石田社長に聞くトーンモバイルの現状 新スマホ「TONE e21」の狙いから、値下げ競争の影響まで:MVNOに聞く(2/3 ページ)
トーンモバイルが4月の新スマホ「TONE e21」を発売した。スペックを向上させつつ、新機能の「Oneメッセンジャー」や「One Drop」に対応している。この新モデルを投入した狙いや、ここ数カ月の料金値下げ競争が同社に与えた影響を中心に、フリービットの石田宏樹社長に聞いた。
LINEを制御すると連絡を取れないという問題
―― 次にソフトウェアに関してのお話を伺いたいのですが、新たにメッセンジャーサービスのOneメッセンジャーを始めた理由を教えてください。
石田氏 見守りソフトをこれからどうしていくのかという流れの中で、親御さんからの要望として、スーパーアプリになったLINEを制御すると、コミュニケーションまで取れなくなってしまうので何とかできないかという話をいただいていました。若年層が増え、LINEを使わせたくないご両親が増えていたのです。でも連絡は取りたい。そこで、メッセンジャーを開発することにしました。
メッセンジャーは、以前楽天に提供するために作ったことがあり、ノウハウはありました。ただ、単純にメッセンジャーを作っても、それが本当に使われるのか。Oneメッセンジャーは、メッセージと子どもの情報の両方をタイムラインに乗せる発明です。自分と子どもの会話の中に、タイムラインが入り、そこからさらに会話できるインタフェースなら使ってもらえるのではないかと考えました。
今後、見守りソフトは全て外して、メッセンジャーに統合していく動きで考えています。これまでは、「TONE見守り」の通知という形にしていましたが、通知は数が多いと見逃してしまいます。これをメッセージの形に変えたのが、すごく大きかった。サマリーも届きますが、タイムラインをさかのぼるだけで、1週間どうしていたかは大体分かります。
TONE e21で機種変更が2020年から3倍に増加
―― 発売後の反響はいかがでしたか。
石田氏 アンケートの結果がすごくいいですね。ただし、発売は(商戦期の)3月から、1カ月遅れています。コロナの影響で部材調達が難しくなり、その影響がありました。そのぶん、新機種は5月の売れ行きがよくなっています。旧機種が3月に売れていたので、両方足せば、3月、4月は昨年(2020年)よりいい状況です。機種変更の依頼は、昨年の3倍ぐらいになっています。
―― 3倍はすごいですね。何かあったのでしょうか。
石田氏 子どもに販売した場合、退会が一番多いのが3年後というデータがあります。例えば、中学に入って買い、高校ではどうしてもiPhoneの魅力にあらがえず、退会してしまう。そのターゲットに関しては、One Dropなどの機能を用意したことで、食い止めができ始めたのだと思います。ターゲットに当たってきたのではないでしょうか。
初めてのスマホの時期は、塾に行き始めるタイミングか、中学に入るタイミング、高校に入るタイミングのどこかでしたが、コロナで若年化する傾向もあります。その市場が取れる形で動いてきています。ただ、完全な分析はもう少し待たなければいけません。3年前はTONE m17が出たとこで、先ほどお話ししたように、マーケティングを完全に子どもに絞り切っていました。そのボリュームが大きく、機種変更が増えたということかもしれません。
―― どういうところがよかったのでしょうか。
石田氏 その層は、完全にスペックですね。速くなったという声は多くいただいています。また、携帯電話の番号がつくのと同時に、SMSも使えるようになったのも大きいですね。One Dropもあります。メモリが大きくなり、バッテリーも急速充電に対応しました。写真がキレイになったという声も挙がっています。
音声サービスが無料になった背景は?
―― 090/080/070のいわゆる音声通話サービスが無料になったのは、卸価格の改定を受けたものという理解でよろしいでしょうか。
石田氏 はい。卸価格が600円から700円ぐらい違ってきますからね。(トーンモバイルの前身の)フリービットモバイルだったころはもっと高く、050のIP電話を使って補完をしていました。電話そのものもそうですが、SMSを付けられるかどうかも大きな違いです。LINEの登録もそうですが、SMS認証が使われることが増えているので、ここは課題になっていました。シンプルにできないかということもあり、卸価格が下がったことで、一気に無料でつけることにしました。
携帯電話の音声通話は、子ども層だとSMSの需要が多い一方で、ミドルからシニアになると、通話のニーズがすごく多かったですね。ミドル層に関しては、(IP電話と)2つ電話番号があるといいという声をいただいています。
―― プレフィックスを交換機側で付与する音声接続も始まっています。フリービットではMVNEに提供していますが、トーンモバイルではいかがでしょうか。
石田氏 プレフィックス自体は、トーンモバイルで既に利用しています。(端末が自社開発で)電話アプリ自体をコントロールできるため、3、4年ぐらい前から自動付与していました。今は、交換機側でできる仕様になっているので、そちらに合わせていく形になると思います。
接続料の値下げで通信が快適に
―― 卸価格の改定と同時に、データ通信の接続料も値下がりしています。この影響はどこに出ているのでしょうか。
石田氏 トーンモバイルは、使い放題で動画だけがチケット制になっています。その容量を増やすという形になると思いますが、これまで330円で1GBを売っていたところが5GBになると、動画をいっぱい見られてしまって困るという(親の)意見があります。チケットを適用しながら容量制限ができるようにしなければいけないのかもしれませんが、今、声を聞いているところです。
―― 逆に、1GBを220円などに下げるということはないのでしょうか。
石田氏 それもできます。ただ、GoogleやAppleのストアを使って課金しているので、その部分で価格がズレてしまう可能性があります。それを避けるため、値段を変えずに容量を増やすことになるかもしれません。
また、1100円の基本料で使える(無制限の)帯域には、値下げ分を全て反映させているので、そこは快適になります。チケットはチケットとして、別に構造を見ています。
―― 無制限部分が快適になるのは、ユーザーにとってうれしいかもしれませんね。
石田氏 動画だけを別に管理しておけば、大体使う帯域は均等になります。後はテザリングですね。コストが安いかどうかよりも、100円なら100円で、同じ価値をユーザーに提供することが重要です。いっぱい使う人の負担を他の人が負担するのはおかしいですからね。
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