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石田社長に聞くトーンモバイルの現状 新スマホ「TONE e21」の狙いから、値下げ競争の影響までMVNOに聞く(1/3 ページ)

トーンモバイルが4月の新スマホ「TONE e21」を発売した。スペックを向上させつつ、新機能の「Oneメッセンジャー」や「One Drop」に対応している。この新モデルを投入した狙いや、ここ数カ月の料金値下げ競争が同社に与えた影響を中心に、フリービットの石田宏樹社長に聞いた。

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 フリービット傘下のドリーム・トレイン・インターネットが提供するトーンモバイルは、4月に最新モデルの「TONE e21」を発売した。新モデルの投入は約1年ぶり。同社は、ODM(Original Design Manufacturing)のベースモデルにカスタマイズを加えた端末と、自社設計の端末をタイミングに応じて使い分けているが、TONE e21は後者のモデルで、フルスクラッチで開発をしたという。スペックを向上させつつ、新機能の「Oneメッセンジャー」や「One Drop」に対応しているのが、同モデルの特徴だ。

トーンモバイル
4月に発売したトーンモバイルの新機種「TONE e21」

 この端末の投入に先立ち、トーンモバイルはこれまでオプションとして月額1045円(税込み、以下同)で提供していた「090/080/070」の音声通話を無料化。もともと、同社は月額1100円で動画などを除いたデータ通信が使い放題になるプランを提供していたが、ここに含まれるのはIP電話だけだった。音声通話オプションが無料化したことで、サービスがさらに拡大しただけでなく、MNPでのユーザーの受け入れも容易になる。

 トーンモバイルが、新モデルを投入した狙いはどこにあるのか。また、ここ数カ月の料金値下げ競争が同社に与えた影響はあるのか。フリービットの代表取締役社長CEO兼CTOを務める石田宏樹氏に、お話を伺った。

TONE e21は久々にフルスクラッチで開発した端末

―― まずは、新モデルのお話から伺えればと思います。TONE e21を投入した狙いからお話しいただけますか。

石田氏 (CCC傘下から)フリービットグループに戻り、トーンモバイルはフリービットの5Gに向けた取り組みのショーケースとしての役割を担うことになりました。以前と比べると、技術リソースも数倍かけられるようになっています。5GがNSA(ノンスタンドアロン)からSA(スタンドアロン)になり、本格的に普及するまであと3年ぐらい。SAになった世界をどう作っていくのかを、フリービットの視点からの5Gライフスタイルとして考えています。

トーンモバイル
フリービットの石田宏樹社長

 スマートフォンは、携帯電話からの延長ではなく、違うところから来ています。アーキテクチャ的に目指すのはインビジブル(不可視)コンピュータで、エッジコンピューティングの1つの用途に(スマホが)なっています。フリービットでは、MVNOのコアデータセンターというゲートウェイに、コンピュータの処理群を、今どんどん使っているところです。そことスマホを組み合わせてどうするのかを、検証するのが1つの目的です。

 TONE e21は、全世代のユーザーに普段使いしていただけることをコンセプトにしています。TONE m15以降、久々にフルスクラッチで作った端末で、社内に優秀なハードウェアエンジニアをそろえられるようになってきたからこそ、できたことです。ODMのグリップ力も、以前とはまったく違う次元になってきました。われわれが考えている形や性能を、ギリギリまで追求できたと思います。

 TONE m17のときは、富士通(コネクテッドテクノロジーズ、現FCNT)の端末を使い、マーケティング的にも子どもに寄せました。それまでは、子どもとシニアが半々ぐらいの割合でしたが、マーケティングを寄せたことで、シニアの割合はかなり減ってしまった。シニアは得意分野ですが、テレビのようなメディアを使ってマーケティングすると、どうしてもどこかに絞らなければなりません。そこから3年ぐらいかけ、新しいマーケティング手法も使いつつ、全世代に普段使いしてもらえるところをソフトとハードの両面から目指しました。

―― ODMではなく、自社開発にしたのはなぜでしょうか。

石田氏 GPUの使い方やドライバーの改善もそうですし、端末自体のスペックをもうちょっと上げたかったからです。いつも、ミドルローからミドルぐらいのスペックでしたが、それをもう少しだけ上にしたかった。メモリやストレージの量まで含めて、違うところに持っていきたかったというのがあります。この機能を入れつつ、部品の点数まで見直すことで、あの価格が実現できました。

 うちはソフトウェアエンジニアが多いので、ソフトで何とかするという誇りはありました。これまではレファレンスモデルをベースに作ることが多かったのですが、大手と比べると、どうしても端末調達数が限られます。もう一歩先に、3世代全てを狙う端末を作ろうとしたときに、どうしても必要なプロセスでした。

 結果、TONE e21は「プレ5G」の処理を全て行い、センサー類が活発に動いています。検索エンジンなどのフィルターによって、アイソレーション(分断)が進む世界を何とかしたいという思いがあり、それを解決する第1段階は可視化だと思っています。ダッシュボードはそのための機能で、位置の移動や見ているサイトのカテゴリーを可視化するものです。GPSの情報やCOCOAのスキャンもしていて、次のバージョンではCOCOAで密になった場所が地図上にプロットされるようになります。

トーンモバイル
TONE e21はゼロから自社開発した

トーンモバイルが掲げる「プレ5G」とは?

―― 端末は5G非対応だと思いますが、プレ5Gという言葉にはどういう意味合いがあるのでしょうか。

石田氏 5Gのメリットだけを先に感じてもらえないかと考えたもので、仮想化技術を交換機側で使い、低遅延のためのスライスを利用するといったことをやっています。もちろん、完全な低レイテンシはまだまだできませんが、今どこまでできるのかというのをきれいにプロットしたのがプレ5Gです。

―― ハードウェアについては、TONE m17が搭載していたFeliCaがありません。あまりニーズがなかったのでしょうか。

石田氏 TONE m17は価格的に一番高かった一方で、FeliCaの使用率を見ると10%にも満たない状況でした。今はバーコード(QRコード)決済もあるので、それを出しやすくするぐらいの方がいいのかもしれません。

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