弱点解消でY!mobileに対抗、MVNO並みの安さに UQ mobile「でんきセット割」の狙い:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
KDDIが、UQ mobile向けに「でんきセット割」を導入した。セット割適用後の料金は、3Gプランが990円(税込み)となり、MNOが回線を貸すMVNOと同水準の料金になる。料金プラン改定後の動向や、新サービス導入の狙いを聞いた。
「家族」や「固定」よりシンプルで適用範囲の広い「電気」
一方で、Y!mobileは新料金プランにも家族割引を継承した。ベースの料金プランは「シンプルS」が2178円と、UQ mobileより割高だが、家族で2回線以上契約した場合、2回線目以降の料金は990円になり、UQ mobileを下回る。割引額が1188円と大きいためだ。家族割引は、料金プランのシンプルさが損なわれるデメリットはあるが、お得感が高く、解約率を抑える引き留め効果もある。シンプルなUQ mobileのくりこしプランだが、セット割がないのは弱点の1つだった。
この課題に対し、新たに導入されたのが「でんきセット割」だ。「auでんき」か「UQでんき」をセットで契約すると、その世帯の家族全員が割引を受けられるサービスになる。割引額は、くりこしプランS/Mが638円、くりこしプランLが858円になり、適用後の料金はそれぞれ990円、2090円、2970円まで下がる。あくまでセット割適用後ではあるが、料金水準はMVNOのそれに近い。例えば、IIJmioの「ギガプラン」は4GBが1078円、OCN モバイル ONEは3GBが990円。自身で回線を持つMNOとしては、破格の安さといえそうだ。
では、なぜ割引条件が携帯電話サービスの割引として一般的な「家族」や「固定回線」ではなく「電気」だったのか。村元氏は、「UQのサービス性を考えると、シンプルに伝わる方がいい」と判断したという。「新たにお金を払ってもらうものと組み合わせるのではなく、既に支払っている電気を切り替えるだけで1回線目から割引が入る」(同)というのが、その理由だ。
確かに家族割引の場合、2回線以上という制約があり、単身で1回線のみ契約しているユーザーには適用されない。固定回線とのセット割も同様で、回線を引いていない場合、ユーザーにとっては追加の負担になる。家庭の環境によっては、モバイル回線だけで済ませていたり、割引対象となる光回線を引けなかったりする可能性もある。これに対し、auでんきやUQでんきは、地域電力会社から切り替えるだけで、料金も変わらない。Pontaポイントでの還元を加味すれば、むしろ電気代の実質価格は安くなる。オール電化の家など、一部非対応な場合もあるが、潜在的な割引対象の母数は大きい。
電気の契約は世帯にひも付くため、家族割引の代替になる上に、1人でも割引が適用される。「2人以上じゃないと割り引きませんというのは、(1人から安いという)UQ mobileの価値観と少しずれてしまう。そこは一貫しておきたかった」(村元氏)という。UQ mobileとして提供するUQでんきだけでなく、auブランドのauでんきも対象にしたのは、「いろいろな使い方にある程度対応したいという思いがあった」からだ。auでんきを対象にしたことで、「au世帯の中で切り替えるときの選択肢に(UQ mobileが)なる」という狙いもある。
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