20GB+専用帯域で勝負 NUROモバイルはなぜ“格安”じゃないプランを導入するのか:MVNOに聞く(3/3 ページ)
NUROモバイルが矢継ぎ早に新料金、新サービスを打ち出している。20GBのデータ通信と特定サービスのデータフリーを打ち出す「NEOプラン」を11月に開始。低容量を軸にしたバリュープラスも、8GBプランを10GBに増量するなど、攻めの姿勢を打ち出している。
バリュープラスの8GBプランを10GBに拡充
―― 今、お話にあったバリュープラスの8GBプランですが、一気に2GB増やすのはかなりの増量だと思います。
神山氏 なかなか難しい判断ではありました。各プランや実際のお客さまの使い方をいろいろな形で分析した上で、導入しても問題ないということで決めています。
―― ちなみに、コロナ禍の動向の影響ということは、また波が来たら容量が減るということはないですよね(笑)。念のための確認ですが。
神山氏 はい(笑)。そのまま提供させていただきます。バリュープラスは3GBで792円ということで、安さのインパクトがありました。一方で、8GBの方はそこまでむちゃくちゃ安いわけではないということもあり、どう容量を増やすかは考えていました。当初はGigaプラスもあるので8GBでも十分かなと思っていましたが、基本容量を増やした方がお客さまのニーズに合うということで、今回は10GBにして、かつGigaプラスで3カ月に1回6GBをプレゼントする形にしています。これで中容量の手前ぐらいまでをカバーできてくるのではないでしょうか。
ただ、これ以上容量が大きくなってくると、なかなか価格だけで訴求するのが難しくなります。お客さまのニーズがそうではないところ、つまり品質に行くからです。NEOプランを企画したのは、20GBでそのまま価格だけを安くした従来の延長線上にあるようなプランを提供しても、お客さまにご評価いただけないのではないかと考えたからです。中容量帯になると品質もセットで選ばれる傾向があり、これがNEOプランのコストを品質に寄せた理由でもあります。
―― ここまでMNOのオンライン専用プランに直接対決を挑んだMVNOの料金プランもなかなかないと思います。20GBプランは他にもありますが、あくまで既存のプランの延長線で容量が多いだけです。
神山氏 はい。20GBプランを提供している他のMVNOとは考え方が違います。そういった意味で、市場でも“MNO対抗プラン”としてご評価、ご比較いただいています。
月額990円で5GBはLINEMOやpovoよりもお得
―― バリュープラスも含めて5Gへの対応も始まりました。こちらの動向はいかがでしょうか。
亀井氏 無料で提供していますが、やはりNSA(ノンスタンドアロン)という形なので、お客さまの環境や時間帯に依存する部分が多くなります。ただ、昼間のボトルネックがあるような時間帯以外では5Gの効果が出て速くなったというお声もいただいています。一定のお客さまからは好反応です。
―― その意味では、NEOプランだとより5Gの効果が出やすいということになりそうですね。
亀井氏 結論から言うと(5Gの効果は)あります。ボトルネックがない(少ない)ので、キャリアのワイヤレス(無線)部分への依存が大きくなり、差がより顕著に出やすくなっています。
―― 次に契約者の動向をうかがっていければと思います。
神山氏 12月1日から(8GBプランの)容量が増えていますが、それに先立って発表をしていたので、10GBを選んでいただく方の比率は上がりました。大変ありがたいことです。
―― そうは言っても、多いのは3GBプランですよね。
神山氏 そうですね。そこはMVNOのボリュームゾーンということもあり、LINEMOやpovo2.0も3GBを打ち出してきています。ただし、われわれは(LINEMOやpovo2.0の3GBプラン、トッピングと同じ)990円であれば5GBプランが選べて、かつGigaプラスもついてきます。
―― オンライン専用の低容量プランは、バリュープラスの導入以降にサービスインしていますが、影響はあったのでしょうか。
神山氏 影響がゼロだったということはありません。やはり圧倒的な広告出稿でドーンと来られると、影響はあります。ただ、彼らは「990円」と一生懸命言われていますが、同じ990円ならわれわれは5GBなので、(990円という価格の認知が広がるのは)むしろありがたい部分もあります。
―― 契約者数は順調に伸びていますでしょうか。特に4月以降の流動性の高まりで、新規獲得はできてもMNPでの流出が上回っているMVNOもあると聞きます。
神山氏 解約よりも増加の方が圧倒的に多くなっています。これは、お客さまにご評価いただけた結果ですね。確かに縛りがないので抜けていくリスクはありますが、お客さまアンケートでも93%にご満足いただいています。
端末はXperiaが圧倒的に売れている
―― NEOプランでは「Xperia 10 III」の割引キャンペーンも行っています。スマートフォンとのセット販売はいかがでしょうか。やはりソニーグループということで、ソニーとのシナジー効果を期待してしまうところはあります。
神山氏 正直われわれのサービスはSIM単体の販売が非常に多くなっています。やはりスマホとセットが多いのは、対面の販路が強いところです。普段提供しているラインアップにはXperiaがあり、圧倒的に売れています。他の端末の比ではない売れ方なので、その意味ではシナジーをうまく発揮できていると思います。
―― ミドルレンジ中心ですが、「Xperia 1 III」のような端末はやはり難しいのでしょうか。
神山氏 提供している端末は(全体的に)あまり高いものではありません。連携できるところで連携しているという形になります。
取材を終えて:安さと品質で勝負、オンライン専用プランにも対抗
矢継ぎ早に新サービスを投入するNUROモバイルだが、ターゲットは明確だ。小容量は安さを追求してMVNOの主要なユーザー層のニーズに応えつつ、NEOプランでMNOに対抗するというのが同社の方針。実際、この戦略が当たり、バリュープラス開始後には、価格の安さが話題を呼んだ。解約を上回る形でユーザー数は大きく伸びているのは、その成果といえる。
NEOプランに専用帯域を導入し、バリュープラスと分けて運用しているのも、20GBの中容量プランを選ぶユーザー層を理解しているからこそだ。価格以上に品質を求めるユーザーのニーズに応えたサービスを提供している競合他社は少なく、差別化も図れている。オンライン専用プランは、MNOが強みとするショップやサポート力を生かしづらい。その意味で、NUROモバイルのようなMVNOにも十分チャンスはありそうだ。
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