GB刻みというところを評価していただければ戦っていけると思います。
井原氏 それに加えて、今お話ししたように、われわれには211の店舗があります。店舗がある通信事業者という限定の仕方をすれば、業界最安です。故障修理対応はお店でやっていますし、コールセンターもフリーダイヤル、チャットもやっています。そこまで含めて見ていただければ、安いのではないでしょうか。
関連記事
- イオンモバイル、4月1日から「さいてきプラン」提供 10GBまで1GB単位で選べる
イオンモバイルは、4月1日に「さいてきプラン」を新設。10GBまでのデータ容量を1GB単位で選択できるようになり、既存の料金プランも大幅に値下げする。 - 3月も続くMVNOの“新料金ラッシュ” 多様なニーズをカバーするも、業界全体の課題は残る
MVNOの“新料金ラッシュ”は3月になっても続いている。今回はnuroモバイル、イオンモバイル、エキサイトモバイルの新料金プランを解説する。三者三様のプランだが、MVNO業界全体を取り巻く課題は残っている。 - 2700円に値下げをした「ahamo」の戦略 “サービスの簡略化”による混乱も?
ドコモは3月1日に、ahamoの料金を2700円(税別)に値下げすることを発表した。値下げ幅は280円と少額だが、総額表示が義務化される4月以降、3000円を下回る2970円でアピールできるのは大きな差になりそうだ。一方で、ahamoのサービス内容は既存の料金プランから大幅に簡略化されているため、混乱も予想される。 - 3キャリアの値下げでMVNOに大打撃の恐れ “いびつな競争環境”は解消できるか?
大手3キャリアの料金値下げは、MVNOの経営に大きな打撃を与える可能性がある。20GB前後の中容量ではahamoやpovo、SoftBank on LINEより料金水準が高くなっている上に、MVNOが得意とする小容量プランも、UQ mobileやY!mobileの値下げにより、価格優位性がなくなりつつある。これに対し、MVNO側は速やかな解決策を求めている。 - イオンモバイル、25歳以下が対象の「3年学割」開始 3年間1GBを増量
イオンモバイルは、25歳以下のユーザーが通常の料金プランより1GB増量で3年間利用できる「3年学割」を提供開始。申込受付は1月15日〜5月31日。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.