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中国の5Gスマホで白熱する、QualcommとMediaTekのプロセッサ競争 どちらの採用機種が多い?山根康宏の中国携帯最新事情

中国では毎月10機種以上の5Gスマートフォンが登場しており、5Gの普及が加速している。低価格な5Gスマートフォンの多くに搭載されているプロセッサがMediaTekのDimensityシリーズだ。Qualcommもエントリーモデル向けの5Gプロセッサを提供しており、両社の競争が白熱している。

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 中国市場のスマートフォン新製品投入ラッシュが止まらない。2021年は毎月10機種以上の5Gスマートフォンが登場しており、4Gスマートフォンはエントリーモデルのごく一部、中小メーカーの格安機、そして米国政府の制裁により、5Gプロセッサを思うように入手できないHuaweiの製品程度にとどまっている。2021年7月に発表されたHuaweiのフラグシップモデル「P50シリーズ」はSnapdragon 888を搭載するが、データ通信は5Gに対応しない。

 中国は国を挙げて5Gの普及に取り組んでおり、5G加入者数は2021年9月末時点でChina Mobile(チャイナモバイル)が3億3122万、China Telecom(チャイナテレコム)が1.56億、China Unicom(チャイナユニコム)が1.37億、合計6億を超えている。また中国政府の工業情報化部によると、5Gスマートフォンの利用者数も4億4500万に達した。既に米国の人口を超えるユーザーが5Gを使っている状況なのだ。

 このように、中国の5G普及が加速しているのは豊富な人口に加え、低価格な5Gスマートフォンの存在によるところが大きい。日本でもXiaomiが2〜3万円クラスの5Gスマートフォンを投入しているが、中国では国内メーカーのほぼ全てが低価格5Gスマートフォンを投入している。1000元(約1万7000円)を切る5Gスマートフォンも複数メーカーから発売済みだ。

Redmi Note 10 5G
999元の5Gスマートフォン、Xiaomiの「Redmi Note 10 5G」

低価格5Gスマホの多くに搭載される「Dimensity」シリーズ

 この低価格な5Gスマートフォンの多くに搭載されているプロセッサがMediaTekのDimensityシリーズだ。Dimensityのラインアップは高性能な1000番台の下に、ミドルレンジ向けの900番台、そして800番台、700番台と続く。ライバルのQualcommはエントリー向けにはSnapdragon 480、その上にSnapdragon 690、さらに700シリーズを展開している。では中国では各メーカーがどんなプロセッサを採用しているのだろうか。中国国内で2021年1月から9月までに発売された5Gスマートフォンの採用状況を調べてみた。

 MediaTekはおおまかに1000番台(1000、1100、1200)をひとくくりとした。またQualcommはフラグシップのSnapdragon 888/888+と、他の800シリーズは区分した。なおKirin、Exynos、UNISOCの5Gモデルは割愛した。

5G
2021年1月から9月までの、各メーカーのプロセッサ採用状況

 表を見ると、9月までにDimensity搭載モデルが42機種、Snapdragon 5Gプロセッサ搭載モデルが62機種と、合計104機種のスマートフォンが発売された。中でもSnapdragon 888 /888+搭載モデルが30機種と全体の約3割だが、これは各社が「顔」となるモデルに採用するからだろう。またハイエンドフォンやゲーミングフォンに特化したLenovo、Meizu、Nubia、OnePlusは同プロセッサの採用に注力している。

 ところが、Snapdragon 888/888+の次に使われているプロセッサを見ると、Dimensity 700シリーズが17機種と多い。同プロセッサ搭載スマートフォンは1000元台前半のモデルが多く、低価格5Gスマートフォンになくてはならないプロセッサになっているのだ。その上位モデルのDimensity 800シリーズ搭載機を合わせると合計25機種となる。

低価格モデルではMediaTekの後塵を拝するQualcomm

 一方、QualcommはSnapdragon 480搭載モデルが7機種のみ、1000元台のスマートフォンにもSnapdragon 700番台の一部が含まれるため、やや強引だが「Snapdragon 480、690、700番台」を合計して低価格モデルとしてもその数は20であり、MediaTekの後塵を拝している。さらに加えると、MediaTekの高性能プロセッサ、Dimensity 1000シリーズも14機種で採用されており、Snapdragon 800番台(888/888+を除く)の12機種を超える。

vivo X70
「vivo X70」はフラグシップ3モデルの中の基本モデルでDimensity 1200を搭載

 このように、低価格、上位モデル、ハイスペックと中国の販売価格をベースにざっくりと3つのカテゴリーに分けてみたが、これはあくまでもおおまかに区分したものにすぎない。だが全体の傾向を見ることはできるだろう。

 各社の採用実例から分かることは、中国メーカーは国内向けスマートフォンにQualcommのプロセッサを主力として採用しており、フラグシップ機はSnapdragon 888/888+を必ず搭載している。しかしボリュームが稼げる低価格機や、フラグシップより下のミドルハイレンジやミドルレンジモデルになると、MediaTekの採用例が一気に増える。MediaTekは既にグローバル全体のプロセッサ出荷量でQualcommを抜いて1位となったが、中国メーカー各社の採用が加速していることがその主因であることは間違いない。

 さて、表からはちょっと興味深い点も見えてくる。Xiaomiといえば価格の安いコスパモデルを中心に展開しているというイメージが強いが、5Gモデルでは低価格機の種類は多くない。Xiaomiは激安モデルを4G機だけに絞り、5Gモデルは価格よりも機能や性能を高めたモデルを中心に展開し、付加価値を持たせたモデルを浸透させようとしている。一方、中国国内で毎月のようにシェアトップのvivoは、Dimensity 700やSnapdragon 480搭載のエントリーモデルの数が多く、数を稼ぐことでXiaomiを上回る販売数を誇っている。

QualcommとMediaTekの競争がメーカーの競争も加速させる

 Qualcommは10月に5G対応プロセッサ「Snapdragon 778G Plus」と「Snapdragon 695」「Snapdragon 480 Plus」を発表、ミドルレンジ以下を強化する。一方、MediaTekはDimensity 2000のウワサが出てきており、Qualcommのハイエンドプロセッサへ真っ向から対抗しようとしている。

 この両者の競争により、中国市場のスマートフォンは価格と性能に優れたコストパフォーマンスの高い製品が次々と誕生し、それがグローバルにも展開されていくことだろう。中国国内の競争がプロセッサメーカーの開発競争を加速し、それが中国メーカーの競争力をさらに高めていくという好循環はしばらく止まらないだろう。

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