ソフトバンクが料金値下げで260億円のマイナス影響――宮川社長「通信の開発面で日本が遅れてしまうのではないか」と懸念:石川温のスマホ業界新聞
大手キャリアが2021年度第2四半期決算を相次いで発表した。総務省が主導する形で携帯電話料金の値下げが行われてきた中で、今後不安要素として挙がってくるのは「通信品質」である。現に、ヨーロッパなど携帯電話料金が安い国や地域では通信が不安定だったり5Gエリアの整備が遅れたりといった現象が見受けられる。
政府による値下げ圧力が、携帯電話会社の収益に大きな影響を及ぼしている。ソフトバンクは11月4日に2022年3月期第2四半期の決算説明会を開催。値下げによって、260億円のマイナス影響があったと明らかにした。
宮川潤一社長が懸念したのがネットワークへの影響だ。このまま値下げによって減収が続けば、ネットワーク維持コストにメスを入れなくてはいけない事態になりかねないというのだ。
「(減収が続けば)基地局整備に影響するかもしれない。コスト削減を徹底的に行い、ネットワーク設計に不備がないようにしているが、これが5年、10年と続くと、中長期的には通信インフラ整備の在り方を見直す必要があるかもしれない。この1〜2年は、5Gの立ちあげ期なのでやっていく。設備投資の大きな変更はなく、逆にやり過ぎてCAPEXを超える勢いでやっていく」(宮川社長)。
個人的に気になっているのが、通信品質の低下だ。欧州の国は世界的に見ても、通信料金は安価だが、その分、ネットワークは不安定で、時々、止まることもある。先日、NTTドコモで通信障害が起こったが、通信料金が下がれば、ああいった状況が頻発する可能性もあり得るだろう。
そんな疑問を宮川社長にぶつけたところ「総務省が世界2位の安い料金になったと発表した。しかし、私は通信量や品質を考えると日本は世界一安いと思う。日本が世界で安価な料金プランを目指す方向だったら付いていくと思うが、業界を引っ張っている先進国はそういう方向には行っていない。通信の開発面で日本が遅れていってしまうのではないかと懸念している。今までの日本のキャリアはネットワークの個性を追求してきたので、それが失われるのは悲しい。頑張ってやっていくが、4Gまでのインフラと5Gのインフラは、基地局の数も使用される電力も全く別もの。5Gは相当なエネルギーを消費する。本当に維持できるかちょっと心配だが、工夫してやっていきたい」とした。
総務省がBeyond 5Gや6G時代に向けて、世界で日本がリードできるように旗を振っている。
しかし、総務省の値下げ政策によって、足下では携帯電話会社の収益が落ち込みつつある。収益が下がれば、ネットワークに対する設備投資や研究開発費が削られていくのは明らかだ。
宮川社長の指摘の通り、アメリカや韓国といった通信業界で強い国は、世界でも高めの料金プランを維持している。
日本の通信料金が下がるということは、結果として、日本企業の開発力を奪うことにつながる。
このままでは6G時代も日本は世界に大きく出遅れることだろう。この危機感をなぜ総務省は理解できないのだろうか。
関連記事
- 決算で判明、明暗分かれたpovoとLINEMO “オンライン”以外での差別化がカギに
鳴り物入りで登場した大手キャリアのオンライン専用料金ブランド/プランだが、開始から1年たたずに、サービスの姿を変えつつある。LINEMOは3GBプランを追加し、povoは月額0円からの「povo2.0」にリニューアル。特に支持されているのはpovo2.0のようだ。 - 「povo」は100万契約突破 ドコモの通信障害は「人ごとではない」――KDDI高橋社長一問一答(2021年10月編)
KDDIが10月29日、2021年度第2四半期決算を発表した。この記事では、報道関係者向けの決算説明会で行われた高橋誠社長との一問一答の中で、特に注目すべきやりとりをまとめる。 - 「0円プランには踏み込まない」「半導体不足の影響はiPad」 ソフトバンク決算会見で宮川社長が語ったこと
ソフトバンクが2022年3月期 第2四半期の決算説明会を行った。売上高は2兆7242億円で12%増収、半期ベースでは過去最高だった。LINEの子会社化や、携帯端末の販売がコロナ禍で大幅に減った2020年度よりも回復したことが要因だ。質疑応答では料金プランの在り方や半導体不足の影響、ドコモの通信障害などについて挙がった。 - ドコモ「ahamo」は200万契約突破、井伊社長「0円競争に参画するつもりはない」
ドコモの2021年度上期は増収減益となった。ahamoの契約者は堅調に増えており、200万を突破した。井伊基之社長は、povo2.0のような0円からのプランを提供するつもりはなく、低容量帯は「エコノミーMVNO」でカバーしていく考えを改めて示した。 - ドコモ「ahamo」は200万契約突破、井伊社長「0円競争に参画するつもりはない」
ドコモの2021年度上期は増収減益となった。ahamoの契約者は堅調に増えており、200万を突破した。井伊基之社長は、povo2.0のような0円からのプランを提供するつもりはなく、低容量帯は「エコノミーMVNO」でカバーしていく考えを改めて示した。
関連リンク
© DWANGO Co., Ltd.