新料金プラン「マイピタ」が好調のmineo 1.5Mbps使い放題のサービスに踏み切った狙いは?:MVNOに聞く(3/3 ページ)
MVNOの中でいち早く料金値下げに踏み切った「mineo」。6月からはデータ容量超過後の通信速度を1.5Mbpsに高め、以降を使い放題にする「パケット放題Plus」を導入した。新料金プラン「マイピタ」からパケット放題Plusの狙いまで、mineo事業を統括する福留康和氏に聞いた。
チャージ料金はなぜ100MB単位に?
―― 同タイミングでデータチャージの料金を100MBあたり55円にしています。他社だと500MBや1GBが多いと思いますが、なぜここまで小分けにしたのでしょうか。
福留氏 結論から申し上げると、刻み方や金額は、お客さまの声を踏まえて決めています。刻み方については、お客さまに確認したところ、「500MB単位がいい」「100MB単位がいい」という回答が、全体の6割を占めました。加えて、mineoは必要なものを必要な分だけ自由に選べるということを大切なブランド価値として追求しています。そのため、引き続き100MB単位で購入できるようにしました。
価格については、受容割合を調べたところ、150円でも4割の方が利用したいと回答しています。これが50円まで下げると、利用意向が84%まで増加します。そのため、料金については100MBあたり55円まで値下げしました。
―― なぜこのタイミングで値下げしたのでしょうか。
福留氏 記者発表会でもご質問がありましたが、一部のユーザーからは値下げの要望をいただいていました。もともとmineoには、独自のパケットコミュニケーションの文化があり、譲り合いだったり助け合いだったりの仕組みがあり、パケットギフトやフリータンクを実装しています。それもあって、他社と比べるとパケットチャージの利用割合は低くなっていました。マイピタ提供時には(サービス開発の)優先順位を下げ、そのままにしていました。ただ、マイピタはもともと6つあったデータ容量が4つになっているので、利用状況に合わせて安価に容量を選べるよう、値下げすることにしました。
―― 小刻みだと無駄なくチャージできる半面、手間がかかります。まとめ買いもできるのでしょうか。
福留氏 実際、お客さまからもそういった声をいただいているため、アプリから簡単にチャージできる仕組みを作っています。また、1回あたりの申し込みで10口(1GB)までいける仕組みも合わせて用意しています。
音声通話の定額サービスは2021年度中に提供する
―― 次に、まだ導入していないサービスのことを伺えればと思います。OCN モバイル ONEが、自動プレフィックス付与を使って「OCNでんわ」の提供を開始しましたが、mineoはいかがでしょうか。音声通話の完全定額についても、導入の可能性を教えてください。
福留氏 音声かけ放題を求める声は非常に強く、ない状態では両親に勧められないといった声をいただいています。自社調査でも、お客さまが魅力に感じているものを順に列挙していくと、かけ放題はかなり上に出てきます。提供元との交渉は進めているので、どれだけ遅くとも、今年度(2021年度)中にはサービスを提供したいと考えています。
―― ドコモがMVNOにdポイントの導入を促しているという話を聞きますが、mineoはいかがでしょうか。
福留氏 そういった話自体がわれわれに来ていません。一般論で申し上げると、われわれは独立系の事業者で、キャリアフリーを大切な価値に置いています。お客さまが自由に選べることを大切にしているので、そのこれまでの価値の中で対応できるのであれば、前向きに検討したいと考えています。
―― 5Gのサービス提供も早かったですが、現状の加入状況はいかがでしょうか。また、他社だと無料で提供しているMVNOもありますが、料金はそのままでしょうか。
福留氏 料金は引き続き、お客さまのニーズを踏まえながら検討していきますが、今すぐに無料にすることは考えていない状況です。
契約者数は、4月末時点で6000です。一方で、今後エリアが拡大し、対応端末が増えてくれば、お申し込み数は確実に増えていきます。社外の調査では22年度末で全契約の1割が5Gになるというデータがありますが、今のところ、おおむね計画通りに推移しています。
取材を終えて:MVNOらしいサービスで差別化を図れるか
新料金プラン導入後も純減になってしまっているのは少々意外だったが、新規契約自体は2020年より増えているようだ。料金プランの金額は一目で伝わりやすい半面、通信品質は実際に使ってみなければ分かりづらい。やみくもに低価格を狙うのではなく、品質とのバランスを取ったmineoだが、その事実をいかに分かりやすく伝えていけるのかが今後の課題といえそうだ。
一方で、パケット放題Plusのような新サービスや、100MBを55円でチャージできる仕組みは、大手キャリアにはないMVNOらしいサービスとして評価したい。データ容量ではなく、通信速度を絞って安価に、かつ定額で提供するというのは、MNOにはない発想だからだ。使い放題が当たり前になれば、データ容量ではなく、速度でMNOとMVNOが差別化を図るようになる可能性もある。パケット放題Plusは、その先行事例として注目しておきたいサービスといえそうだ。
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