ドコモが「電波オークション」賛成に転じた理由 楽天モバイルをけん制する意図も?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
総務省で、いわゆる電波オークションの導入を検討する有識者会議が開催されている。コスト増につながる懸念もあり、キャリア各社は導入に慎重な姿勢を示していたが、ドコモは「検討する価値がある」と方針を変えた。一方、楽天モバイルの三木谷CEOは「大反対」との考えを示した。
電波オークション導入賛成に転じたドコモ
ただ、先に述べた通り、電波オークションはキャリアにとってコストの増加につながる。経済原理だけに従っていると、利用価値の高い周波数帯では、落札額が高騰するおそれがあるからだ。こうしたコストは、ユーザー向けの料金に跳ね返ったり、エリア展開の遅れにつながったりする可能性がある。制度設計に失敗すると、最終的にそのツケを払うのはユーザーになるというわけだ。こうした事情もあり、キャリア各社は電波オークションに対して慎重な姿勢を示していた。
ところが、上記有識者会議に出席したドコモは「オークションを今後の基本的な割当方式として検討すべき」と主張。従来型の比較審査方式を「市場環境の多様化により、電波の有効利用からの乖離(かいり)」があるとしながら、「将来の変化への柔軟性」にも懸念があると批判した。また、周波数利用状況の評価については、計画ではなく実績をベースにすることや、周波数の有効利用に直結する客観的なデータに基づくべきであると主張している。ドコモが電波オークションの導入を積極的に求める姿勢を打ち出したのは、これが初めてだ。
オークションでコストが高騰する懸念については、「さまざまな制度設計により対応できる」とする。一例として挙げられていたのは「周波数キャップ」で、これは米国や英国、フランスなどで導入済み。1社ごとに獲得する周波数に上限を設けることで、保有する帯域幅に大きな偏りがなくなるとともに、獲得を目指す周波数が分散してオークション費用の高額化を防げるという。市場原理に従うと、希少なものほど高騰する可能性が高まるため、想定される需要に対して十分な帯域幅を用意する防止策もあるとしている。
電波オークションで獲得した周波数にカバレッジの義務を設けることで、割り当てられた周波数が無駄になってしまう問題も防げる。実際、既存の方式では、割り当て後にエリアや対応端末が広がらず、半ば放置されているような周波数もあった。4Gのころの700MHz帯はその一例といえる。ドコモの前社長、吉澤和弘氏は筆者の取材に対し、4Gで十分なエリアを広げないまま5Gへの転用を進めようとしていた他社に苦言を呈していた。カバレッジを義務化すれば、こうした事態は防ぐことができる。
ドコモが電波オークションを適当だと考えるのは、今後割り当てられる周波数の中心が、ピンポイントでエリアをカバーするための高い周波数帯になるからだ。全国をくまなくカバーする周波数とは違い、高周波数帯はビジネスのニーズに即した展開が基本になる。周波数帯ごとの費用対効果が算出しやすくなるというわけだ。同時に、ドコモの主張からは、直近の比較審査の結果に対する不満も見て取れる。
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